届け















君に

















もしもあの日に戻れるのなら
伝えたい言葉がある






















「ヒカル?どうかしたの?」







何となくぼーっと考えていた

あかりの声が耳に響いた





















「ごめん。反応なかったから勝手に入っちゃった」
「ああ、いいよ」







答える俺に、あかりは見上げるように俺の顔をのぞきこんだ






















「大丈夫?」
「何が?」
「何か考え事してたみたいだから、何かあったのかなって」







心配そうな顔をしたあかりが、目の前にいる


俺、あかりにこんな顔させてばっかりだ





















「何でもないよ」



笑って言ってやると、あかりは少し
ほっとした顔をする





こっちの方がずっといい




















「何でもないならいいんだ」









にこりと笑ったあかりは
俺の前にある碁盤に気が付く




















「また並べてたの?」
「ああ」








途中で止まったままの盤面

俺は、ここまでしか並べることはできない




終わることのない棋譜


大切なだったのに
ありがとうも言えず別れた




毎日並べてる
思い出の棋譜



これを並べてたら、声が聞こえなかった


ただ



それだけ




















「ごめんね、邪魔しちゃったかな?」
「ん、平気」









何だってない


ただ並べていただけの棋譜


いくら並べたって
答なんか出てこない






















「ヒカル、無理してるでしょ?」







碁盤を見つめていた俺に、つきつけられたあかりの言葉




















「無理なんかしてないよ」






反論してみる


あかりは少し、寂しそうな顔をした

そして言う



















「まだ悔いているの?」






そう

俺が抱えてる思いを




















「あたしが何を言っても、何の説得力もないかもしれないけど…」









そんなことはない


数えきれないくらい
俺はあかりに救われてる



思い出して涙が出そうになる時
いつもそばにいてくれるのは、あかり



佐為のことを話したあの日から


ずっと





















「佐為さんは、ヒカルのそんな顔…望んでないと思う」








そんな顔?



















「その終わりがない棋譜は、ヒカルと佐為さんがずっと続いてる証拠じゃないかな」







続いてる?

そばにいなくても




















「あたしと一緒で佐為さんも、ヒカルの笑った顔が一番好きだと思うな」









ああ

それだけで俺は救われる気がするんだ



あの日のこと


いなくなったことの虚脱感





伝えたかったのに、届かなかった言葉



そんな俺を見て、あいつはどう思う?






















「だからもう…」
「わかってる」






わかってるよ


あかりの気持ちも想いも


















「悔いてるとか…ないって言ったらウソになるけど」








後悔をしなかった日はない

思い出すたびに

















「ただ、伝えたかった言葉を考えてたんだ」






たった一言

たった一つ

時を戻して伝えることができたなら




















「何て伝えたかったのか、聞いても…いい?」






遠慮がちなその表情が、何だかすごく可愛かった




















「ありがとう」





その一言だけ



かけがえのない存在だったあの人に



いつか思い出と呼べる、その日が来るまで



















「大丈夫。きっと伝わってるよ」








その一言に
こぼれたひとしずく



















「泣きたい時は、泣いてもいいよ」






包み込んでくれた、その温かさ







今はもう、伝えることはできないけど

一つだけ、君に届け





全部ひっくるめて、届いてほしい

その想い








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企画作品第3弾はシリアスなひかりでお届けいたしました。
本当なら「君」は、あかりちゃんのはずなんですが・・・君に伝えられない想いがある・・・というようなのでよかったのですが
そういうのは結構描いてるような季がしたので、やめました。
借りてきたお題の場所にそって、ジャンプっぽくしてみましたよ。少女漫画っぽさはなくしてみました。
せっかくおめでたいことの企画なので、全部らぶらぶ路線で行きたかったと言えばそうなんですが
やっぱり佐為さんのことを知ったあかりちゃんと進藤さんのやりとりが、事故設定ではありますが、気に入っていたりします。
のでですね。「君」は、佐為にしました。
「泣きたいときは泣いていいよ」な、あかりちゃんが描きたかっただけ・・・ともいいます(ぇ)





お題提供サイト⇔WJモノかきさんへのお題





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