守りたいと願うから
たとえ
何を犠牲にしても



誓いと約束





「もう、ケンカしちゃダメだよ?」
「あかりには関係ねぇだろ!」
「関係あるもん!」




子供の頃の夢を見た
懐かしいあの日
約束をしたあの日の優しい夢を




「ヒカル!」





学校が終わる
生徒が帰る下校時刻
ヒカルは校門の前であかりを待っていた
もちろん不意打ち
ヒカルが待っているとは思っていなかったあかりは、
驚いてヒカルに駆け寄った




「どうしたの?」



尋ねると

「近くまで寄ったから」


と、そっけない返事が返ってきた

ちゃんと理由があるのだけど、言わない
あかりは

「ふーん」

と言いながら、ヒカルの顔をのぞきこむ

ヒカルが迎えに来るなんて、めったにないこと
何かあるのだろうが、言わないので
それ以上は突っ込まないことにする





「帰るぞ」
「え?あ、うん」




歩きだすヒカルに、あかりはついていく

見つめる背中が、前よりも大きくなった気がした









高校生になったあかり
プロになったヒカルは幼なじみ


両思いなのに、一歩が踏み出せなくて
友達以上恋人未満の関係を続けてきた

ヒカルはそばにいすぎて気付いていないけれど、
あかりはかなりの美少女


それは正直
可愛いと思ったことは数え切れぬほど
だけど、そちら方面に疎い二人だけに
関係はなかなか進まない











ヒカルが今日、迎えにきたのは
最近あかりが、誰かにつきまとわられているという噂を聞いたから

大切な幼なじみが困っているとなれば、放ってはおけない

ヒカルには、幼い頃に誓った
自分との約束があるから






「ありがと、ヒカル。ここでいいよ」






忙しいのに、うちまでは悪いと
あかりの家まで5分たらずの場所で
あかりは言った




「大丈夫か?」


いつも肝心なことは言わないから
つらくても笑っているから



あかりは不思議そうな顔をして



「何が?」
「何って…」
「何かヒカル、今日ヘンだよ?
突然迎えに来たり、何か心配なことでもあるの?」




人の気も知らないでと
少しカチンとくるが、あかりは迷惑をかけたくなくて、
言わないのをわかっているから


話してくれたらちゃんと守れる
それはヒカルが何よりも願っていること

ヒカルの幼い頃の誓いは、あかりを守ることだから

それは今も変わらない
自分だけの約束





「何でもね。
気をつけて帰れよ」
「うん!ありがとね」






そう言って、あかりは走って行った
ヒカルはその後ろ姿を見送り、自分もうちへと向かった


だけど、どうにも嫌な予感
もやもやした落ち着かない雰囲気にのまれ
あかりの後を追った


あかりの家の近くまで行くと
影が二つ見えて






(あかり?)






急いでいた足をゆるめて
ヒカルは息を殺した


何やら言い争っているような



「それは、この前お断りしたはずです」
「納得いかないよ」



噂はやはり本当だったようで


ヒカルはしばらく様子を見ていた
あかりの声が聞こえるまでは



嫌がってあかりを無視して、迫る男に


「やめてください!やだ!ヒカル!!」


あかりは思わず、ヒカルの名前を呼んだ







声が聞こえた瞬間
ヒカルは飛び出していた
身体が動く
紛れもなく自分を呼んだから
求めたから









あかりの肩に乗せようとしている男の腕をはらう









「何してんだよ」
「ヒカル…!」





あかりは目を疑う
ただ驚くばかり
今目の前にいて
先程別れたばかりの
思わず名前を呼んでしまった幼なじみがそこにいたから







「邪魔すんなよ!」

振りはらわれた男はヒカルに殴りかかろうした







「やめてください!」

あかりの声が響く
二人ともが動きをとめた

「やめてください…!」



もう一度、力強く








男はこぶしを引っ込め


「男がいるなら、最初から言えよ!」

あかりを一瞥する





「男なんかじゃないです…」





あかりはうつむき
悔しそうに
だって、願いはそうだから




あかりを困らせている男に、少なからずの苛立ちを覚え
ヒカルもこぶしに力を入れる




「そうだ」

「付き合ってる」
と言えたら




言ってしまったら
あかりは困るだろうか

だけど、自分の気持ちに嘘は付きたくない

あかりを好きなことは
気持ちのうえで、自分なりに認めている
今以上の関係を望んでいるのも確か



試行錯誤を繰り返しヒカルは口を開いた












「そうだよ!あかりは俺と付き合ってんだ!手出すな!」


はっきりと
口で言い放つのは、すべてにおいて、認める証拠





「ヒカル!?」


あかりはとまどう


なぜそんな嘘をつくのかと
危ない目にあうかもしれないのに
ヒカルは何も関係ないのに

それでもなお
自分を助けてくれるヒカルに





「一発殴らせろ」







勝手にいいよってきたのはそっちなのに


「それで気がすむのなら」
「ヒカル!」



あかりの制止を聞かずに、ヒカルはあかりを後へと追いやり
男は無言で近づき、ヒカルの頬を殴った




あかりは手のひらで目を覆いかくしたが、音だけはふさぐことができずに
バランスを崩したヒカルを支えた




「すっきりしたぜ」


冷たい笑みを浮かべて
舌打ちしながらその場から消えた











「何で?どうしてこんなこと」


あかりは泣きながらヒカルを責めた
巻き込むつもりはなかったのに
せめるつもりもないのに
言葉と涙がせきをきって出る
自分のせいで



ほんとはお礼が言いたくて
だけど、ヒカルが傷ついてしまう
素直に言えない







「どうしてそこまでして助けたのよ」
「じゃあ何か!?
お前はあいつに何かされてもよかったのかよ!」
「そんなこと言ってない!」
「言ってるよ!」







いつもと違うヒカルの声に、
あかりは一瞬、身体を強張らせ
怒っているのはわかる
ここはおれるべきなのかもしれない

だけど


「言ってない!あたしは…あたしのせいで
ヒカルが傷つくのがイヤなの!」




「それに
、ヒカルにここまでしてもらう理由ないよ・・・」



とめどなく流れる涙を拭きながら
あかりは言った









あかりの言葉は、ヒカルの胸に響いた

幼なじみには、ここまでする権利はないと
この肩書きがそれを許してくれないのなら
そんなものいらない




「だったら、どんな関係なら、あかりは納得するんだよ」



抱えていた
ずっと言いたくて言えなかった想い



「彼氏ならいいのかよ!」





伝えたくて
困らせたくなくて
大切で
爆発しそうな気持ちを、いつも隠してきた

幼なじみだからそばにいられる
守っていける
そう思ってた




あかりを責めても仕方ない
この気持ちがあかりにとって迷惑なものなら
忘れよう
そう思った




「…ごめん。怒鳴ったりして」


折れたのはヒカル

助けたのは自分の勝手
その勝手で、あかりを泣かせて心配させては、意味をなさない

笑っていて欲しいから
そう思ったのに








「でも、何で言ってくれなかったんだよ?」

今度は優しく


「ごめん」
「ここじゃ何だから、とりあえず帰ろう」




座り込んでいるあかりを立たせて
手を引く


何も話さないまま
時間だけが過ぎて










「あの人ね、高校の先輩なの」


歩き続けて5分
あかりは話出した

ヒカルを傷つけてしまったけれど
来てくれて嬉しかった気持ちの方が大きいから


「2ヶ月くらい前に、付き合ってくれって言われて。
好きな人がいるからって断ったの」
「好きな人って?」
「秘密」
「…」
「そしたら、しつこくなってきて…友達には相談したんだけど…」







あかりはもう一度
「ごめんね」
とつぶやいた


ヒカルはあかりの前を歩いて
背中を向けたまま、ため息を吐いた






「いいか、あかり」
「?」
「今度困ったことがあったら、1番最初に俺に言え」
「何で?」
「何でも!」






ヒカルは一方的に会話を終わらせる
はっきりと「守る」と言うのは、何だか照れくさくて



「あかり」



後を歩くあかりに
聞きたくて





「俺が守るっていったら、迷惑?」


なんて唐突な質問
あかりは目をぱちくりさせて



しばらく考えて笑った




「ううん」

と首を振る



忘れようと思った
そっと自分だけの誓いにしようと

だけど、いいと言ってくれたら
この手で
話してくれたらその時は
ちゃんと守るから


幼い頃に、泣いているあかりを見て
自分自身に約束した
自分がそばにいて、あかりを守るんだと
それは今も変わらない、自分への誓い


「ねぇ、ヒカル?」

あかりが突然立ち止まる


「何?」

ヒカルは振り向いて




「何であの時、あんなこと言ったの?」
「あんなこと?」
「あたしと付き合ってるって…」






あかりの顔が赤くなるのを見て
自分が言ったことの重大さを思い出す





「…なりゆき?」

ほんとは違うけど
ごまかして





「ひどい…」

あかりは膨れて








だけど
幼なじみでも、ちゃんとそばにいて守ってくれるから
あの時の言葉に、少し期待した自分もあったけど

守ってくれる
その優しい幼なじみに甘えたい
このままでも



「一つだけ約束してくれる?」


あかりの家の前


ヒカルの手を放さぬまま
一つだけ約束を






「今日みたいな無理、もう絶対にしないで」







見たくない
傷つく姿は


「わかった」

ちゃんと約束を

「約束ね」







幼い頃、自分に誓った約束

今度は君に

大切な人を守れるのは自分だけでありたいなんて
なんて勝手なわがまま
だけど
そのわがままを通しても守りたいから



泣かせるような守り方はしない
だから、もっと頼って
すべてが守れるように
誓うよ
君に









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『光の庭』の藤原直己さまに捧げます。
ああ、なんて恐れ多い・・・っ!
元ネタは、何を隠そう、なおさんの絵です。
なおさんのサイトでは、ただ今あかりちゃんの生誕祭をやっておりまして。
姫も毎日通ってるのですが。
お題を消化されるのですが、その2つめが「初恋」という。
ちびひかりだったのですよv
すごく可愛くて。絵を見た瞬間、ネタを思いつきました。
姫の脳内妄想により出来上がったものなので(滝汗)
なおさん、こんなのでよろしければ、お納め下さいませ(ぺこり
無理なお願いを聞いて下さってありがとうございましたvv

それにしても、進藤さん別人ですね、毎度のことながら。
少女漫画万歳!(笑
ヒカル王子!!(は
壊れ気味です。


なおさんのひかりは素敵ですv
すでに、他の絵でももう一つネタを思いついていたりする
なんとも図々しい姫だったり。
なおさんの素敵サイト『光の庭』さんはこちらからv
           ↓
光の庭。





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