引き留めておくことさえも


















届かない


















届かないのは、言葉だけとは限らない








「何してんだ?」
「ひゃ!?」






手合いから帰り


見つけたのはあかり



うちの前でのぞきこんだり、インターホンを鳴らそうとして指を引っ込めたり



見てておもしろかったけど
その行動があんまり不振だったから


見計らって声をかけた



















「ヒカル…!?何で…っ」
「ここ、俺んち」





っていうか、俺の部屋

















「あ、そっか」




えへへ、と

照れたように笑った




















「相変わらずボケてるのな」
「ぼけてないもん!」
「だから天然って言われるんだよ」
「天然じゃないもん!」






こんなくだらないケンカが出来るのは
俺たちが今、付き合っているから



俺たちが中学を卒業して
俺はプロの世界へ

あかりは高校へ



俺たちの距離は離れて

お互いの世界を持った




もう会えることなんて、ないと思ってた


だけど、いつもきっかけを探してた



















「俺の部屋の前で、何でいるの?とか聞く?」
「頭がいっぱいいっぱいだったの!」
「会いに来てくれたわけ?」
「う、うん」
「んじゃ、取りあえず入ろうよ」
「あ、うん」






俺が先に入ると、あかりは後ろを付いて
俺の部屋に入った


















「お邪魔しまーす」
「どうぞ」





この春から、俺は独り暮らしを始めた


ここを知ってるのは、プロ仲間と両親と
あかりぐらい



こうしてあかりは、たまに会いに来る


二人で決めた場所

















「何か、久しぶり」
「うん」
「最近、忙しそうだね」
「平気」




電話はいつもしてるし

あかりの声が、いつも元気をくれる


頑張る素になる



















「今日、来ない方が良かったかな?」





馬鹿なこと言うから

俺はあかりの頭をこづいてやった

















「いた…」
「冗談でもそんなこと言うな」




会えることが次に繋がる


あかりは知らない

必要だから、そばにいてほしいと思うことに



大切だから、そばにいたくて

それが、どれだけ大きな支えになるのか



















「ごめんなさい…」
「よろしい」





短い時間だっていいんだ


声だけじゃ足りない

その想いをうめて




















「今日はね、顔見に来ただけなんだけど…」





あかりは少し赤い顔をしながら
下を向いて、指を絡ませてる



そして言った



















「ゆっくりしてってもいい…かな?」






そんなの決まってる


















「もちろん」
「ほんと?」
「帰り送るからさ、ゆっくりしてけよ」
「じゃあ、ヒカルのご飯、今日はあたしが作るね」






それなりの時間を過ごして



久々にゆっくりあかりと話をして



だけど、そんな時間、いつまでも続かない


どっちかが、区切りをつけなくちゃいけない















「そろそろ帰らないとな」






俺が切り出すと、あかりはこくりとうなづいた



許されるなら、離したくない

そばにいたいけど


















帰り道はお互い何も話さなかった


話せなかった



口を開いたら、きっと言ってしまうから




だけど今は

伝えてもあかりを戸惑わせるだけで




















「送ってくれてありがとう」
「ああ」
「また…ね」
「ああ、また」






あかりに延ばした手が、空を掴む


届かない


延ばしても




今度会えるまで
その手は届かずに君を想う








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企画作品第15弾は、『届かない』。恋人ひかりでお届けいたしましたー。
らぶ度低いですね(あせ;)あかりちゃんのお誕生日だというのに・・・

久々に会って、もっと一緒にいたいのに。その想いは、どんどん強くなるのに
それを口には出せないんです。お互いを想う余り。臆病になってしまうんです。
届かない思いもあるし、手のひらだってある。
簡単に触れることができない。近くにいるのに。その手を掴むことができたなら
いつかきっと、届く日が来ると思うので・・・それまで頑張れ!






音羽桜姫。






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