突然の出来事に、反応の仕方






ちょっと待って




好きだったよ

その気持ちには気づいてたよ

だけどいきなりのことに、どうしたらいいかわからなかった



「あかりー。ヒカルくんから電話よ」
「…え」


お母さんが呼んだ名前
少し前までは、名前が聞こえたら嬉しかった

だけど今は、少し違う


ヒカルを前に、うまく話ができるかどうかわからない






「あかりー?」
「・・・っ今行くー!」


だけど出ないわけにはいかない
ヒカルが何で急にあんな態度を取ったのか、わからないけど

気まずくなって、話ができなくなるのはイヤだと思った





「もしもし?」
「あかり?」


ヒカルの声はいつもどおりで
わかってたけど

意識してるのはあたしだけだってわかってたけど

その態度にちょっとだけ寂しくなった


ヒカルにはあの態度
何でもないことだったのかなって




「どうしたの?何か用事?」
「あ、うん。そろそろ学校の方に指導碁行けそうだからさ」
「・・・え?」


そっか

指導碁打ってもらうのは、個人的でもあるけど
部活でも関係してること

頼もうと思ってて
でもヒカルが忙しそうで

少し遠慮してた




「来週あたり空くからさ」
「ほんと?じゃあ先生に言っとくよ」
「いつにする?」
「ヒカルが空いてる日でいいよ」
「んー・・・じゃあ分かったらまた電話するよ」
「うん。よろしくね」


ヒカルがいつもどおりなんだもん

あたしもそうしよう


きっとあれに深い意味はなくて

ほっぺにキスなんて、小さい頃からよくしてたもん

とにかく、嫌われてないってことだけはわかったんだから
それでいいことにしておこう

いくらなんでも、キライな人に

何とも思ってない人に、キスなんてするわけない

ヒカルだからって、そんないい加減なことはしない


あたしがよくわかってること





「じゃあまた電話くれる?」
「うん。今度は携帯にするよ」
「わかった!」

そう約束して

ヒカルから電話があったのは、それから2日後のこと


指導碁は火曜日に決まった

確か木曜日は手合い日だから、その日が無理なのだけは知ってる

火曜日

うん
顔あわせたって、きっといつもどおりに出来る


だってあたしたちは、幼なじみなんだから




割り切りながら

それでもやっぱり気にしながら

待ってくれない日にちは、当日を迎えた


何度も来てるヒカルは、あたしが迎えに行かなくても、もう一人で学校まで来れちゃう


部員とも仲良くなって
そんな姿を見て、ちょっとだけやきもち焼いてみたり

ヒカルのそんな態度に、ちょっとだけ寂しくなってみたり

女心って複雑だと思う





「ヒカル。今日はありがとう」
「いいよ。休みだったから」
「疲れてるでしょ?」
「いや。最近はそんなに忙しくないから」


指導碁に来てくれた日は、いつも一緒に帰る

だからヒカルは、あたしの片づけが終わるのを待っててくれてる


一緒に帰れるのは嬉しいけど

ヒカルが来てくれること、すごく嬉しいけど

いつもなら何でもない、ただの幸せな時間が
今のあたしを、落ち着かなくさせる

嬉しいんだよ、ほんとに

だけどやっぱり、意識しちゃう



なるべく気づかれないように、あたしは片づけを始めた

早く終わらせて、早く学校を出よう

二人きりなんて、息がつまる


二人きりがこんなにも苦しいなんて、思わなかった

教室でヒカルと二人きり

どきどきが止まらない






「あかり」
「・・・え・・・っ」



気づいたらヒカルはすぐそばにいて
あたしの目を捉えた


あれ?何でこんなに近いの?


今のあたしとヒカルの距離は、人ひとり分もないくらい

少しでも動けば、触れてしまいそうなぎりぎりの距離

こんな近くでヒカルの顔


始めてみた


心臓の音が聞こえちゃうんじゃないかって
顔が熱くなるのがわかる








「ヒカ・・・ル?」



目をそらすことなく、ヒカルの目に見つめられて、動けなくなった


どうしよう

何でこんなに意識しちゃってるの?

落ち着いて

落ち着いてあたし


何とか落ち着かせようとするけど、心拍数は上がるばかり

これじゃばれちゃうよ






「あかり」


もう一度呼ばれた名前

優しくて、落ち着いた、ちょっと大人びた声

いつもなら落ち着くような声色が、今のあたしにはどきどきの原因にしかならなかった

だって今のヒカルは、『オトコノコ』だったから



どうしよう!?


思わず目を閉じて

『ちょっと待ってー!』

声にならない声で叫んだ

ヒカルのこと好きだけど
まだ何も、心の準備、できてない

っていうか、あたしとヒカル

まだそんなじゃないのに

そんなこと期待しちゃってるあたしもあたしだけど




「ヒカ…!」
「ゴミ付いてる」


ヒカルはあたしの髪から、ゴミを取って見せた






「何期待してたわけ?」
「何もしてないもん!」


イジワルなその問いかけに
恥かしくなった

何考えたんだろう、あたし

あんなことがあったからって、気にすることなかったの?


ヒカルの行動一つ一つに
反応してどきどきする





「怪しいなー」
「してないってば!」



流れたのは、いつものような言い合い

ちょっとしたきっかけで元に戻れるのは、やっぱり幼なじみだからなの?


反応の仕方
気を付けなくちゃ
簡単にばれてしまいそう








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進藤さんお誕生日企画3作目・『ちょっと待って』でした。
何か・・・何かが違う。少女漫画テイストらぶ(は)
やりすぎかな。とも思ったのですが、これしか思いつかなかったです。

2作目と続きっぽくしてみました。お気づきかどうかわかりませんが、12個あるお題の中で
SSは「あかりちゃん→ヒカル」と交互の語りになっています。
年齢は見てのとおり高校生です。
指導碁に来てもらうのはいつものことで
あかりちゃんが不安に思ってた「卒業したら無くなってしまうかもしれないつながり」は、いつのまにかなくなっています。
信じてずっと続けてきたつながりが、ちゃんと二人を結んでいます、ふふふv(ナニ)
進藤さん、あかりちゃんで遊んでます(笑)たまにはいい思いをさせてあげなくては(えー)


まだまだ続きますー。




■音羽桜姫




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