今日だけは素直になりたい
神様
どうか私に勇気をください


Bitter or Sweet


テレビではチョコレートのお菓子などがとりざたにされ
街頭やお店では、可愛くラッピングされたものが売っている
女の子の日
バレンタイン前日
あたしは遅くまで、チョコレートとにらめっこをしていた
あげるかどうか、今になって悩み始めてしまった

あげようと思っている相手は、幼なじみの進藤ヒカル
15歳にして、碁打ちのプロになり
17歳にして、塔矢名人の息子であるアキラくんと、
肩を並べるほどの注目を浴びている人

少し前までは、そんなに距離も感じなかったのに、
今では話すのも緊張してしまう
ヒカルが大人っぽくなったから

悩んでてもしょうがない
せっかく作ったんだし、去年みたいに、渡せないのイヤだし
棋院に行けば、必ずヒカルに会える
前みたいに、軽く渡そう
そう決めたんだけど…


翌日、棋院に来てみると、とてもじゃないけど
普通に渡せないってくらいに
心臓の動悸が激しくなってきて

どうしよう
渡せるかな


中に入るのも、どうしていいかわからなくて

棋院に入ろうとしてる女の人に声をかけた



「あ、あのっ」
「はい?」
「進藤ヒカルさんって、今日はこちらに見えてますか?」

まさか、ヒカルをさん付けで呼ぶ日がくるなんて

「進藤のファンの方ですか?」

いえ、違うんですけど

「今日はバレンタインだし。」

ということは、あたしより先に来た人がいるってこと?


「今日は手合いで来てますけど、今は昼にでかけてますよ」

お昼…
そっか。考えてなかった。


「渡すものとかあったら、渡しておきますけど?」
「あ…」
いいです、ごめんなさい!
失礼します」


あたしはそう言って、棋院を後にした



「奈瀬?何してんだ?もうすぐ時間だぞ?」
「あ、進藤。あんたこそゆっくりしてんじゃない」
「今、誰かと話してなかった?」
「あんたのファン?もてる人は大変ね。」
「何だそれ。
どんなやつだった?」
「どんなって…
赤っぽい茶髪で、肩より少し長めで…かなりの美少女!」
「赤っぽい茶髪?…あいつ来たのか…?」
「何?知り合い?約束でもしてたの?」
「約束はしてねぇけど、知ってるやつかもしんなくて」
「あんたの知り合いに、あんな可愛い子がいたなんて。」
「何だよ?」
「…彼女?(にや)」
「ばっ…!そんなんじゃねぇよ!人違いかもしれねぇし。」
「もらいたい人でもいるの?」
「違げぇよ!
わっ!やべ…時間!」
「ウソ!?」
「いいから走れ!」
「待ってよ!」






ヒカルに会えないまま、帰ってきてしまった
話しかけた人、可愛い人だったな
っていうか、ショックだった
ヒカルをたずねる人は、みんなファンだって見られることが。
幼なじみなんて、自分達がわかってるだけで
一歩抜け出せば、人からみたらただの知り合いとかにしか
見えないんだってことが。
知らずにため息がでる





「あかりー!ヒカルくんよー」

え?ヒカル!?
何で?


「今行くー!」

お母さんの呼びかけに、あたしは慌てて階段を駆け下りた




「ヒカル?どうしたの?」


ヒカルは
『よ』
と手をだし、あたしに挨拶をする

「あがってく?ヒカルくん」
「あ、おかまいなく。」

お母さんと短く会話を交わした後


「あかり?今から外出れる?」

ヒカルから突然の誘い出し

「え?あ、うん。大丈夫だけど」

あたしが返事を返すと
ヒカルは、今度はお母さんに


「ちょっといいですか?
帰り、ちゃんと送りますから」

と、了解を得る

ちょっと前のヒカルなら、
そんな敬語、使えなかったのに


「じゃあ行くぞ」


ヒカルのその言葉に、あたしはヒカルをあとを付いて
家を出た


「寒いな」
「まだ2月だよ?」

あたしの言葉に、ヒカルは少しむっとした様子


どこまで行くんだろう



行き着いたのは、よく遊んでた公園




「あかり」

ヒカルはいきなり立ち止まり
あたしの名前を呼ぶ

「何?」

あたしの心臓は急に高鳴り始め
今、きっと
ものすごく顔が赤いんだろうな



「お前、今日
棋院まで来た?」


ヒカルの問いに、あたしの目が大きく開く

ヒカル
気づいてた?


「奈瀬がさ、・・・って
奈瀬って、院生の人なんだけど、
俺に客が来たって教えてくれて」

それであたしだってわかったの?

「赤っぽい茶髪って言ってたし」



ヒカルは頭をかきながら、少し下を向き
電灯でかすかに見えるヒカルの顔
表情はよく見えないけど
かすかに赤い顔をしてる



「今日・・・バレンタインだし。」
「気づいてたんだ?」
「どういう意味だよ」
「ヒカルって、そういうこと鈍いと思ってた」


あたしが言うと
ヒカルは
『あのなぁ』
と言って、あたしの頭をこづく




「お前が悪いんだぜ?
去年くれなかったから」



ヒカルのその言葉に、あたしは目を丸くした
自分の耳を疑った
ヒカルから、そんな言葉が聞けるなんて

あたしが去年あげなかったこと
ヒカルは気づいてくれていたってことだから
嬉しいのに


「どうせ別の人からももらったんでしょ?」
なんて、つまらない強がり

「もらってねぇよ」
ヒカルはまっすぐにあたしを見て
「あかりからもらえないの、調子狂う」

それってもう、あたしからほしいって
言ってるようなものだよ?
なんてうぬぼれてもいいかな?



「ヒカル」

あたしはヒカルの名前を呼び、
ポケットに入れていたチョコレートを差し出した


「あげる」




一人で悩んであきらめて
ヒカルのこと、ちっともわかっていなかった
それじゃ、人から見たって
ファンだと思われても仕方ないよね
だって実際、あたしはヒカルのファンだから




「サンキュ」

ヒカルはあたしの手からチョコレートを受け取って
笑った




去年は、渡せなかった
自分が弱かったから
だけどもう少し
強くなれたら
今より少しだけ
特別な存在になりたい
いつか








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遅いですが、ひかりバレンタインです。
去年チョコレートを渡せなかったのは、
ヒカルくんにチョコをあげる女の子を見てしまったからです。
「ああ、あたし以外にも、あげる子がいるんだな」と。
今年は渡せることが出来ました。
おめでとう、あかりちゃんv


タイトルですが、特に意味はないです。
去年はbitter。
今年はsweet。そんな感じです。


最後まで読んで下さいました方。
どうもありがとうございましたv









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