何となくそこから動きたくなくて





教室の自分の席で
窓の外を見ながら




















何をするでもなく

何かを考えてるわけでもなく





ただじっと

そこから見える景色をぼんやり眺めてた





















「あかり?何してんだ?」








突然
覚えのある声に引き戻されて

教室の扉に目を向けた






















「ヒカル!」








声の主は幼なじみ

何だか顔見るの
久しぶり




















「久しぶりだねー」
「ああ。で?お前は何してんの?」
「何って…」






何だろう




















「何にも…」






何にもしてない




ただ




ここにいたくて


















「帰らないのか?」
「帰るよ」








そう答えつつも
そこから動こうとしないあたし








ヒカルは教室に入って来た




















「変な奴」






なんて笑いながら

















「ヒカルほどじゃないけど」






可愛くない憎まれ口





















「俺って、そんなに変か?」
「何で?」
「いや、よく言われるからさ」
「だれに?」
「いろんな人」









誰かに言われてるの?
あたしの知らないところで




















「ヒカル、今日手合いは?」







何だかイヤなこと考えが続きそうだったから

わざと話をずらす



















「今日は休み」
「そうなの?」
「じゃなきゃ来てないって」
「そうだよね」







そうじゃなきゃ、来ないよね


まして
会いになんて来てくれない




だってヒカルは知らないから




















「お前、今日日直なの?」
「え?」
「日誌、おいてあるじゃん」
「・・・あ」








そうだ

日直日誌を書いてて
窓の外を見たら

そこから動きたくなくなったんだ






だってここから見える景色が好き





もうすぐ見れなくなる景色





















「ヒカルは?何してるの?」
「俺?」
「帰らないの?」
「あかりに付き合ってやるよ」
「いいの?」
「別に」








さっきヒカルに聞かれたことを


そのまま繰り返してた





残ってて良かったかも









でも

ただここにいるだけじゃ仕方ないよね




教室


あったかくないし



ヒカルが風邪引いちゃったら大変だし





















「あたし、帰るよ?」
「んじゃ、俺も」
「学級日誌、置いてきてもいい?」
「仕事だろ?ついてってやろうか?」
「いいの?やった!」
「一緒に帰ろうぜ」
「・・・うん」







あたしたちは教室を出た




















職員室に向かう途中

なんとなく
何も話さなかった




話せなかった?





だって隣を歩くヒカルに

今まで感じたことのないどきどきを知ってしまったから





















「ちょっと行ってくるね」
「ん」






ヒカルを職員室の近くで待たせて

先生の机に日誌を置いて

さっさと出てくる























「お待たせ」
「そんなに待ってないけどな」








うん


意識してるのはあたしだけ









大丈夫



普通でいられる























「行くか」
「うん・・・くしゅ・・・っ」







小さくくしゃみをしちゃったら

ヒカルが心配してくれた





















「大丈夫か?」
「うん、平気・・・風邪じゃないと思うし・・・」
「教室でぼーっとしてっからだぜ?」
「えへへ」
「笑ってるし」







だって

いいことの方が大きいもん




















「これ、着てろよ」






そう言ってヒカルがあたしに渡したのは



『学ラン』



















「え?いいの?」
「風邪引いたら大変だよ?」
「俺はいいの」
「でも・・・」
「いいから借りとけって」
「・・・うん」









ヒカルの優しさが嬉しかったから




















「ありがと」
「どういたしまして
かばん、持っててやろうか」
「あ。うん・・・」







ヒカルに かばんを渡して、学ランを羽織った




おっきい・・・























「あったかいだろ?」
「・・・うん、あったかい」








さっきまでヒカルが着てたものだもんね

ヒカルの熱があったかい





















「行くぞ」
「うん
あ、ヒカル、かばん・・・」
「いいから、いいから」






ヒカルはあたしのかばんと、二つ持って


一歩先を歩く







ずっと見つめてたヒカルの背中








久しぶりに二人で歩く帰り道は
何だかいつもと違ってた






















「寒くない?」
「平気。俺、寒いの好きだから」
「風邪・・・引かないでね?」
「合点承知!」
「・・・誰?」
「・・・オイ」








あたしたちはいつも笑っていられる















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中学卒業間近のひかり話でしたー。
好きなんですよね。卒業間近の、あの微妙な距離感がvvお年頃ですよ、お年頃!(ヤメ)

進藤さん、さりげなく優しいです。あかりちゃんの切なさを描きたかったのです。
他の女の子から見た進藤さんの話を、聞きたくなくても聞かされ。
願うことなら、そうやって普通に話をしてみたかったのです。
幼なじみで両思いって、幸せな部分と、そうでない部分があると思うんですよね。
普通に出会っていたら、存在すら知らなかったかもしれない。話をすることなんて、なかったかも知れない
だけど、一番近くでその人の全てを見ることになる・・・みたいな。切ないと思います。幼なじみ。語ってますが(笑)

あかりちゃん、何かテンション低いですが。やっぱりこの後は、笑顔が戻ったと思いますv
あかりちゃんの笑顔を戻せるのは、進藤さんだけなのですvv(どりぃ夢←笑)


あ、「合点承知!」の後のあかりちゃんの「・・・誰?」は、本気じゃないですよ(にこv←笑)



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