とまどいのワケ














見えない気持ち














あかりを前にすると
何故か心臓が早くなる



前はそんなことなかったのに



何でかわからない





気持ちが見えずに、もやもやしてる


あかりに対する接し方がわからない




どんなふうに笑って話をしていたのか

思い出せない




だから会わないようにしてたのに



















「あ、ヒカル!」
「…」





帰ろうとした昇降口で
またも出くわしてしまう



俺、何かしたんだろうか


呪われてるとか





会いたいとかそんなんじゃなくて
部活頑張ってんのかな、とか考える時は
気になったって会わないのに


そんなことを思う時点で、何か俺、おかしいんだけど



















「何でいんの?」
「あたし、ヒカルと同じ学校の生徒だよ?」
「じゃなくて・・・」
「えへへ。金子さんが、今日も来てるって教えてくれたから」






金子?


誰だっけ




ああ、いたな
同じクラスに

















「来てるから何?」
「あ、うん
一緒に帰ろうと思って」






のんきなもんだよな

俺の気もしらないで



俺だって、何でこんななってんのか、わかんないけど





けど
ここで変な態度を取ったら、変な誤解をされるかもしれない


いつもどおり

いつもどおりでいいんだ


















「別にいいけど…」
「ほんと?」
「ああ」






というか、待たせておいて
断るなんて、普通できないと思うんだけど



















「やったぁ」





って
笑ったあかりに

ほらまた鳴りだした

正体不明の音




それと同時に

ツキンと音を立てて、何だか少し痛くなった



















「じゃあ行くか」
「うん!」






音と痛みを振り払うように

俺はあかりの一歩手前を歩き出した





何を話したらいいのかさえ、わからない

息が詰まる沈黙



少し前まで、何も考えることなく話だってできたのに

あかりを目の前にしたって、どうってことなかったのに


久々の二人きりの帰り道は、気まずさばかりが流れた

何か話そうと焦れば焦るほど、言葉は出てこない

これじゃいけないのに

ちっともいつもどおりじゃない

誤解・・・されてやしないだろうか



















「ヒカル、最近あたしのこと避けてる?」




不意に聞かれた言葉

ドキンと音が大きくなる


いつもと違うあかりの声



気付かれちゃいけない


泣きそうなあかりの顔は苦手だ



見たくない


















「何で俺が、お前のこと避けるんだよ」
「何となく…?」
「何もないし、避けてもないから」







昔より縮んだあかりの頭を、ぽんぽんと叩いて

安心させるようにした



















「何でもないならいいんだ…よかった」





ほらまた



音はさっきよりも大きくて

早くて



どうにかなるんじゃないかって

思うくらい



















「やっぱりヒカルは優しいや」





あかりの表情を見た瞬間

一瞬



息を止めた



音は打ったような大きな音





ダメだ




普通でなんかいられない



自分が見えない


あかりに対する気持ちがわからない






幼なじみ?


そんな関係じゃ割りきれない

それなら




〃それ以上?〃


















「ヒカル?」
「え…」
「どうしたの?」
「あ…ごめん」





考えが少しまとまって


あかりと目が合ってしまったら




そらせなくなって




















「顔、赤いよ…」
「何でもない!」
「でも…」
「何でもないから!」
「…」





言い訳に
何をそんなに一生懸命になってるんだろう




ただ

曖昧な気持ちで



あかりに触れちゃいけない


のばしかけた手を
踏みとどまらせる



















「風邪かもしれないから、今日は早く寝てね」






この気持ちが、はっきりするのはいつなんだろう




あかりに対する気持ちが見えない

どうしたらいいのか、わからない

認めればこの気持ちも音も
消えるんだろうか


とまどいのそのワケ







*******************************************************************************************************

企画作品第16弾は、『見えない気持ち』。中学生。恋人未満ひかりでした。
やっぱりこの頃の、はっきりしない気持ちの二人って、じれったくてもどかして大好きだと思いました(笑)
いいですね、思春期。
お話としては、1作目の『胸の鼓動』の続き物・・・と捕らえていただくとよろしいかと・・・思います。
そのつもりで描きました。

好きって気持ちに気づいたのは、あかりちゃんが先だと思います。
あかりちゃんは好きだから一緒に帰りたくて。だけど進藤さんは、あかりちゃんに対する気持ちが見えなくて
どうしたらいいのかわからない。そんな気持ちに揺れています。
ちょっと前なら、普通に触れることができたのに。「今ふれたら、きっと・・・」って怖くなってしまっているのです。
あ、今、シリアスが降りてきましたが(笑)これもある意味シリアス。
また違った感じの「見えない気持ち」も、描いてみたいような・・・気もします。



音羽桜姫。








お題提供サイト⇔WJモノかきさんへのお題



SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送