風邪なんて辛くない
熱だってえらくない
あなたに会えないことが、一番辛い





38C゜





「寒い…」
ヒカルと雪合戦をして遊んだ次の日の朝
あかりの目覚めは
目まいと寒気をともなったものだった

あのあとすぐに帰らなかった
自業自得といえばそのとおりなのだけど

とりあえずぼーっとする頭で体を起こすと
血が上ったかのように
一瞬目の前が真っ白になった


(やばいかも…)
本気でそう思った瞬間

下から母の声が聞こえた


「あかりー!いつまで寝てるの?」



起きたくても起きられない
それは本人にしかわからないこと

あかりはふらふらする頭で、ベッドから起き上がった


もたれかかりながら部屋を出て
階段を降りる

それだけで、気分が悪くなる


「おはよ…」
降りてきたあかりの様子のおかしさに、母が近寄る


「気分でも悪いの?」
「寒気がして、頭がふらふらする…」


あかりの元気のない声に
母は額へと手をやり


「寝なさい」

にこりと笑ってただ一言

「学校は?」


あかりの頬はりんごのように赤く染まり
誰が見ても、熱があるのは一目瞭然
それなのに学校を気にする娘に溜め息を吐きつつ


「今日はお休みよ」

優しく言いながらあかりを
部屋へと戻した

あかりは、ふらふらする頭でまた
自分の部屋へと戻り
ベッドに横になった
起きている時よりもずっと楽で

熱のせいでぼーっとする頭で

(ヒカルにばれたら怒られるかなぁ)

と、昨日のことを思い出していた

雪合戦をした公園で
ヒカルに早く帰れと言われても帰りたくなくて
しばらくその場にいたこと
冷たい雪に身体をうずめていたこと


雪の冷たさと
ヒカルの温かい手を思い出すと
少しづつ身体がぽかぽかしてきて


あかりは知らず
眠りについていた



どれくらい眠っていたのだろう
あかりはふと目をさます
外はまだ明るいから
そんなには眠っていないだろう

いつの間に用意してくれたのか
頭の下には氷枕と、額には冷たく冷やされたタオルがおいてあった

ひんやりとした冷たさが気持ちいい
熱がある証拠


(のど乾いたかも…)

あかりは、熱で水分のなくなった喉を潤そうと
まだ少しふらつく頭で
ベッドから起き上がった
だるさはあるが
朝のようなめまいはもうなく

下へと降りて行った


「お母さん?」

リビングへ入ると、電気は消えていて
母を呼んでみたが、返事はない

買物にでもでかけているのだろう


冷蔵庫を開けるが、何もなく

(水でいいや)

と水道の蛇口をひねった


「熱い…」

あかりは呟き
ベッドへはすぐ戻らず、ソファに横になった

少し涼しい

しばらくここで寝ていようかと思った時
インターホンがなった

あかりはゆっくりと玄関へ向かい
その扉を開けた

そこにいたのは母ではなく


「ヒカル…」


幼なじみだった

ヒカルはあかりを見て
「お前、何起きてんだよ!」


慌ててあかりをうちの中へと押しやる


ご丁寧に鍵をかけて
「ヒカル、どうしたの?」

あかりはヒカルに尋ねた
ヒカルは何か言いたそうだったが何も言わず、
でこピンひとつ

「痛っ」
「…」
「…何?」
「寝ろ」
「え?」



恐らくここまでなら
二人が交わした会話の中で、一番短いだろう


「でも、せっかくヒカルが来てくれたのに…」

そう言いながら、あかりはヒカルを見た
ヒカルは何も言わない
ただ何となく機嫌が悪そうで


「熱、あるんだろ?」

その顔とは裏腹に、声はどこか切なさを感じさせて

あかりを黙らせる



「寝るぞ」

そう言ってヒカルは
あかりを抱き抱えた
「えっちょっとヒカル!?」

あかりは慌てるが、ヒカルに軽々と抱えられ
あまり動くこともできない


「えらいんだろ?部屋まで運んでやるよ」
「何言ってんの!?いいよ!いいからおろして?」
「遠慮するなって」
「あたし別にえらくないし」
「何言ってんだよ!あんましゃべれないくらいに、具合悪いくせに」

ヒカルはどうやら勘違いをしているようで
あかりが黙ったのは、気分がよくないせいだと

(違うのに〜…)

あかりは心の中で悲鳴をあげる
以外にも力強いヒカルの腕に
熱とは違う目まいを起こす


降りたいけど、もう少しこのままでいたいような
ヒカルがそこまで自分を心配してくれることに、恥ずかしくて
嬉しくて

「甘えちゃうよ?」
そう言いながら、身体を預けた


おとなしくなったあかりに

「最初からそうしときゃいいのに」

と笑いながら、ヒカルは部屋へと足を進めた



部屋の扉を開け、そのまま部屋へと足を踏み入れ
そっとベッドへあかりを下ろす


「ごめんね、重かったでしょ?」
「うん」
「!!
だったら早く下ろせばよかったのに!」
「嘘だよ」

あかりの反応がおもしろくて、ヒカルは笑った

変わらないな


と思う
何でも真に受けて、疑うことをしらない
何かをすると、必ずそれに反応を返す
喜怒哀楽の激しい幼なじみ
小さい頃はよく、
からかって遊んだものだ


「おばさんは?」
「多分、お買い物」

あかりは答えながらベッドに横になる

ヒカルは布団を支え
そっとかけてやる

「ありがとう」

素直にお礼が言えるのは、あかりのいいところ


「じゃあ、そんなに遅くはならないよな」

普通なら女の部屋に入れば、何かしら緊張するもの

それがないのは、昔から知ってる部屋だから

ただ、弱っているあかりを前に、
何も感じないヒカルでもなくて
さっきは勢いであかりを抱き抱えてしまったが、
今落ち着いてみると恥ずかしくなってきて


「ヒカル?」


名前を呼ばれて振り返る
熱のせいだろう
唇はほのかに赤く、頬もピンク色
ヒカルを落ち着かせなくするには充分な要素

ヒカルはつばを飲み込む





「どうしたの?」

掛け布団を頭の近くまでかぶり、あかりはヒカルに呼びかけた
さっきまで、普通だったヒカルの頬は、何気に赤い



「ヒカルも風邪ひいた?」

あかりが起き上がろうとする
ヒカルは慌ててあかりの近くに寄り

「何でもないから、寝てろって!」

細いあかりの方に手をかけ、再び寝かしつけた


(うわ・・・細い・・・)

改めて思う
折れてしまいそうなその肩に、
どのくらい力をいれればいいのかわからない
壊れ物を触るように優しく





「風邪、移っちゃうよ?」

あかりが心配そうにヒカルを見る


「人の心配する前に、風邪治すこと考えろよ」

ヒカルはため息を吐きつつ言った

あかりは、再び掛け布団を頭の近くまでかぶり
すまなさそうに頬を赤くする


「でも、ヒカル
何で今日うちに?」


風邪を引いたことを、ヒカルが知っているはずがないと
あかりはたずねた


「ああ。お前んちのおばさんが、うちの前で母さんと話しててさ
あかりが風邪引いたって言うから」
「言うから?」
「お見舞いに来た」
「お母さん達、外で話するの好きだもんね」




顔を見合わせて笑った
ヒカルは多分、そのまま来たのだろう
かばんは、いつも手合い時に持っていくかばん




「それより!」
「?」
「あかりー?
昨日、早く帰れって言ったのに、お前帰らなかっただろ?」
「えっ?」
「嘘ついてもダメだぞ。俺にはわかる」


自信満々なヒカルに
(何がわかるんだろ?)
と内心つっこみを入れながら




「わかったって言ったのに」
「ご、ごめん」
「何で帰らなかったんだよ?」
「それは・・・」


もう少し、ヒカルとの懐かしい時間を残しておきたくて



「あの後ね、帰り道にちょうど友達と会って・・・」
「・・・」


あかりは言い訳する
ヒカルは黙ってあかりの目を真っ直ぐに見る
あかりの言葉は少しずつ消えていって


「ごめんなさい」

正直に謝った


ヒカルは
「よし」
と頷きながら納得し
「別に怒ってるわけじゃないから」
そう言って笑った

その屈託のない笑顔にあかりは少しほっとして
昨日を思い出したら、何だか楽しくなってきて





「ねぇ、また遊んでくれる?」

甘えた声でお願いしてみる

「遊ぶって歳じゃないだろ?」
ヒカルが頬をつねった
「いひゃい」
あかりの顔を見て、ヒカルが笑う
笑われたあかりはふくれっつら

でも、そんな時間が楽しくて
あかりは心の中で笑った



「風邪が治ったら遊んでやるよ」
ヒカルがぽつりと
聞こえないほど小さな声で
「ほんと?」
あかりにはちゃんと届いていて

「約束」
小指を差し出す
「子供じゃないんだから」
ヒカルはそう苦笑しながらも、小指を差し出した
「約束ね」

あかりは笑った
ふと目の前が陰って
あかりの額に、温かい感触が走る
ヒカルはあかりの額にキスをした
軽く触れるだけの



「え?」



あかりは理解できず
ヒカルの顔は赤くて





「早く寝ろよ」


そう言って、ヒカルは部屋を出て行った

あかりは一人、掛け布団をかぶり
赤くなっていた




「早く治さなきゃ」
そう小さくつぶやいて
ヒカルの唇が触れた額を指でなぞった




早く治して、また一緒に時間を過ごそう
二人の距離は、前よりもきっと近くなっているから
もうすぐ、違う二人になれる予感








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中途半端に終わっとけー(笑 「雪の華」の続編っぽいものです。
ほんとは、このお話を先に考えてたんです。
雪の華は突発的に出来上がったものでした。

雪の華を読んでいただけると、なぜあかりちゃんが風邪を引いたのかわかるかと。
気になる方は、そちらを先にご覧になって下さいませー(ぺこり

何だからぶらぶですね(笑
ちなみにまだ、付き合ってないです。
ひかりって、片想いと両想いの違いが難しいんですよね(><)
ただでさえらぶらぶなのでv
いいなぁvらぶらぶは描いてて楽しいですーv
もっともっとらぶらぶさせたいですーvv
鈍いコを好きになった進藤さん。
これからも苦労することになりますが、
それも試練です。
もっともっとあかりちゃんを愛してあげてねv(笑



最後まで読んでくださった方、どうもありがとうございましたvv










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