誰にも見せたくない
見せるつもりもない
あの日の写真はあたしのもの














秘密のお守り














高校生になった


まだまだなれないことも多いのだけど
それなりに楽しい

囲碁部だって、ないから作った。

部としては認められてないけど、活動はしてる



正直、つらいときもあるけど
あたしには何にも変えられない、勇気のお守りがある








それは








卒業式のヒカルとの写真








誰かが意図的に撮ったのかな
頼まれてもいないのに、それは紛れ込んでた





恥ずかしい気持ちもあるけど、その写真は何よりもあたしに勇気と元気をくれる
いつも定期入れに入ってる お守り













写真を見れば、ヒカルを思い出して頑張れる
めげそうになったって、明日になれば笑える
単純かもしれないけど、それがあたしだ






















「ヒカル、今日も一日よろしくね」



いつも写真に向かって一言
あたしの日課

あたしの一日は、写真に挨拶をして始まる
今日も勇気をくれますように










この写真は誰にも見せない
もちろんヒカルにも

黙って持っていられるなんて、ヒカルは気持ち悪いかもしれないけど、
やっぱりあたしだけのお守りにしたいから




それにヒカルはいらないだろうし




















「見て見て!あたしの彼氏」




高校ともなると、やっぱり彼氏さんがいるのは当たり前
のような会話が繰り広げられる






「えー!かっこいー!」


なんて、口では言ってても
本心はどうなんだか

あたしだってそう言いながら




「ヒカルの方がかっこいい」


って思ってしまうから





って、別にヒカルはあたしの彼氏ではないんだけど
















「あかりって、もてるのに彼氏いないよね?」




突然話題は、あたしにくる















「可愛い?誰が?」
「あかりが!」
「あたしが?冗談ー」
「冗談って…あかりにぶそうだもんね。
仕方ナイか」
「にぶいって何よー?」
「言葉のままよ。もてるのに気付かない罪な女」
「何それ?だいたいあたし、もてないよ?」
「自覚がないのはある意味怖いわ。
あかりはそのままでいてね」
「それってバカにしてる」
「違うわよ!あかりらしいってこと」
「あたしらしい?」
「そ。でもほんと。あたしの元中の人も
あかりのこと狙ってるって聞いたし。
好きな人いるなら、さっさと告った方が、
うるさいの消えていいかもよ?」
「うまくいくとは限らないじゃない」
「あかりなら確実よ」
「そうかなぁ」
「そうよ!って。
何?あかり!好きな人いるの?」
「えっ///」
「その顔はいるのね!?」
「誰なの!?」








もう
みんなしてこういう話題が好きなんだから
人の恋愛話はは確かに楽しいけど
自分にくるとかなり困る








「ちっ違…っ!あたし別に、好きな人なんて!」
「あかりはすぐ顔にでるからわかるのよ!
言わないとこしょぐりの刑が待ってるわよ?」
「何よそれ!ヤダ!ちょっとまって!
ほんとにあたし、好きな人なんていないって!」
「ほーぅ。覚悟はいいかな?あかりちゃん?」
「えっ…!
きゃああああぁぁっ」










みんなひどいよ
強制だなんて
そう簡単には吐かないんだからぁー!

























「それでね、みんなしてあたしを問い詰めるのよ」
「あかりって確かにわかりやすいもんね」
「そうかな?っていうか、フォローなし?」
「あたしは中学から付き合いだけど、
あかり見てたらすぐわかったよ?」
「何が?」
「あかりが進藤くんのこと好きって」
「嘘ー!」
「ほんと」










久美子はくすくすと笑う



久美子は、中学で知り合って、今ではあたしの親友
一番の理解者

ヒカルのことが好きだって打ち明けたのは、久美子が初めて
ずっと応援してくれてる
















「でも冗談じゃなくて、あかりの態度みて気付かないのは、
進藤くんぐらいだと思うよ」
「ヒカルは、碁がコイビトだもん」
「あかりのにぶさも、進藤くんに負けてないけどね」
「え?何?」



どういうこと?





「なんでもない」











あたしは久美子の言っている言葉の意味が分からず
首をかしげた






















「あ、ねぇ
あれ進藤くんじゃない?」




久美子が指差す先にはヒカルが









「行ってきたら?
あたしは先に帰るよ」
「でも」
「いいからいいから、ほら!」









久美子に後押しされ、あたしはヒカルへと足を進めた





















「ヒカル?」



後ろから話しかけると




「あかり!」



ヒカルの声が耳に響く



でもいるのはヒカルだけじゃない










「学校帰り?」
「あ、うん。」



誰だろう
プロの人かな







「進藤?
っと。誰?」
「あかり、俺の幼なじみ」
「彼女が例の?
へぇー可愛いじゃん!」





例のって?









「余計なこと言わなくていいよ、和谷!」
「ごめんごめん、
初めまして、和谷義高です。
進藤と同期です」




挨拶されて


「あのっ藤崎あかりといいます!
ヒカルがいつも、お世話になってます」







あわてて挨拶を返した









「ほんと進藤のヤツ、世話がやけるよ」
「和谷!!」







そうやってケンカしてるのを見てたら
兄弟みたいに見えた
ヒカルは一人っ子だから
なんか少し楽しそう















「あかり、お前も何言ってんだよ!」
「何って、ヒカルの幼なじみ兼保護者として・・・」
「お前がいつ俺の親になったよ!?」
「何?その態度!
小さい時は良く、面倒見てあげたじゃない!」
「あかりに面倒見られた覚えはねぇよ!
見た覚えはあるけどな!」
「あたしがいつ、ヒカルに面倒みてもらったのよ!」






久しぶりに会えたのに、ケンカしちゃった
もっと楽しい話でもできたらいいんだけど
先にケンカを売ってきたのはヒカルだし














「お二人さん、痴話げんかは別のとこでやってもらえます?」




和谷さんに言われて、あたしはたちは現実に戻る




「痴話げんかなんかしてないって!」
「ケンカするほど仲がいいって言うしなー」
「何が言いたい?」
「いや、あかりちゃんに保護者になられて一番困るのは
他でもない進藤だなーって。」












さっきから和谷さん
良くわからないこと言ってる













「余計なこと言うな!
あかりも聞こうとするな!」









ヒカルにそう言われて
あたしは聞くタイミングを逃してしまった
聞くなって言われると、余計気になるんだけど。










「んじゃ、俺先に帰るよ
あとは二人で楽しんでねー」







和谷さんが帰ろうとする







「じゃあね、あかりちゃん」
「あっはい!
気をつけて」






和谷さんの後姿を、ヒカルと一緒に見送った

















その後







「いいの?一緒に帰る予定だったんじゃ?」
「ああ、どうせもう用事終わったんだし、いいよ
それより帰ろうぜ」










思いもよらぬ、予想もしてなかった
すごくいい出来事
ヒカルと一緒に帰るなんて、どれだけぶりだろう
そう思うだけで、何かドキドキしてしまった





ヒカルは、和谷さんがいないのに
さっきのことをなにやらぶつぶつと文句を言いながら
それでもあたしの隣を歩いてくれる






せっかく会えたんだし
あたしの学校の話も聞いてもらいたいと思って







別にヒカルにはどうでもいいことかもなんだけど
あたしは今日あった出来事をヒカルに話した
好きな人を聞かれたことを





















「それでね、みんなったら
意地でもあたしの好きな人を聞き出そうとするんだよ?
無理やりだよ?ひどいよね」




言わなかったけど






「お前、好きな人いるの?」










ヒカルがあたしの話に
真剣な声で聞き返してきた
以外・・・





「えっ?そういうわけじゃないけど」






あたしの返事に
ヒカルは



「そっか」



と笑った
その後










「好きな人できたら、いえよ?」
「何で?」
「幼なじみだろ?あかりが変なヤツに引っかかったりしないか、
俺が見極めてやる」
「何それー」









ヒカルの一言が
嬉しくて
でも寂しくて
複雑な思いがめぐる











『あたしが好きなのはヒカルだよ』









言いたいけどいえない
今はまだ、幼なじみでいい
今の関係を壊したくない
このままでいたい
恋愛は怖い
二人の距離を壊してしまうから






「ヒカルも好きな人できたら・・・教えてね」





寂しいけど、きっとヒカルが好きになる子ならいい子だと思うから
あたし、応援するよ。
それは心から思うこと





そんなあたしに、ヒカルは










「好きな人ねぇ・・・できねぇかもな。」






よく分からない返事が返ってきた
あたしはまだ、その意味がわからなくて
さっき気になったことを思い出し
ヒカルに聞いてみる













「ねぇヒカル?」
「んー?」
「さっき和谷さんが、あたしのこと
『例の』って言ってたけど、何で?」






あたしの問いにヒカルは何故か
少し慌てて

「なんでもね」


とだけ答えた






そのあと


「聞くなって言ったろ?」




と、あたしの頭をこづく






何か漠然としないけど、
ヒカルがそういうなら仕方ない










楽しい時間が過ぎるのはあっという間












「送ってくれてありがとう」
「おお。通り道だし気にすんな」
「お休み。」
「ああ、お休み」











ヒカルにお休みの挨拶をして、
あたしは家の中へと入った






「何だ。これ?」









あたしはまだ、落し物に気づいていなかった
それをヒカルが拾ったことも



















「嘘、やだ!
写真がない!」






翌朝、ヒカルに挨拶をしようと思ってかばんを見たら
写真がない


電車に乗るとき、写真が落ちそうになって
落としたらいけないと思って、定期から出して
かばんにしまって













いくら探しても見つからなくて
仕方ないからそのまま学校へと向かった



どこかで落としたのかな?
でもどこで?
分からない・・・





授業なんて全然耳に入らなくて
気づいたら放課後になってた

















「久美子。
あたし今日、部活休むね」








久美子にこれだけメールを入れて、
あたしは帰路へついた
ゆっくりと写真を探しながら







いつもの帰り道を
下を向きながら歩く
人にぶつかろうが関係ナシに
だってあたしの大切なお守り

もし誰かに拾われてたら・・・
不安ばかりが頭の中を巡る



どうしよう







どん





と思いきりぶつかり
これはさすがにまずいだろうと思って

顔を上げた瞬間
そこにいたのは








「あかり?お前何してんの」













ヒカル







昨日に引き続き、今日も会えるなんて



「何か探し物?」





ヒカルに問いかけられ


「うん、大事なお守りをね・・・」



と言いかけて、言葉をきった









だってあたしが探してるのは
ヒカルとの写真












「あ、ううん。
何でもないよ」










あたしの態度を不審に思ったのか
ヒカルは真剣な顔になる







「何か探してたんだろ?
一緒に探してやるよ」











困ったときには嬉しいことだけど
正直、ヒカルに関係あるものだと、逆に困ってしまう
だってヒカルに知られたら・・・
何か軽蔑されそうで
怖い













「いいよ、なくてもそんなに困るものじゃないから!」









そんなの嘘
だってあたしには、何にも変える事のできない
大切なお守り

ヒカルとのカタチに残った
たった一つの卒業式の想い出


3年分の想いを重ねたあたしの宝物






それをなくしてしまうなんて
あたしって、なんてバカなんだろう












気づいたらあたしの頬を涙が伝ってた
人ごみにも関わらず、あたしは泣いてた




「泣くほど大事なものなんだろ?」



ヒカルがおろおろとして
人目を気にしながらも、あたしのことを気にかけてくれた












「とりあえず、場所移動しよう」








止まることのない涙をそのままに
あたしはヒカルに手を引かれ、違う場所へと歩いた





大きくなったけど
変わらずに優しいヒカルの手に、もっと涙はあふれてきて
涙と一緒に、想いまで爆発してしまいそう






ここで言ってしまったら、10年分の関係と引き換えに
3年分の想いを叶えることができるのかな






でも言いたくない
壊したくない気持ちが、何よりも勝るから

あたしの気持ちを知ったら、ヒカルはきっと
今までどおりにはしてくれない




「レンアイ」ってきっと、そういうもの

























公園のベンチにあたしを座らせ
ヒカルは飲み物を買ってきてくれた







「少しは落ち着いたか?」





ヒカルから手渡された缶ジュースを手に
あたしはこくりと頷いた





「そんなに大事なもの落としたのか?」






ヒカルに質問され、あたしは答えに困った






恐る恐る口を開く















「お守り、落としたの・・・」
「お守り?」
「うん、とっても大事な
あたしにとって、勇気のお守りなの
それがあったから、あたし
今まで頑張ってこれたの」




そういいながら、また涙があふれてきた




見つからなかったらどうしよう
あの日の二人のカタチを、思い出だけにしておくのは寂しすぎる
そのときの想い出として、どうしてもカタチに残しておきたかった




あたしは自分で言うことができなかった
二人の想い出を

















「あのさ、ちなみにそれってどんなお守り?」




ヒカルが頭を掻きながら聞いた



「あのね」

怖い









「写真なの、たった一枚の想い出」








ここまで言うのがやっと
これ以上言ったら、あたしきっと
もっと涙が止まらなくなる

こんなにボロボロ泣いて、すごくみっともない



こんなに泣いたの、何年ぶりだろう












泣きじゃくるあたしの前に
一枚の写真が差し出された


















「え?」




それは、あたしが探していた
想い出




何で?






「どうしてヒカルが持ってるの?」








とめどなく流れていた涙は止まって
あたしは真っ赤な目でヒカルを見る












ヒカルは頭を掻きながら


「お前、昨日落とした」





よりによってヒカルの前で




急に恥かしくなって、あたしは下を向いた





「お前が探してたのって、ひょっとして・・・これ?」








ヒカルの問いに、あたしは真っ赤になってうつむいたまま
黙って頷いた


言い訳できないよ
もう




気になってヒカルを見ると
何かすこし機嫌が悪くて










「何でお前だけ持ってるんだよ」



ぽつりと一言







何でって
ヒカルには必要ないものでしょ?












「俺も、お守りほしいんだけど!」





あたしは驚いて、
目を見開いてヒカルを見た





お守りほしいって
この写真でいいの?
あたしとの想い出を、お守りとして持ってくれるのかな?









「じゃあ、焼き増しして送るね」

あたしがそう言うと、







「送るような距離じゃないだろ
渡しに来いよ!」





会いに行く口実ができちゃうよ











「わかった」





近いうちに必ず渡しにいくね

その時は、あたしだけのお守りじゃなくて
二人と想い出と、お守りになる













************************************************************************************

このネタ思いついたの、どれくらい前だっけ?
と思ってしまうほど、前のネタです。
1ヶ月くらい前に描きかけたかもしれないようなネタです。
卒業式で金子さんが撮った写真で、どうしてもひかりが描きたくて出来上がったお話でございます。
最後は、二人のお守りになりました。
進藤さんも、会うきっかけが欲しかったのかもしれません。

今回も、和谷さんがいいキャラしてますね(笑
痴話げんかーv
きっとふたりは、付き合ってもケンカばっかりしてるかもですねー
いいんです、それも愛だからv


ちょっと長い上に、またもお砂糖入りですが、
最後まで読んでくださった方、どうもありがとうござましたv









SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送