重なりあった二つの影






































「なぁ?久しぶりにデートしねぇ?」




ヒカルの突然の提案から始まった







「デートって、付き合ってる人がすることでしょ?」
「好きな人とでかけることを、デートって言うんだよ」






「知らねぇのか?」





なんて、意地悪な顔して笑う














「それくらい知ってるわよ!」




思わずムキになってしまう











「何で急にデートなの?」




いつもは、うちでゆっくりしたがるくせに











「最近、してないな。と思って。」











もうデートするような間柄じゃないじゃない



























この春
短大卒業と同時に、あたしはヒカルと結婚した



小さい時からの夢を叶えて
高校の時に付き合いだして4年
長かったような短かったような
充実した日々ではあったけれど









「でももう昼過ぎだよ?」
「近場なら行けるだろ?」











「なー。デートー」









思い付きのあとは甘えんぼ?






子供みたいなんだから




だけど断れない









そうだよね





結婚したからって、デートしちゃいけないなんて法律
どこにもないもんね











付き合ってる時の気分に戻るのも
いいかもしれない


















「うん!じゃあ行こ!」
「決まりな!」








ヒカルの顔が
さっきよりも楽しそうになった




そんなヒカルの顔見るの
好き



ヒカルは変わらない
付き合ってても、結婚しても








だからあたしも変わらない




ヒカルのそばにいる限り
あたしもきっと
変わらない









「ちょっと待ってて
着替えてくる」
「そのままでいいじゃん」








女心がわかってない
そんなところも変わらない













「どんなでも、俺はあかりと出かけたいだけ」









それは嬉しいんだけどね













「じゃあ、スカートだけ換えてくるから、待っててくれる?」
「わかった
っていうか、一緒にでかけるからデートだろ?」




それはそうだけど





「でも待ってて!」
「わかってるって」








笑ってる








そうやって
あたしをからかうしぐさも変わってない






成長してないっていうか
なんていうか








まぁ
それがヒカルなんだけど
























あたしは部屋に行って
お気に入りのスカートを引っ張りだす







ヒカルと初デートの時にはいたスカート





今のあたしには
似合わないかもしれないけど











今日も初めてのデートだから


やっぱりこれがいい




















「お待たせー」




ひょっこり顔をのぞかせたら
ヒカルはもう
しっかり準備して待ってた









「ごめんね?」
「へ?うん」











何か
付き合ってる時の雰囲気に近いかも














「っていうか、そんなに待ってないし」
「ふふ」
「何だよ」
「何でもなーい」








そんなこと考えちゃったのは
あたしの中だけの秘密












だけどちょっとイジワルになっちゃうね













「恋人同士みたいだね」






そう言ったら





ヒカル少し赤くなって、照れ隠しする













「バカ言ってんな」
「照れてる?」
「照れてない!」
「照れてるー!」
「違うって!」








そんなしぐさも変わらない





大好き





















「どこ行くの?」
「ナイショ」
「えー?」
「付いてこればわかる」
「イジワルー」
「…何でだよ」










うん
何でかな
付き合ってる時と
何にも変わってない
あたしのクチグセも
ヒカルの態度も







肩書きが変わっただけで



中身は何も変わらないんだ


あたしたちが変わらなければ






今日
初めて気がついた











恋人でも今でも
ヒカルのそばにいられるのは変わらないんだ
それはきっと
変わらないあたしの気持ちも
ずっと一緒

























ヒカルに連れられて来たのは

思い出の公園










「ここでデート?」
「懐かしいだろ?」
「うん!」









ほんと懐かしい









中学校にあがるまで
よく寄り道して遊んでたっけ
その時も、ヒカルはあたしのそばにいたね

一緒にいてくれた















「ブランコ、ちっちゃいー」
「乗ってみるか?」
「無理だよ」










このブランコで
どっちが高くまで行けるか
競争したね







空に届くまで
高く
高く








向こうから
幼なじみかな









小学生の男の子と女の子が
砂場に遊びにきた







まるで
あの頃のあたしたちみたいに









思わず
幸せな笑いがこみあげて
ヒカルの方をみたら
やっぱり優しい顔してた









「遊んじゃうか?」
「うん!」











あの頃に戻ったみたいに
あたしたちは公園を制覇する


すべり台はさすがに無理だったけど










「ヒカル、鉄棒やってよ」
「よぅし!」



勢いをつけて、ヒカルが回る










「すごーい!」





あたしが拍手すると
砂場で遊んでた子供たちが近くに来て








「お兄ちゃん。もう一回!」




なんておねだり








「もう一回?えー?」





何て言いながら、その顔は嬉しそう









「よしいくぞ!」
「わー!」










楽しそうにはしゃぐ姿は
子供と変わらないわね





それから子供達と一緒に遊んで















気がつけば
太陽はしずみかけてた















「じゃあね!お兄ちゃん!」
「気をつけて帰れよー」








小さいその背中を見送って

















「帰るか」
「…うん」






何だかあったかい気持ちになれた



ヒカルもきっと一緒だよね








太陽に伸びるあたしたちの影








あの頃小さかった影は
いつのまにか
こんなに大きく





変わったんだ
あの頃からは





















「影踏みー!」
「は?」
「ヒカルの影踏んだ
ヒカル、動けない」
「動けるし」
「動いちゃダメ!」
「帰れねぇよ」















あの頃と同じ
伸びてる二つの影




今は

重なって見える






二人の気持ちみたいに















「あかり・・・その服さ」







今気づいたの?







「・・・何でもね」
「何よー!」
「何でもねぇって」
「気になるじゃないー!」







似合ってない?
それとも似合ってる?







ヒカルの顔は、夕陽のように真っ赤


うん
言いたいことわかった
ありがとうね










長くなったり短くなったり

だけど
いつも付きまとう影





離れないよ
この影みたいに








太陽がある限り
有り続ける影
変わらないままずっと











********************************************************************************

物書きさんに10のお題・8『影』です。新婚ひかりです。
恋人ひかりでも良かったんですけど、進藤さんの「久しぶりにデート」が頭を支配しまして。
この言葉を言わせるなら、新婚だよなー・・・と。

影は、変わらないんですよ
ずっとそこになる
その影になることはできないけれど、影のようにずっと
何よりも近くにいられたら
結婚しても、「嫌われたらどうしよう」という心理が働きます。
恋人でも新婚でも、やっぱり好きだから
好きだから、たまに余計なことも考えてしまうです。
だけど、変わらないことがわかったらそれでもう、幸せなんです。

こちらもちびひかりでおまけとして描きたいので、そのうち追加されるかもですー。


しかしあかりちゃん、4年くらい前のスカートをとってあるって・・・(汗)
捨てられなくてずっと置いてあったんですね。ケナゲだ(笑)















SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送