戻せるところまで






巻き戻し





タイミングが悪いといいますか



「あかりちゃんとどこまでいったんだ?」
「ぶふっ」


いきなりの質問に、思わずお茶を吐き出しそうになった




「和谷ぁ!」
「吐くなよ!」


まだ吐いてないって
言い返したかったけど、それどころじゃなかった




「いきなりそんなこと聞くからだろ!」
「気になったんだよ!」


何だよ
自分がうまくいってるからって、先輩風

まぁ確かに、和谷の話は参考になるし、助かってる

だけど、それとこれとは話が別だ




「何でそんなこと言わなきゃいけないんだよ」
「聞いてみただけだって」


からかわれるのは、おもしろくない
だけど勝てないのも事実





「今度はいつ来るんだよ」
「知らないよ」
「彼女の予定くらい知っとけよ」
「…じゃない」
「何?」
「彼女じゃない」
「…」
「…」


そりゃ
いい加減幼なじみを卒業したいとは思うけど

今の距離が

この関係が、居心地いいのはほんと




「まぁ、言いたいことはわかるけどさ」
「じゃあ聞かないで」


どうするか決めるのは俺

いずれ何とかしたいとは思うけど

心地よいこの場所を、今は守っていたかった





「この間のデートはどうだったんだよ」
「デートじゃない!指導碁!」
「二人で会ったなら、デートみたいなもんじゃん」
「いつものことなの!」


あかりと指導碁なんて、しょっちゅうだ

頼まれれば行くし、俺から確認することもある



昔からの馴染みだから、お互いの家に行き来するなんて
今更なことだ






「お前も大変なんだな」
「あかりの天然は、どうにもならないから仕方ないよ」
「ふーん…」


昼ご飯を食べて
午後に向けて、対局場へ戻る







「好きなら好きって言わないと、誰かに取られるぜ?」
「わかってるよ!」
「あかりちゃん、可愛いからなー」
「可愛い言うな」
「…独占欲は一人前な」
「うるさいなぁ」


自分でもわかってる

踏み出したくないと思ってるのに
他の人にとられるのは嫌なんて

勝手な独占欲だってことも








「進藤は、あかりちゃんに惚れてるからな」
「悪いか!」
「もっと早くに気付けば、何とかなったかもしんないのに」
「仕方ないじゃんか!」


気づいたのは遅かった

だけどそれでも、好きだって思った









「進藤くんが好きなのはー」
「あかりだって言って」


からかう和谷に文句言ってやろいと思って顔をあげたら

そこにあかりがいた










「…」
「…」


聞かれた?

今の聞かれたのか!?


バカだ、俺

こんなにあっさり、守ってたものを壊した









「…何で…っ」
「あ、あの…また指導碁お願いしようと思って…えっと…」


完全に聞かれた反応だ









「あか…」
「ご、ごめんね!あたし帰るね!」
「あ、ちょ…っ」
「また電話するから…!」
「話を…」


言い訳じゃないけど

引き止めたってロクなことなんか言えやしないけど

こんなことでばれるなんて

知られるなんて


俺ってなんて迂濶








「あーらら。バレちゃった?」
「お前のせいだ!バカヤロー!」


どうやってごまかそう

こんなにあっさりなくした絆に、生まれるものは?


勢いで聞かれてしまった気持ち

ちゃんと伝える前に、流れてしまった言葉

巻き戻して初めから

気づいたあの日から始めさせてくれたらいいのに

巻き戻らない時間を、ただ納得するしかなかった





+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

進藤さんお誕生日おめでとう企画作品6作目でございます。
ヘタレ。ヘタレを目指してみました。
このへたれっぷりがどうしても、兄さんを思い出してしまった姫を許して下さい(笑)

前回の続きっぽく・・・なってますか・・・ね?
あかりちゃんの学校に指導碁に行って、その次の日ということで。
和谷さんにはすでに彼女がいて、ちょっと先輩です。
「進藤が好きなのはー」と言ってるのは、実はあかりちゃんがいることを知ってます(ぇ)
知ってて、わざと言わせたのです。イジワルです(笑)
気づく前に戻して欲しいと思うのが恋心。

午後の手合い。気になって負けてしまっって身に入らなかったとか?
多分勝てたとは思いますよ。いつもは余裕な相手にぎりぎりで。
どこまでいってもヘタレなのが、さすが進藤さんだと笑って下さい(鬼)



音羽桜姫。




SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送