耳に響いた
心に届いた
















よく通る声

















その日
俺は久々に学校に行った




残り少なくなって来た中学生生活


回りは受験一色で
関係ない俺には、結構イタイ雰囲気だったりする





それでも、学校に行こうと思うのは



















「ヒカル?」






こいつがいるから


急に呼び止められて振り返る


















「やっぱりヒカルだー」
「やっぱりって何だよ」
「人違いだったらどうしようかと思って」
「あのなー」






あかりはにこりと笑った

何となく落ち着く顔



















「今更間違えるとか人違いって、ありえなくね?」
「そうだよね」






幼稚園の頃から、ずっと一緒だった幼なじみ




俺は後ろ姿だって
あかりに気付いて見せる

自信はあるさ





気付いた片思い








あかりには言えないけど

そう

気付いたら想ってた



















「学校来てるなんて、めずらしいね?」
「あー、四日ぶりかな…」
「見ないと思った」








来れば会える

そんな約束は、どこにもない



















「ねぇ、久しぶりに、一緒に帰ろ?」
「ん?ああ」
「じゃあ終わったら、昇降口で待ってる」
「迎えに行ってやろうか?」
「…いいの?」
「ああ」
「じゃあ…教室で待ってる」
「ちゃんといろよ?」
「はーい!」







また笑った




ハタから見たら、それっぽく見えるのかもしれないけど

伝わらない思いは、誰にもわからない






それでいいんだ


今のままがいい


壊れるより今が
俺は十分



















放課後


HRが終わるのを待って
俺はあかりを迎えに行った



あかりは廊下で待ってて
俺を見つけると近くまで走ってきた



















「早かったね」
「そうか?」
「ごめんね、来てもらっちゃって」
「別に?通り道だし」
「そっか」






何のことはない

長くいたいのは俺



















「帰る?」
「うん!」







久しぶりに、並んで帰った




冷たい風が、俺たちを通り抜けて

あかりが寒そうに縮こまる


















「寒いね」
「最近特にな」
「今年は、雪降るかな…」
「降るかもな」






冬は正直、好きじゃない

一言で言うなら、寒いから



















「ヒカル、最近頑張ってるね」
「俺はいつでも頑張ってます」
「…そうだね」






何かを言いたかったのか

あかりは少し表情を変えた



















「前、一緒に帰ったのは、秋だったのにね」
「そうだったな」
「塔矢くんとの対局の前日だったんだよね」
「ああ」






今思うと俺
あの時、結構なこと言ったよな







あかりは
何か小さく鼻歌を歌いながら
俺の一歩前を歩く
その歌声が、何となく心地よいと思った




帰り道は流れて


別々の道へ進む



















「じゃあね、ヒカル!楽しかった」
「送ってく?」
「ううん、もうすくだから…」






もう少し一緒にいたい



そう願った





でもそれは、届かない願いで

あかりに押しつけちゃいけない気持ち




















「ん。じゃあ…気をつけて帰れよ」
「うん、ありがと
…ヒカル?」
「何?」








あかりは大きく息を吸って言った

誰でもない


俺に



















「あたし、ヒカルのこと、応援してるから
だから、これからもあたしに、勇気をちょうだいね」






そう


小さいけど
はっきりとよく通った声で



















「じゃあ…ばいばい!」






あかりは駆け出して言った






「頑張って」とか

いつも言われることなのに



いつもよりよく通った声が

ここに響いて

俺の中に残った





冷たい空気の中
一段と響くのは君の声









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12の冬お題・12『よく通る声』恋人未満なひかりでシメ!ました。
12のお題コンプリートー!

進藤さん、片想いっぽいですが、両思いですよv
ちゃっかり160回を入れてみましたよ。ひかりスキーのバイブル。
姫の心のベストひかりシーンです。夕陽の帰り道にらぶvv

冬って、空気が澄んでるので、声もよく通りますよね。
鼻歌を歌うあかりちゃん。後姿を見つめる進藤さんに、玄関先でばいばい。
少女漫画バンザイっ!やっぱりひかりは少女漫画が描きやすいと思いましたっ!





音羽桜姫。






お題提供サイトさま⇔『インスタントカフェ』〜12の冬御題〜




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