微熱さえも溶け合えたなら、二人離れることはない。
それが幸せであるかどうかなど。考えて答えの出るものでもない。

ただ、君の存在だけがいとおしい。

違う熱を持っているから、君を感じることを幸せと呼ぶのだろうか








二人が二人で本当に良かった・だってあなたを抱きしめることが出来るのだもの








「ん…」






もぞ、と、布団の中で身じろいで、C.C.はゆっくりと目を開けた。

月明かりの眩しさに目がくらみ、うまく目が開けられない。



部屋は薄暗く、余計に明るく感じてしまう。











「眩しい…」






不満そうに呟きながらも、月はどこまでも美しく。
C.C.はゆっくりと体を起こす。


くい、と裾が引っ張られる感覚に、下を見れば。

まるで自分を留めるように、ルルーシュの指がお互いを繋いでいた。













「何だ…?」







静かにぽつりと言ったあと、手をゆっくりと撫でてやると、少し力が抜ける。

それを合図に、そっとあやすように、その指を解いた。


長い髪をかきあげ、身を起こしたまま月を見つめる。


いつの間にか、明るさにはなれてしまっている。















「…」








何故、眠りが覚めたのだろう。

睡眠中に目を覚ますことなど、皆無に等しいと言っても良いくらい。
眠りについたC.C.は起きない。

滅多な騒々しさにも目を開けないはずなのに。















「!」








考えながら瞬きも少なくボーっと月を眺めていると、再び袖に力を感じて。
C.C.はルルーシュへと目を向けた。

そのままじっと、その寝顔を見つめる。

















「良く寝ているな」








そこに浮かぶ微笑は、どこまでも優しい。

さらさらと指触りの良い髪の毛を掬うように撫でると、くすぐったいのか
ルルーシュは少し身じろぎをする。

その反応が楽しくて。
C.C.は何度も何度も、往復させて髪の毛を撫でた。

普段のルルーシュでは、絶対に見られない表情。
この状態で起きれば、「何をしている」と、冷たい言葉に冷たい目。

生意気な態度で、C.C.を楽しませるのだろう。

本当は何処までも優しい男。


復讐という仮面に包まれ、見せない本心。
















「ルルーシュ、わたしは。」









そう言いかけた時、C.C.の目に映ったのは、透明流れた一筋の滴。

















「…」







悲しい夢でも見たのだろうか。

夢の中での仮面は、意味を成さない。
そういう時、心の奥が見える。

寝顔を見せるということは、さらけ出すということ。


ルルーシュ本人には、まったくその気がないとしても。

















「大丈夫だ、怖いことなどないよ」






優しい声色で、そっと言葉を奏でて。
そっと指先で拭う。

再び髪の毛を撫でると、ルルーシュはゆっくりと目を開けた。

広がっていく紫色の瞳に光が満ちる。

















「起きたのか」






やんわりと聞けば、ルルーシュは視線だけをC.C.に向けた。















「まだ起きるまで時間がある。もう一度寝るといい」







起きているルルーシュの髪の毛を、あやすように撫でるけれど
ルルーシュからの反抗はない。
















「お前は…寝ないのか」
「寝るさ。少し目が覚めただけだ」
「そうか」







短い会話を交わして、ルルーシュは一度目を閉じた。


そして目を開けると、C.C.と視線を重ねる。

















「なんだ」
「…」
「ルル…」
「何か…あったのか」







名前を呼ぼうとしたC.C.の声を遮って、ルルーシュの声が重なる。


手が、下からそっとC.C.の頬へと伸びて。

『何か』それはこっちのセリフだというのに。
何故そんなことを聞くのだろう。

泣きそうな顔でもしているというのだろうか。




どこまでも甘い男。

甘えてくれないくせに、甘えさせる術を知っている。


ルルーシュに向けたC.C.の表情は、自分では見えない。
ルルーシュにしか見えない。


(わたしはいま、どんな顔をしている?)


尋ねども、答えはない。














「どうした…?」






黙ったC.C.に、ルルーシュのらしからぬ優しい声が降り注ぐ。



















「いや。何でもない」








伸ばされた指先に、手のひらを重ねて。
C.C.もまだ、
滅多に見せない顔をする。


二人黙って、暗闇の中見つめ合えば、交わるのは視線だけ。


『共犯者』というもろい絆で結ばれた関係。
どうしたら近づける。

溢れた優しさの欠片。


教えることもないだろう。

眠りの中、流す涙は、きっとルルーシュの本音なのだから。



強くありたいのなら、そうであればいい。

涙をも知らぬ冷徹さが手に入れたいのなら、甘えすらも許さないでいてあげるから。


何があろうとも、きっと彼女は、ルルーシュを支え続けるのだから。














(魔女であるわたしには、こいつを救う術など知り得ない。)






ツキンと、微かな胸の痛みを感じながら。
それも彼女は。

『絆』だけを確かなものとして、彼のそばにいるという決意を強くする。


しばらく起きていて、意識もしっかりとしたのだろう。






気づけばルルーシュはいつもの笑顔を浮かべていて。


それでいい。
弱さはそっと受け止めるから。
だから。願うまま。

思うまま強くいて。















「ルルーシュ」







突然名前を呼んだC.C.は、ルルーシュを抱きしめ押し倒す。














「なん…っ!?」







うろたえたような、驚いたような。
あらゆるものが混ざったような声が聞こえて。

C.C.はルルーシュの肩越しに笑顔を映す。
















「いきなり何だ…っ!?」
「悲しいことは悲しいと言えばいい。すべて吐き出せばいい。」






静かに、語るように、聞かせるように。
伝えられる言葉で、伝わるのなら。
















「何を言い出すんだ」






涙の記憶などないルルーシュには、今この状態が何故なのか、理解するだけで一杯。















「泣きたい時は泣けばいい。お前が見られたくないのなら、わたしは。
知らないフリでも、見なかったフリでも、何だってお前の望むままにするから」







抱きしめられ、優しく柔らかな声が降り注ぐ。

ルルーシュはそっと目を閉じた。


じわりと、慣れない気持ちが胸の奥を支配する。


素直に、彼女の言葉はそのまま伝わる。




君がいて良かった。そう思えるほど。


















「我慢することが強さだと、わたしは思ってなどいない」








温かい音色。

回された腕に力が入った。

ルルーシュの肩が小さく震える。















(それでいい)





そっと。気づかれないように、心の奥で。


君を想うから。




















「わたしは何があろうとも、お前のそばいる」
「頼んでなどいない」
「わたしが決めたことだ」








二人が二人で良かった。だって君を抱きしめることが出来るのだから











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ルルシーを書くと、なぜか切ない物語が多くなってしまいます(あせ;)
シリアスも好きですが、二人が意味もなくいちゃこいてるのが大好物なんですが!
本人たちは無自覚でらぶらぶだと、なお素敵だと思っているのですが!

シリアスの中に、甘い雰囲気も出したくて欲張ってみたら、こうなりました。
欲は出すものではないという教訓を、学びました(笑)


シーちゃんに言わせた『我慢することが強いことだと思っていない』というのは
私が大切な人に伝えたい言葉の一つだったりします。

涙を流すことも、決して弱いことではないのです。
誰かのために流す涙は、本当に強いものだと思います。

弱くなることも、我慢しないで甘えることも。
それが強くなることへの一歩だと思っています。
だからルルにも。シーちゃんがいるから大丈夫なんだよ。というのが伝わればいいなと思います。
シーちゃんは絶対にルルが大好きだと思うのです。それはきっとルルも一緒。
恋に発展しなくとも、くすぶった想いがあるのは、ごまかしようのない本当だと思います。
気づいていないだけで。お互いにしか反応しない心が、絶対にあるはずなのです!

ルルシー語りで締めっ(笑)なあとがきでした、





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