想い出としてとらえながら
忘れたくない













出会った頃のように















懐かしい夢を
何故だかわからないけれど












「今日はここまでにしまーす」



ヒカルに指導碁を頼んだ

卒業式のあの言葉に、あたしは今も甘えてる









「お疲れさまでしたー」
「お疲れさまー」




一人一人、片づけをして部室を出て行く



気づいたらそこには、あたしとヒカルだけが取り残されてた













「はぁ・・・」




不意についたため息に、声が重なる















「何かあった?」




来てくれた日は、あたしが終わるのを待って
一緒に帰ってくれる











「ううん、何でもない」
「抱え込もうとするの、あかりの悪いクセじゃん?」






ヒカルにはばれてしまう

あたしがどんなにうまく隠しても


だけど肝心なヒカルへの想いは、うまく伝わらない

いいの

伝わらなくていいって。想ってる自分がここにいるから
















「もうすぐ大会なんだけど、自身なくて…」
「大会出るんだ」
「うん。これでも一応、部長だから」
「へー」




ヒカルは碁石を一つ掴んで
碁盤に打ち付ける


引き締まるいい音

あたしにはまだ出せない
















「まぁ・・・大会って緊張するかもしんないけどさ」
「緊張なんてもんじゃないよー」
「毎日、頑張ってんじゃん?」
「そりゃ・・・」
「勝ち負けよりも、あかりが楽しめたら、それでいいんじゃない?」
「ヒカル・・・」






それは、ヒカルが楽しんでるから言える言葉なの?

好きだから頑張れるのは、碁も恋も同じ?


ああ、やっぱりヒカルの言葉は
あたしに何よりの勇気をくれる














「ヒカルは楽しんでるの?」
「おお、めっちゃ楽しい!」
「そっか」





そうやって笑うヒカルは、もうしっかりプロの顔


あたしの知らない顔


いつのまにか、遠く離れてしまった笑顔


だけどあたしには

それを引き止めることも

とどめておくことも出来ないから



今のままで幸せ


言い聞かせた



















「そうだよね。何よりまず、楽しまなくちゃね!」
「そうそう!」





心から楽しいと思えたら、それは最高に幸せ















「それにさ」
「?」
「お前、そんな顔してるのらしくないぜ」



いい気分が台無しね


らしくないって何よ


あたしだって、たまには泣きたくなる時だってあるんだから




だけど、そんな言葉でも
ヒカルがあたしに勇気をくれるから頑張れる

励ましてくれるってこと


ヒカルの不器用な表現方法

変わってないもの
















「悩むお年頃なんですー」
「でも俺、笑ってるあかりが一番好きだぜ」
「え…?」





突然の不意打ち


思い出す今朝の夢


そう、出会った頃

ヒカルはあたしにこう言った









「俺、笑ってるあかりが好きだ!だから泣くな」








幼稚園で、からかわれて泣いたあたし



ヒカルの言葉で笑うことができた



ねぇ
ヒカルからもらった言葉で

あたしはどれだけでも頑張ることができるんだよ







あたしたち、いつからこんなに離れ離れの距離を歩くようになったのかな


そばにいるのに

こんなにもヒカルは遠いの



延ばしても届かないてのひら


追いかけても近付けない面影





出会った頃のように、手を繋いで歩きたい



変わらないで

ずっとそばにいて





戻れないこと、わかってる


二度と訪れないことも


でもそれじゃ寂しいの


その頃の証を残しておきたいのに



伝えたいことの少しも
あなたを前にすると
何も言葉もならない



声にも出来ない




その想いは、雫になって

あたしの目から溢れ出す


















「あかり!?」





ヒカルは驚いてる

当たり前のだよね



あたしが泣く理由は、なんて勝手


















「どうした?」
「な、何でもな…っ」





泣きたくなんかないのに


ヒカルが好きでいてくれる

笑顔のままでいたいのに



















「何でもないのに泣くわけないだろ!」
「何でもないの…っぅ」




勝手な理由なの

そばにいてほしい

離れたくない

遠くへ行ってほしくないのに

やっぱり頑張るヒカルの背中を追いかけるのが好きなの

いつか届くって信じたいの
















「泣くなって」
「・・・うん」





涙が止まらないあたしのそばで
ヒカルは困ったように笑って


あたしの頭をぽんぽんと軽く叩いた















「何か、泣かせるようなこと言ったならごめん」
「・・・ヒカルのせいじゃないから」





ヒカルのせいじゃない

あたしがわがままなだけなの






変わることなんか、誰にも止められない

きっと神様に願ったって

だからせめてお願い

この距離でいいの

離さないで




繋いだ手が離れないように


お願い


この距離だけを守りたい

















「ほら、帰るぞ」
「・・・うん・・・」







不器用に差し出された手を取った

あの頃と変わらず、あったかかった




それ以上は望まないから


この距離だけは変えないで


言葉にもできなくて


ただ


祈った







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企画作品第19弾は、いただきましたお題より。『出会った頃のように』です。
お題を提供してくださった、森永りょくさまvどうもありがとうございますvv
これで頂いたお題は最後になりますですー。

何か、切なくなっちゃいましたねー。最初は恋人未満で描こうと思っていたのですが、気づいたら恋人未満、片想いひかりに変わってました。
「またかい!」と、自分で突っ込みをいれたい気分なので、さっそく突っ込んででみたり。
あかりちゃんが泣いた理由、きっと進藤さんは、一生気づくことはないと思います。
あかりちゃんも言うつもりはありません。ただ、新婚さんになったとき、進藤さんが突然思い出して、懐かしい話をするとは思いますが。
その時にでも言っちゃうのかな・・・でも、「秘密ー」とか言って、ごまかしたりしてほしいですね。
あたしの中だけの秘密の想い・・・みたいな感じでvやっぱり夢見人です(笑)
ちなみに新婚ネタは、出会った頃の話をする二人・・・だったりします。

何はともあれ、りぃちゃん、こんなので良かったですか?(だらだら;)
少しでも気にいってもらえると・・・嬉しいです///
お題提供、どうもありがとうございましたっ!

森永りょくさまのみ、お持ち帰りどうぞですv






音羽桜姫。






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