熱さのお味は?





ぬるい炭酸



帰ってきたらいた何故か
あかりがいた




「…」
「あ、ヒカル。おかえり」


おかえりって、お母さんに以外に言うのはあかりくらいしかいない

っていうか、ここ俺んちで俺の部屋だよな




「何でいんの?」


散々考えてみて、口に出たのがこれだった




「忘れたの?指導碁打ってくれるって約束したよ?」
「そうだっけ…?」
「ヒカルが誘ってくれたのに!」

そういや金曜日あくから、あかりに電話したんだった




「思い出した?」
「…かも…」


わざわざ電話して誘ったのに忘れてた




「学校終わってから電話したのに、ヒカルいなかったから」
「じゃあ何できたんだよ」
「おばさんが、すぐ帰ってくるって言ってたから、今から来たら?って」
「ふーん」
「いないって聞いて、忘れてるだろうなー。とは思ったけど」
「ごめんて」


コンビニ行くまでは覚えてたんだけどな

週刊碁見つけたのがいけなかったんだな、きっと

あれチェックするだけで、30分くらいいたし




「どこ行ってたの?」
「コンビニ」


忘れてなかった証拠に、袋にはジュースが二つ


「二本も飲むの?」
「ばーか」
「だって二本あるもん」


あかりの天然って、ここまでくるのか?
考えれば

っていうか、気づいた時点でわかってもよさそうなことなのに




「ほら」
「?」
「お前の分」
「…え?」
「あかりの分も買ってきてやったの」


しばらくペットボトルのジュースを見つめて
その視線はゆっくり俺に来た




「ありがと」


理解したのか、あかりは俺からそれを受け取った




「ヒカルって炭酸好きだよね?」


俺が買ったのはコーラ

何故か昔から好きだったりする




「しゅわしゅわ感がいいんだよ」
「子どもみたい」
「子どもは炭酸なんか飲まないだろ?あかりじゃん」
「そんな小さいコの話じゃないもん!」
「さっさと打とうぜ」
「んもう!」


怒った顔をしながらも、あかりは俺の前に座る




「3子?」
「ダメ?」
「いいけど」


あかりは碁盤の自分の好きな場所に、石を三つおいた

あかり相手に指導碁は、大体いつも3子

たまに意地になって互い戦でやりたがるけど




「じゃあお願いしますっ」
「お願いします」


普通の指導碁のはずだったのに




「あ、あのねー」
「んー?」

ぱちぱちと音を立てながら、指導碁は進んでいった

いつもどおりだったんだ

何も変わらない指導碁のはずだったのに




「こないだねー、友達が彼氏とキスしたって自慢してきたんだよー」
「・・・は・・・?」


俺の番だったのに
持ってた碁石を思わず落とした

ってかそれ、指導碁しながら話すようなことなのか!?




「ヒカル?」
「なんでもない、なんでもない!」

落としたって別に、なくなるわけじゃないから
とりあえず碁笥から違う石を持って碁盤に打つ




「あーっ!」
「始動碁って、手を抜くってことじゃないんだぜ?」
「むー・・・」


あかりは軽く俺をにらんだあと、もう一度碁盤に目を移して
考えるしぐさをする

ちょっと難しいとこ打ったかな

いや、でも俺、そこに打つつもりじゃなかったんだけどな




「!」


しばらくその様子を見てたら、あかりの顔が明るくなった
いいとこを見つけた証拠


にこって笑ったあとに、碁石を打った



『どうだ』って顔してるけど、あかりに負けてちゃプロなんかやってられない

なんて言ったら、怒るから言わないけど




さて次はどこにおこうか

碁盤を隅まで見渡していると、あかりが止めの一言を呟いた




「キスってどんな感じなんだろ」

知るか、そんなん

ってかその話題
すごくキツイ

俺だって興味ある

あかりを前に、我慢だってしてる

こんな話を平気でするってことは多分
俺のことを何とも思ってない証拠




「ヒカルはキスしたことある?」

ばしゃん

目の前は白くなり、気が遠くなったような気がした

同時にこぼれたジュース




「ヒカル!」


あかりが心配して、俺に近付いた

いつもならなんでもないこの距離が
すごく耐えられないようか気がした

鈍感で無防備なんて、なんで俺
こんな苦労してんだろ




「大丈夫?」
「目つぶれ」
「…え…?」
「いいからつぶれ」
「拭けないよ?」
「自分で拭くからいい」
「う、うん…」


あかりはまたも無防備に、言われた通り
俺の前で目を閉じる

こいつまさか、俺以外の前でもこうなのか?

心配ともやもやは一緒になって

ほっぺたにキスをした


あかりは目を開いて、驚いた顔で俺を見た




「ヒカ…!?」


どんどん徐々に真っ赤になるあかり顔

抑えられなかった俺が悪いのか

近づきすぎたあかりが悪いのか

どちらでもないかもしれないけど

しばらくお互い何も言わずに
目も合わせずに

きまづい空気と晴れた気持ちが混ざり合う




「あたし帰るね!」


あかりは無言で立ち上がって
それだけ言うと、早足で部屋を出ていった

伝わったのかどうなのか
あかりの顔は肯定してた

買ってきた炭酸を口にする

それはもう、冷たさをなくしていて
部屋の温度に比例して
俺の体温と同じように熱を持つ

どんなに冷たくたって
それはすぐに変わる温度を意味して


「…ぬるい…」


俺たちみたいな微妙なもの

さて、そのお味は?




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進藤さんお誕生日おめでとう企画2作目。『ぬるい炭酸』でしたー。
本当は『待ち合わせしてて、あかりちゃんが炭酸を持ってて、進藤さんを待ってる間に、気温で炭酸かぬくるなっちゃった』
っていうお話にしようと思っていたのですが、恋人未満でそれはちょっとキツイかな・・・ということで。
こんなお話になりました(ぇ)
何かいつも、こんな感じで、お話が変わっていくのです(笑)

さっそく2作目で、前回の続きになってます。次続くかどうかは秘密ですv(ぇ)
ほっぺちゅうに止めておいただけでも、進藤さんは頑張ったと思います(笑)
気温で変わる温度。君で変わる温度みたいなv(やめて)
進藤さんとあかりちゃんのどきどき感が伝わればと思いますv



音羽桜姫




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