言えないことだってある












たとえば
好きな人を前にした時
それが幼なじみだった時
まだ言える勇気がなくて








言いたくない時




























「最近、あかりちゃんとどう?」












和谷が話しかけてきた




















「どうって…何?」
「会ったりとかしてるのかよ」












そんなこと関係ないだろ







とも思うんだけど


協力してくれてるのは正直
ありがたい




















和谷は俺にとって先輩で






中学の時に
幼なじみの彼女と付き合い始めたらしい




そんな意味で先輩なわけで































「どうって…会って…ない」
「え?」
「…会ってない」













小さな声で
だけど聞こえる声で


































和谷は何とも言えなさそうな顔をして
深くため息をつく





















「何だよ…」
「お前さー、もうちょっと、何とかしようとは思わないわけ?」
「それは…」















俺だって
このままの関係で終わらせるつもりなんてない






終わらせたくない

とは思う


























「言えない気持ちもわかるさ
それならチャンスを作らないとな」
「チャンス?」
「たとえば、遊びに誘ったり」













それができれば苦労はしない





















「もし。っていうか、ほぼ間違いないと思うけど、
あかりちゃんはお前を好きだとする」
「うん」
「それでもしお前が、会うチャンスを作ってあげたら
あかりちゃんから言おうって気持ちになってくれるかもしれないじゃん?」
「そうかなー」














そんな簡単にうまくいくもんなのか






















「考えてみろよ
会う機会があるのとないのとじゃ、全然気持ちも変わってくるんだぜ」
「そういうもの?」
「会えないとやっぱり、不安になるもんなんだよ」
「付き合ってなくても?」
「なくても!好きだったら、会いたいと思うのが普通だろ?
お前は会いたくないのかよ」
「会いたいさ!」
「じゃあ、頑張ってみれば」




















そんな簡単に




























「たとえばさ、さっきも言ったけど、あかりちゃんがお前を好きだとする」
「うん」
「一緒に遊びに行ったりすると、期待してもいいかなって
思うかもしれない」
「会わなかったら?」
「確率ないのかなって、あきらめちゃう場合だって
あるかもしれないんだぜ」












それは困る













まだ何も伝えてないのに






















「とにかく、お前次第なんだから頑張れよ」
















頑張りたいさ

伝えたい気持ちがあるから

































「思い立ったら吉日だぜ!電話電話」














こいつ
絶対この状況楽しんでる











かと言って
同じ立場だったヤツの言うことは
妙に説得力がある

















俺はあかりに電話した




















しばらくコールしてみたけど
出る気配がない












授業中かな













一度切って
今度はメールを入れる




















「今日、棋院まで来れる?」















しばらくしてから









「いいよー」











って返事が返ってきた

会うの何か月ぶりかな

変わってねぇんだろうな





























「幸せそうですねー。進藤くーん?」
「う、うるさいやい!」













とにかく
今日の午後は早めにケリつけねぇと





和谷の方をちらっと見たら
すっげぇムカツク顔しやがった




粘って来る気だな











こてんぱんにしてやる


























「覚悟しろよ」
「何の話でしょう?」
















もちろん
あの笑顔どおり
和谷が簡単に勝たせてくれるはずはなく
終わったのは、4時を少し回った頃だった


































「お前、俺の味方じゃないのかよ!」
「真剣勝負に、敵も味方もありませんー」
















だーっムカツク!

























「ヒカル!」

















あかりの声が聞こえたら、何か少し
ムカツク気分が飛んでった
















「わり、遅くなった」
「ううん平気。今来たとこなの」
























可愛い
久しぶりに見るあかりは
マジ可愛い




























「あかりちゃん、こんにちはー」
「和谷さん!こんにちはー!」
「進藤とデート?」
「え?えぇっ!?」
「和谷っ!」


















邪魔しやがって

変なこと聞くなよ
和谷が電話しろっつーからしたのに






結果、あかりにこうして会えるわけだけど














にしたって
仲良く話す姿を見るのはおもしろくない






















「あかり!行くぞ!」
「あ、うん!」
「進藤!」




















何だよ

もうお前の言うことなんか聞かないぞ




















「あかりちゃん。ちょっと進藤かしてくれる?」
「え?あ、はい…どうぞ…」
「ありがと。
進藤。ちょっと来い」
「何だよ」

















和谷は、あかりから少し俺を遠ざけて

















「いいか。言う、言わねぇはお前の勝手だけど
幼なじみでいるのもいいかもしんねぇけど
伝わったら、もっといい思いができるんだぜ」
「たとえば?」
「キスとか」













キス?






「き…っ!
バカお前…っ何言ってんだよっ!」
















キスって
そんな





何考えてんだ、俺っ


























「(おもしろい…)とにかく!頑張れってこと!」
















そんなこと

















「お前に言われなくたって、わかってるよ!」




















頑張るさ
せっかくのチャンスなんだ






















和谷は俺に話が終わったあと

あかりの方に近づいてった


















「お待たせー」
「あ、いえ」
「進藤から重大発表があるかもだけど。驚かないでね」
「え?はい・・・」
「あかりっ」
「あ、うん!じゃあ和谷さん」
「頑張ってねー」
「?」
「あかりっ!」
「はーいっ」

















何話してんのかしらないけど
呼んでやったら慌てて付いてくるからヨシとする








すぐ後に、あかりの気配を感じて

俺は棋院を出た



















しばらく何も言わずに付いてきたあかりが
急に話しかける








「ねぇ、和谷さんと何話してたの?」
「何でもね」
「あたしには言えないこと?」
「言えないこと」
「えー?あ!じゃあねぇねぇ」









あかりが俺の袖を引っ張る




















「何?」
「和谷さんが、ヒカルから重大発表がある・・・みたいなこと言ってたんだけど」











あいつ
そんなこと言ったのか






あーっ!どうしろって言うんだよ!


言う、言わないはお前の勝手とか言っといて

しっかり言えってメッセージ残してんじゃねーか!
















「何でもね」
「えー?何?教えてよ!」
「何でもねぇって」
「じゃあ、何で今日あたしを呼んだの?」
「別に・・・」
「ヒカル、何か変だよ・・・」
















優しくしたいのに

これじゃ八つ当たりだ
























言えるわけないだろ
あかりのことだぜ?










しかも
好きだってこと


























まだ言えない






伝えなくちゃいけないけど




やっぱり言えないんだ




























ふと気付いたら
さっきまで隣を歩いてたあかりの姿がなくて










俺は振り返った





あかりは俺の数歩あとで立ち止まっていて


















「どうしたんだよ?」












急に立ち止まって





俺はあかりの顔をのぞきこんで

うろたえた






























「お前、何泣いて…」





何でいきなり泣いてんだ?

俺、何か泣かせるようなこと言った?
















「…んで…」
「ぅえ?」
「何で話してくれないの?」
「…え」
「あたしは何でも話してほしいのに
ヒカルのこと、一番わかってたいのに…!」


















あかりからもれる意外な言葉
涙よりも、その言葉に反応せずにはいられなくて

















「隠し事なんか、しないでよ」
「…えっと…」
「あたしたち、幼なじみでしょ?」



















『幼なじみ』




















この時ほど
この言葉が重く聞こえたことはない

かもしれない













そうか
やっぱりあかりにとっての俺は
幼なじみなんだな


















それならいっそのこと打ち明けて

余計な思いなんか捨てて



ただの幼なじみでいよう







振り切るんだ





そうすれば



きっと泣かせることもない



























「俺、お前のこと幼なじみだなんて思ってないから」













口から出たのは、考えてたのと逆のことだった





慌てて口を押さえるけど、もう遅くて
























「どういうこと?ヒカル、あたしと幼なじみじゃないの?」












俺、今何言った?


今決めたばっかりなのに










『幼なじみじゃない?』









あかりを混乱させるだけの言葉を吐いた





























もうこうなったら
全部はいてやる



















「俺、あかりのこと好きだから・・・
幼なじみだなんて思えない」












これが俺の本音











好きだから
幼なじみでなんかいられない

いたくない






それがあかりを泣かせてしまうことだとしても





























「好き・・・って・・・え?」
「だから、俺はお前が好きなの!」
「ヒカルがあたしを好き・・・?ほんとに?」
「ウソ言ってどうすんだよ」
「だって・・・信じられなくて・・・」













あかりの態度は、俺の予想を裏切るものだった

もちろん


いい意味で


























「あたしもヒカルのこと・・・好き」
「え?」
「ずっと・・・好きだったよ」


















あかりが俺のこと?


しかも「ずっと」って何?































「手・・・繋いでもいいかな?」
「え?あ・・・うん」













状況をよく理解できない俺の手のひらに
温かいものが広がって










近くにはあかりの頭があって













気持ちが伝わったとき

こんなにも近くに感じるものなんだな






















「あたし、ヒカルの彼女になってもいんだよね?」
「当たり前だろ!」

























和谷が言ってたようなことなんてまだ無理だけど











その日

俺はあかりと手を繋いで帰った









そのときのぬくもりはきっと
忘れない











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自サイト企画・進藤さん生誕祭『恋愛偏差値』。恋言葉〜男の子編『お前、何泣いて・・・』
高校生ひかりです。恋人未満です。告白大会なんですってば(笑)

進藤さんの恋言葉には、和谷さんがよく出てきます。全部出てくる・・・んじゃないでしょうか?
いろんな告白パターンがあるんだなーと。感心してます。

一番最初に描く予定で選んだお題が、全部告白っぽかったので。
告白大会にするつもりだったのですが・・・告白パターンは10個・・・かな。
それだけでもコンプリしますよ。
そしてそのアトは、もどかしい恋人未満の旅へ・・・
あとがきのくせに、どうでもいいこと語ってますね。

微妙にヘタレ気味の進藤さんなのでした(^^;)
では次回もヘタれていただきましょう!(笑)頑張れー、進藤さーん。










音羽桜姫。




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