いつも言えないけど
何よりも伝えたい言葉があるんだ





















三段になった


みんなからは少し遅れてしまったけど


着実に一歩を歩き出してる


























俺はかばんから携帯を取り出し

一つの名前を探し出す





















3回くらいコールしたら
聞き慣れた声がした
大きな手合いのあとは、必ず聞きたくなる声




























『もしもし?』
「あかり、俺」
『ヒカル、おめでとう!』















いきなりそれかよ





















「ああ、さんきゅ」
『週刊碁見てね!今から電話しようと思ってたの』














声が弾んでる









それだけ応援してくれてたってことだよな





























一番最初に聞きたかったんだ






あかりからこの言葉を































『何かお祝いしなきゃね!何か欲しいものある?』
「…ない」
『うーん…勝手に決めちゃっていいかな?』

















プレゼントなんかいらない






何かって言ったら、怒るかもしんないけど
































「欲しいものはないんだけど、頼みがあるんだ」
『何?』
「会ってその言葉が聞きたい」
『え?』
「ダメかな?」
『ううん!全然!
いいけど…それだけでいいの?』
「ああ」
















それ意外ない








一番のご褒美だ



























『んー…それだけじゃあたしの気がすまないから
何か用意してもいいかな?』
「あかりがしたいなら」
『決まりね!何にしようかなー』



















祝いって言うより、プレゼント感覚なんだろうな
あかりにとっては




























『ヒカル、今度はいつあいてるの?』
「明後日…かな」
『じゃあその日に…』









































こんな約束してるけど
俺たちは付き合ってるわけじゃない





それでもこうして会う約束ができるのは
「幼なじみ」だから















あかりのことを
別の意味で必要だって
好きだって気がついたのは
もう、いつのことだろう












































『じゃあ明後日にね』
「ああ」



















約束の確認を果たしてから電話を切る














決めてたんだ
いつか言おうって

自分の目標に近付けたら
あかりに伝えようって


























まだまだ遠いけど



















そう
伝えるつもりはなかったけれど
















































約束のその日
俺はいつもより早くうちを出た




たまには待ちぶせてやる気分でも味わってみようかと

思ってたのに













あかりはさらにその上をいってた


















10分も早く来たのに
あかりはもう、そこにいるんだ







せっかくの計画
台無しにしやがって




































「早ぇよ!」
「ひゃ!?」

















気付かれないように後ろに回って
驚かしてやった
































「びっくりしたー…」
「あはは」
「笑い事!?もーっ!」















仕返しだ


























「びっくりしたんだよ!」
「お前が悪い」
「何で!?」














言ってることめちゃくちゃなのはわかってるけど


































「とにかくあかりが悪い」
「わかんないよー」






わかんなくていいよ

もう





































「ヒカル、今日は早いね」
「遅刻してもよかったんだけどー」
「早く来てくれた方が嬉しいな」


















その笑顔に弱いんです































「何か食いに行こうぜ」
「そうだね。今日はあたしのおごり」
「は?」
「さー、行きましょー」
「おごりって、何言ってんの?」















そんなの
俺が許すわけないじゃん












































「あたしが出すって言ったのにー!」










店を出たら
あかりは急に俺をたたき始める











「それでいいなんて俺、一言も言ってないぜ?」
「!
だって今日は、ヒカルのお祝いなんだよ」
















そんなこと言ったって
あかりに出してもらうなんて
一生ゴメンだ














それに



そんなことしてもらわなくても

あかりはいるだけで祝いになってる































「…もう…」
「じゃあ今度」
「絶対だよ?」
「仕方なく」
「…何でそんなにイジワルなの?」


















イジワルしてるつもりはないんだけど

































「お祝いで思い出した!」
「何?」

















あかりはバッグからごそごそと何かを取り出し
俺に差し出す













「?」
「昇段祝い。何がいいのかわからなくて・・・」













そういえば、電話でそんなこと言ってたっけ




















「何にしようか迷ったんだけど、それが良いかなって」











少し照れたように笑うあかり

















「ね。開けてみて?」
「ああ」












反応を楽しみに待っているみたいに
せかすあかりに、俺は包みを開ける



入っていたのはネクタイピン




















「ヒカルの髪の毛と同じ、金色にしてみたよ」







びっくりした

あかりから、こんなのもらえると思ってなくて
















「大事な手合いの時とか、つけてみて
絶対ご利益あると思うの」
「何で?」
「あたしの気持ちがつまってるから。」





















笑うあかりを見てたら

何かがはじけたような気持ちになって

























「あたしには、これくらいしか応援できないから」












気づいてないんだ






















「3段おめでとう、ヒカル。」
「お前のおかげ
ありがとな」


















伝えたかったんだ


ずっと












あかりが変わらない笑顔で勇気をくれるから
頑張れるんだ


























「お礼言われるようなこと、あたししてないよ
頑張ったのはヒカル」














ああ
これが俺のものだけだったらいいのに



俺にだけ向けられてる視線だったらいいのに


















その笑顔








気付いてなくても

















それがどれだけ俺にとって大事かって
あかりは気付いてなくても














言えなくてもどかしかった気持ちも
今なら言えるかもしれない










今しか








言えないかもしれない









































「あかり」
「何?」
「俺、ずっとあかりに伝えたいことがあったんだ」
「…うん」












鼓動が大きくなるのがわかる






今なら言える気がしたから

















伝えたい





















聞いてほしい























「俺、好きだったんだ。あかりのこと、ずっと」





言えなくて

伝えたくて






届かなくて







ずっと抱えてきた気持ち




伝えたとき
あかりはどう受け止めてくれる?























変だな


あれだけ戸惑っていた気持ちが
伝えるだけで怖くなくなるんだ




























「ヒカル」





いつもと変わらないあかりの声

耳に届く






















「あたしもね、ヒカルに言いたいことあったんだ」
「何?」









どんな結果になっても
後悔はしない







届いた
それだけで十分満たされる



















俺はあかりの言葉を待った

























「あたしもね、ヒカルのこと…ずっと好きだったよ」


















耳を疑った




























「ありがとヒカル。大好き」










身体中にふわりと柔らかいにおいを感じて












気付いたら
あかりに触れてた
















「じゃあさ、これからも…?」
「うん!」


















長い遠回りを経て
これからもずっと















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「恋愛偏差値。」恋言葉〜男の子編〜『お前のおかげだよ』です。
恋人未満ですよ。らぶらぶですが!
この進藤さんは、理由をつけてあかりちゃんに会いたがっているようです(笑)
連絡をしょっちゅう取り合っているので、付き合ってないけ付き合ってるっぽく見せたかったのです。らぶv

ちょっと精神年齢オトナの進藤さんです。
だけど恋愛には臆病で。大好きな少女漫画作家さんがいるのですが。
このお話の進藤さんは、その方が描かれる男の子を目指してみました。
あかりちゃんが進藤さんにプレゼントする昇進祝い。何にするかに一番悩んだのはここだけの話です(笑)












音羽桜姫。







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