遠く












雲のように
















流れて
遠く、どこまでだって流れて
カタチを変えながら
つかむことのできない、こがれるもの














「俺さ、小さい時、雲の上に乗れると思ってたんだ」



ふいに見上げた空を見て
ヒカルが話をしてくれた


それは、突拍子もないことだったけど

















「わかるよ、あたしもそう思ってたもん」
「だと思った」
「それでね、雲の上には雷さまがいて、上れたら会えると思ってたの」




そんなわけないのに

夢を見ていたあの頃

















「俺は、雲ってつかめると思ってた」
「雲を…つかむ?」
「うん」




ヒカルは少し寂しそうに笑って
流れる雲に手を伸ばした
















「そんなこと、できるわけないのに
もしできたら、届くような気がしたんだ」




『ダレニ?』


聞けなかった



見つめるヒカルの横顔は綺麗で
でもどこか、寂しそうで


何となく気付いてた
ヒカルがあたしに隠し事をしてること

それがどんなことか
あたしには全然、思いつかないけれど

ヒカルがたまに寂しそうに笑うのは

誰かを思い出すからだって

見てたら気づいた


皮肉ね


そばにいたいと願い続けて
その居場所を手に入れたのに

一番近い場所にいられることで気づくなんて













「雲ってつかめないから、何だか憧れるんだよな」
「そうだね」



あたしには何も言えないけど
ヒカルが今、どんな想いを抱えてて
どのくらいの想い出を抱えて

誰を思い出して

誰にたどりつきたかったのか

あたしが知ることはできないけど

雲のような人だったんだろうな



ヒカルにそんな顔をさせるほど
ヒカルにとって、誰よりも大事だった人


それはきっと、忘れたくない
なくしたくない想い出で

今もヒカルを包み込んでるんだ
きっと















「あたしはね、ヒカルが雲だと思ってた」
「何で?」
「ヒカルはあたしの目標だったから」
「そうだったのか」
「うん」




辛い時
泣きたくなる時

いつだって
頑張ってる姿を思い出して追いかけてた












「手を伸ばしても届かなくて、どんどん遠くに行っちゃうの」
「ごめん」
「雲みたいに、つかめなかった」




近づいても、近づいても
離れていく


だから、おいかける
その距離を縮めたくて

想う人は違っても、気持ちは同じなのかな














「届かなかったけど、今はそばにいられるから…」
「うん」
「でもそれって、届いたってことでしょ?」
「捕まったか…」
「えへへー」




届いたの
つかみたいものを、手にいれたの
















「だからヒカルも、絶対届くよ」
「そうかな」
「そうだよ!」




だから










「頑張って手を伸ばして」




誰よりそばであたしは
届く瞬間を見届けるから

願い続けて















「俺、頑張るよ」
「うん!」




届かないなら手を伸ばして

そしたらきっと、届くから

触れられるから



雲のように遠く流れてしまっても
想いは届いて、あなたのところへ






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恋人設定なひかりで『雲のように』です。
何となく、「いつか消えてしまう・・・」と、リンクさせた方がいいのかとも思ったのですが。
でもやっぱり佐為絡みで。
あかりちゃんの「ヒカルが雲だと思ってた」っていうのが描きたかったのです。
あかりちゃんにとっての雲は進藤さんで、進藤さんにとっての雲が佐為さんです。
どちらも、届きそうで届かない。どんなに腕を伸ばしても。
だけどあかりちゃんはあきらめずに手を伸ばして、捕まえることができました。
進藤さんも、いつかちゃんと届きますように。

流れる雲が、きっと願いを佐為さんまで運んでくれるから。



読んでくださって、ありがとうございましたっ



音羽桜姫。






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