つらい時に与えてあげたい
















そばにいたい
















「ヒカル、遅いな…」





もうとっくに、いつも帰ってくる時間を過ぎてる



今日は塔矢さんとの対局

絶対負けたくないって
朝は笑顔で出かけて行ったのに



















「ダメだったのかな…」






こんな時間まで帰って来ないのはきっと
今は帰りたくないからなのかも知れない



悔しいけどあたしじゃきっと
ヒカルの悔しさを完全に理解することは出来ない




だけど辛いとき
悲しい時こそ

ヒカルのそばにいたい

そう願うのは、ヒカルが大事だから

一番でありたいとは思わない

あたし以上に大切なものがあるなら
それでいいの



















「あそこかな」






迎えに行こう
きっとあそこにいる



一度連れて行ってもらった
ヒカルが大好きだった佐為さんのお墓がある場所




あたしは急いだ


















「ここだよね･･･」






確か


たどり着くと
ヒカルはやっぱりそこにいた



お墓の前に座り込んでる


泣いてたりするのかな



もしそうだったら
あたしはどうやって声をかければいいんだろう


















「ヒカル」





声をかけてみたら、ヒカルは笑って振り向いた




















「あかり」
「帰って来ないから、心配しちゃった」
「ごめん、つい」






笑ってる奥にある悔しさ
知ってる





















「こんなとこで、どうしたの？」
「ん？帰ろうと思ったんだけど、何となくここに来たくなって」
「帰らないの？」
「うん、もう少し」









ああ、やっぱりあたしじゃ
その悔しさを埋めることはできないのね


あたしもヒカルも
それぞれの意思を持ってる

そんなこと当たり前なのに、悔しいと思うのは




















「おかしいよな、来たって何も言ってくんないし、返っても来ないのにな」







ああ、ヒカルは
ここで悔しさを話していたんだね


あたしが埋めることのできない
想い出の絆




それならあたしには
何ができるの？


何も言えない

何も出来ない





ただ

ヒカルに笑ってほしいのに

あたしじゃその笑顔
支えること



出来ない


何もできないなんて、思いたくないけど
突きつける現実はイタイ


だけどあきらめたくない


あたしに出来ること
精一杯考える





















「あんまりえらそうなこと言えないけど…」
「？」
「あたしはヒカルのそばにいるよ」








指をそっと絡ませた

ゆっくり伝わってくるヒカルの熱




















「あたし何も出来ないけど…ヒカルのそばにいるよ」






代わりにもなれないけど

それくらいしかできないけど



それでもやっぱり、ヒカルのそばにいたいよ


ヒカルが泣きたいときはそばにいて

涙を止めることはできないとしても




















「あかりは、そのまんまでいてよ」








ヒカルは、おでこをコツンと当てた




















「代わりになんかならなくていいから」
「…うん…」






ヒカルが涙を流す時

その時に

何も出来ない自分を悔やむけど




与えてあげられるぬくもりで
少しでも笑顔が増えたら嬉しい




















「帰るか」
「うん。」







じんわりゆっくり伝わるぬくもりは
あなたからもらうもの


ねぇせめて

そばにいさせてね








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企画作品第１０弾は、またも新婚ひかりでお届けしました。『そばにいたい』です。
これは最初、ぬくもりとして描いたものでした。のはずだったのに、話的に「そばにいたい」に変わっていて･･･
急遽変更いたしました。そんな裏話があったりします（どこが）話が変わっちゃうとかなんて、しょっちゅうなんですけど；；

シリアスになってますが、それでもあかりちゃんが、進藤さんを想う気持ちが伝わればと思います。
進藤さんがそばにいたいと願うお話も考えたんですが･･･ちょっと思春期入りそうだったので、やめました（笑）
いずれ描くと思います、思春期進藤さん、大好きなのでｖｖ（危）話ずれてるよ（笑）





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