思い出をたどって














卒業アルバム
















「ねぇ、ヒカル」
「んー?」
「帰っちゃダメ?」
「ダメ」






ほんとに勝手なんだから



日曜日

ヒカルから突然の電話






「今から来ない?」

なんて嬉しいお誘い

あたしが断るはずない






久々に会えると思って急いで来たのに
ヒカルったらさっきから、棋譜並べに集中してる

あたしは暇をもてあましてる




こんなことしょっちゅう


いつものこと何だけど



あたしは何のために呼び出されたのか、わからない








それでも帰るなって言われたことが、少しだけ嬉しかったから


ヒカルが構ってくれるまで、何をしてようか

それを考えることにした





何も、じっとしてることないのよね

邪魔しなくちゃいいんだし







あたしはベッドから身体を離して
囲碁関係の本がたくさん置いてある本棚に近づいた



ヒカル、どんな本を読んでるのかな

あたしにも、参考になるのがあるかもしれないと思って
一つずつタイトルを確認していく


秀策の棋譜っていうのが、一番多いのね



















「これなんかいいかも…」






あたしにもわかりそうな本

初心者の囲碁入門っていう本




それを取り出そうとした時

あるものに気が付いた

















「これって…」






卒業アルバムだよね


ヒカル、こんなとこに置いてるんだ





囲碁入門を見るはずだったのに、あたしの手はアルバムに伸びてた



















「懐かしい…」






うちにもあるけど、最近見てないな




急に見たくなって

あたしはアルバムを開いた



















「わー…」






中学の時のアルバム


いろんな想い出の写真が、そこにはたくさんあった



















「何見てんだ?」
「ヒカル」





さっきまで碁盤の前にいたのに

いつのまにか、あたしのすぐ後ろにいた



















「終わったの?」
「うん。で、何見てんの?」
「卒業アルバムだよ」
「中学の時の?懐かしいな」
「うん」







ヒカルと一緒にアルバルから想い出の旅へ




















「見て。ヒカル、こんなに可愛い」
「お前はあんまり変わってないな
って、俺可愛くないし」
「この頃は可愛かったよ」
「そうですか…」






楽しかった想い出が、今もそこにあるみたい




中学に上がったばかりの
まだ幼いあたしとヒカル


変わったようで、お互い何も変わってないことに気付いたりして




















「ねぇ、この時のこと覚えてる?」
「ああ、そんときさ」






そんなに遠くないのに、懐かしいと感じてしまう想い出を

ヒカルと振り返る



ただ

同じ想い出を共有できるのは、一年生の時だけ




今、改めて気づいた




ヒカルと一緒に写真に映ることができたのは

ヒカルの隣で、想い出になる日々を過ごせたのは

ほんの少しの間だったことに



だってアルバムの中のあたしたちは、隣にいない



















「何かこうして見ると、あたしたちの共有の想い出って少ないんだね」
「は?」






お互いの世界を見つけて

それぞれの想い出を作った



そばにいなくても、当たり前のように時間は流れてた




















「そんなことないだろ」
「だって、写真少ないんだもん」
「写真に残ってなくたって、覚えてるだろ?」







そうだ、カタチに残っていなくでも
ちゃんとある

あたしとヒカルの想い出


囲碁部のこと、あの帰り道のこと



ヒカルとの距離が遠くなって、会えなくなって

あたしはこのまま、終わりなんだって思った


離れちゃうって思った





だけどヒカルは、一緒にいた時のことを忘れないで

隣にいるって、思ってくれてたんだね


















「一緒にいた時間は短かったかもしんないけどさ、俺たちずっと幼なじみだったじゃん?」
「そうだね」






幼なじみとして過ごした時間の想い出は
きっと一番長くて



心の中の想い出は

きっと一番たくさん




















「あたしたち、ずっと一緒だもんね」






離れない心のように






















「でもやっぱり寂しいよ」
「どうすんの?」
「んー…」






何かないか考える





あった

いいこと思いついた


















「ヒカル、あっち向いてて!」
「何で?」
「いいから!」
「何だぁ?」







納得しないヒカルの腕を引っ張って
反対を向かせた




あたしはそっと、ある写真を取り出して
卒業アルバムの一番最後のページにはさんだ



あたしとヒカルと
一緒に持ってる

お守りの写真



卒業式の


















「これでよし!」






最後に、大切な二人の想い出



















「何したんだよ」
「まだ見ちゃダメーっ!」
「何で!?」
「ダメったらダメなのーっ!」






驚いてもらうんだもん



想い出は共有したいでしょ?


あたしも帰ったら入れておこう






想い出をたどるもの

懐かしくて切なくて




あの頃の自分

二人を振り返って
確かめ合うの




ずっと一緒にいた、二人の足跡







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企画作品第17弾は、頂きましたお題・『卒業アルバム』です。
お題を提供してくださった徳岡由季さまvどうもありがとうございましたvv

『卒業アルバム』略して『卒アル』。
過ごしてきた期間の一つ一つを形に残したもの・・・姫はそう思っています。
時が流れて忘れてしまう日が来たとしても、形に残るものは、いつかきっと思い出すのです。
曖昧じゃなく、確かにあった時間。それはいつの日か、懐かしいと思えるものになって思い出すのです。
こんな自分。あんな自分。写真を見たときに、思い出せたら素敵ですね。
最近見てないな。久しぶりに見てみよう。そんな風に思っていただけるといいなv

恋人設定なひかりにしましたが、本当は新婚ひかりで描きたかった作品でもあります。
何年後かの話で、また卒業アルバムを見つけて・・・という、続きも描いてみたかったりします(><)
こ、こんなのでよろしかったでしょうか・・・?少しでもお気に召していただけると幸いです(><)
ご提供くださった由季さまvどうもありがとうございましたvv
今後とも、どうぞよろしくお願いしますっ(ぺこり)
徳岡由季さまのみ、お持ち帰りどうぞですv



音羽桜姫





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