一番の隠し場所?















免許証















「ヒカル?そろそろ起きなくていいの?」






昨日から泊まりに来ていたあかり
ヒカルよりも先に起きて、朝食の用意もすませて


待っていたのに、ヒカルは一向に起きて来ない



さすがに起こさないとまずいと悟ったあかりは、ヒカルを起こしに来た
















「今日も手合いでしょ?」





毎日を仕事に追われて

少しでもヒカルが休めるように
自分が休みの日は、なるべくヒカル元を訪れるようにしていた


そのせいかヒカルは、あかりを頼り、起こしに来るまで起きて来ないとか
















「うー…ん」
「おはよ」





小さくうめき声をあげて、ヒカルは寝返りをうつ

壁側を向いていた体は、あかりの方を向いた


















「ヒカル?」




優しい声色で呼び掛けたら、ヒカルはうっすらと目を開けた

















「あかり…?」
「朝だよ。起きなくていいの?」




まだ起きたくないのか
ヒカルは布団の中でもぞもぞと身体を動かしながら
あかりに尋ねた

















「今何時?」
「七時半」
「…」
「起きてこないから、起こしにきたんだけど…」
「…」
「…」
「…」
「ヒカル?また寝ちゃったの?」






あかりが問いかけた後

















「寝坊したーっ!」





響くくらいの大きな声と、布団をめくりあげ、起き上がる音が重なった








起きるなりヒカルはすぐ着替え
どたばたと、出勤の準備を始める


あかりは慌てて歩き回るヒカルの後を歩きながら、パジャマを抱えて問いかける


















「ご飯は?」
「ごめん、いらない」







ヒカルは碁が絡むと、たまにあかりを忘れることがある
けれど、ないがしろにしたことは一度もない
それは、付き合ってからの話だけれど

















「ほんとごめんな」
「うん。いいよ。それより時間」
「やべ!んじゃ行ってくる!」
「行ってらっしゃい」





出かけたヒカルを見送った




いつにもまして、慌ただしい朝だったけれど
顔を合わせて、言葉を交わせただけでも幸せだと思ってしまう


















「お部屋でも片付けようかな」






一人になり、静かになった部屋を見回し
あるものに気が付いた


















「あれ?」






机の上にぽつんと置かれたもの

あかりは手に取る


















「免許証?」






ヒカルの名前と写真が張ってある



















「忘れてっちゃったんだ」





慌てて出て行ったから


たぶんヒカルは、財布しか持っていない



















「いらないのかな?」





しばらく考えてみる

別に車に乗るわけじゃないから、対して必要ではないだろう


だが、何でいつ身分証明をしなくてはいけないのか、分からないときもある



















「届けてあげなくちゃ」







着ていたエプロンを脱いで、あかりは出かける準備をする



ヒカルの仕事場。棋院までは、何度か行ったことがある



ヒカルと。一人で。何度も訪れている場所




あかりが棋院に来るのを、ヒカルはあまりよく思ってはいないが


それは、あかりを大事にしている証拠だった




わかっているから、なるべく行かないようにと決めたあかりだが


こればかりは仕方ない








なるべく急いで、ヒカルが困らないように




電車に乗って、棋院へと急いだ









棋院最寄の駅から、地歩で少し



あかりはたどり着いた







棋院は人であふれていた



今日は何手合いだか聞いてはいない

が、見るからに、プロの手合いの日だろう














(見つけられるかな・・・)








人の多さに不安になるが、すぐにヒカルを見つけることができた









いつもなら大声で呼び、その存在に気づかせるが、今日は少し遠慮した



ヒカルも恥かしい思いをすると思ったから








あかりは、見つけた姿を見失わないように、ヒカルにゆっくりと近づいていった





ヒカルは、院生時代からの友人と話をしている

邪魔をするのも悪いかとも思ったが

そっとその肩を叩いた





ヒカルは振り向く
















「あかり!?」
「えへへー」







うちにいつはずのあかりの姿に、ヒカルは驚いて目を丸くする

















「何?何でいんの?」
「ヒカル、また忘れ物したから、届けに来たの」







ヒカルは、中学生の頃からよく忘れ物をしていた


その頃からあかりは、ヒカルの母に代わり。たびたび忘れ物を届けに来ていた


















「免許証、忘れてたよ。いらないかとも思ったんだけど」





そう言って、あかりはバッグから免許証を取り出し、ヒカルに手渡した


















「ごめん、サンキュ」
「どういたしまして」






お礼を言われて、あかりはやわらかく微笑んだ


その笑顔は、誰にも見せたくないほど、優しくてキレイだ



ヒカルはだから、あかりが棋院に来るのを反対していて、それが一番の理由だったりする



















「気をつけてね」
「悪い」






注意されて、苦笑するヒカルの手の中の免許証


何かがはみだしているのが見えた
















「何これ…」





小さな声でつぶやいて
見えるものをひっぱりだした




















「わっ、バカ!」







ヒカルはえらく慌てて、免許証を隠そうとする

が、あかりはあっさりと抜いたあとだった


















「写真?」
「///」








赤くなっているヒカル


あかりはその写真を表向けて見た



その写真には、あかりが映っていた


















「ヒカル・・・」
「お守りにしてたんだよ、悪いか!」







真っ赤になって照れて

そんなヒカルが可愛くて、大好きで



それだけで嬉しくなってきた





どんなときでも、ヒカルの中には、自分が存在できるのだとわかったから


















「愛が深いですね、進藤さん?」
「うるさいなー、いいだろ、別に!」







和谷にからかわれているヒカル




それは自分とのことで
















「あたし、そろそろ帰るね」
「あああ、わざわざありがとな」
「うん!手合い、頑張ってね!」
「今日は絶対負けない気がする」
「応援してるからね」
「気をつけて帰れよ?」
「任せて!」







あかりは明るく笑って言った




















「今日の夜ご飯は、ヒカルの好きなものにするね!」




帰り際、ヒカルにそっと耳打ち











「楽しみにしてる」






大切な人の一言で
どんなささいなことでも


すぐに幸せな気分になれる



ヒカルの生活に関わっていられることが
すごく嬉しかったから





離れている時間は、あなたのことを思いながら

その幸せを、今度はあなたに返しながら、気持ちを重ねていけるように








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企画作品第3弾は、ありがたくも頂いたお題からです。『免許証』恋人同棲ひかりでお届けいたしました。
お題を提供してくださった、Kaaz07さまvどうもありがとうございましたーvv
設定が、恋人ひかりでしたので、恋人・・・よりもちょっと上な(笑)同棲ひかりにしてみました。
実は、もう一個考えていたりするので、そっちも描いてみたいです。

免許証に隠したあかりちゃんの写真。ひゃー///らぶらぶですね///(ヤメロ)少女漫画ですよ!(笑)
朝の二人のやり取りが、新婚っぽい感じでv描いてて楽しかったですvv
らぶらぶな雰囲気が伝われば・・・と思います///
あかりちゃんを可愛く描くことを頑張ってみました。いかがでしょうか?

何はともあれ、お題提供、本当にどうもありがとうございましたっ!今後ともよろしくお願いしますー(ぺこり)
Kaaz07さんのみ、お持ち帰りどうぞですv少しでもお気に召していただければ幸いです!





音羽桜姫。







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