気分が悪いわけじゃないの
風邪を引いたわけでもない

ただ
眩暈がするの


あなたのそばで
















微熱37C゜〜眩暈〜

















「えーっと…買い忘れたものはないよね?」



あたしはデパートにいた
明日はおやすみだから、ヒカルにご飯を作ってあげるために




せっかくだから、ヒカルの好きなものを作ってあげようと思ったからだ






ちなみに今日は
ヒカルのマンションにお泊まりだったりする








久しぶりに、二人そろっての休み
電話やメールは毎日くれる
寂しいけど、寂しくない
自分に言い聞かせてた


でもヒカルは言ってくれた



「毎日だってあかりに会いたい」




だから、あたしは寂しくない

ヒカルも同じ気持ちだってわかったから
同じ気持ちでいてくれるって思うだけで
何だか嬉しくなるの




ヒカルに会いたくて
喜ぶ顔が見たくて
その笑顔に幸せを感じるから
あたしはヒカルのそばにいる

















春とはいえ食品売り場は少し冷える

「はくしゅっ」

くしゃみが出てしまった
薄着なのもあるんだろうけど。

風邪を引いちゃ、せっかくのヒカルに会うチャンスも減ってしまうから



あたしは、早々と買物を済ませ、デパートをあとにした

















そのデパートからヒカルのマンションまで、歩いて5分
その道程は、会いたい時にはものすごく長い
それにしても、20歳でマンション暮らしって…
普通に考えるとありえない



ヒカルは15歳で、社会人デビューをしたんだから、
不思議ではないのかもしれないけど。




それはもう、4年も前のこと
いきなり碁を初めて3年も経たないうちに、プロになった。
若干20歳にしてトップ棋士の仲間入りを果たしてる
稼ぎも相当なもので。







マンションで一人暮らし
と言っても
あたしにご飯を作らせたりしてるから、
厳密に言えば一人暮らしとは言えないのかも







それに
もうすぐそこは、あたしの家にもなるんだ
一年も先だけど。


卒業したら、一緒に住もうって。
それは2年も前からの約束












ヒカルは今日は研究会で
たぶんうちに行ってもまだ帰ってない

ヒカルがいないのはわかってるけど
それでも急いでしまうのは
ヒカルがいる
その空間が好きだから






















5分かけて、あたしはマンションへとたどり着いた
もらった合鍵で部屋へ入ると
だれもいないと思ってたのに
人の気配がする




用心深く、しばらくじっとしてると
向こうから足音が聞こえて





いた




この部屋の主が














「あかり!」






あたしが来ると、いつも必要以上に喜んでくれる
その素直さが可愛くて



「早かったな、上がれよ」




そう言われて、あたしは部屋の中へと足を踏み入れた


あたたかい空間がそこにある







でも何で?
今日は研究会のはずじゃ
















「ヒカル、どうしてうちにいるの?
今日は研究会だって言ってたから、いないと思ってた」






リビングで、二人分の紅茶をいれながら
ヒカルに質問してみる



「何だよ、いちゃいけないのかよ」






返ってきたのは
少し不機嫌な声










その声にあたしは慌てて






「違うよ!ヒカルがいてくれたのは嬉しいよ?
ただいないって言ってのにいたから、びっくりしただけ…」





そう言いながら
コーヒーを持ってヒカルの隣にいく




あたしの慌てた声にヒカルは


「ははっ嘘だよ。」



ケタケタ笑う






すぐそうやってからかうんだから
わかってるくせに




今度はあたしの番








「何よ、それ!」


そう言って
少し怒ってみせる






「ごめんって」











本当に反省してるのか
謝罪の言葉と
額に軽いキスを一つ

ヒカルは謝るとき
必ずあたしのどこかにキスをのせる




それだけで許してしまうあたしは
自分でも
「甘いなぁ」って思う

もちろん、ヒカルに対して本気で怒ることは滅多にないんだけど
どんなに怒っていても
ヒカルのそのキスで
何もかも許せてしまえそうな自分が
少し情けないような気もする




でも好きだから許しちゃうってこともあるよね


逆に、好きだから、本気で怒りたくなる日も
いずれあたしにくるのかな


その時あたしはどうするんだろう










なんて
その時を迎えてみないと、
皆目、見当もつかない







あたしはいつのまにかトリップしてて
ヒカルの声によって戻された








「大丈夫かよ?気分でも悪いのか?」






ヒカル
本気で心配してる
そういう優しさがわかっちゃうから
あたしはヒカルに甘いのかも






「大丈夫だよ」





あたしがそう言って笑うと
ヒカルも笑う
よく変わるその表情が
可愛くて好き

ヒカルに「可愛い」って言うと
「俺は男だ」
って言って怒ったあとすねるから
口にだしては言わない

怒ってすねるのが、また可愛いんだけど










「今日はね、ヒカルの好きなもの作るからね!」



あたしはそう言って、ヒカルの前に指を立てる






「期待してます」






またヒカルが笑う




こうしてあたし達の時間は過ぎていく
あたしは夕飯の支度へと取り掛かった
















「あかりー」






野菜を洗うあたしを、ヒカルが甘えた声で包み込む









「そんなにくっついてたら、ご飯作れないよ?」





そう言って、離そうとすると




「いや?」



とさらに甘えた声を出す


いやだったら、もっと本気で抵抗してます
でもこのままじゃ進まないから












「あとでいっぱいしてあげるから、ちょっとおとなしくしててね」



そうやって、ヒカルをなだめる




ヒカルはしぶしぶリビングへと戻っていった




可愛いんだから
あとでしっかり、ご機嫌取らないとね








急に愛しい笑いがこみ上げてきて
早くご飯を作って、ヒカルに抱きつきたくなった





















「お待たせー」



ヒカルを待たせること30分
ご飯が出来上がった

今日は特製ラーメン
ヒカルが好きなものって言ったら
やっぱりこれよね












二人分のコップとお箸を一緒に出す

「いただきます!」


手を合わせて一緒に
















「研究会って、どんなことするの?」




ずっと気になってた

ヒカルがプロになってから、ずっとお世話になってる人

プロになったヒカルは今現在6段
確実に昇段点をあげてる








「どんなって・・・うーん
タイトル戦の手合いとかを並べて
みんなで検討するんだ」
「それだけなの?」
「もちろん、俺より上段のプロもいるから、
打ったりもするよ」
「そうなんだ。」
「簡単に言えば、プロ棋士の集まりかな」
「楽しい?」
「うん、楽しいって言うよりも、勉強になるよ」





ヒカルは目を輝かせる

碁の話をするときのヒカルは、すごく楽しそう
正直、そんな顔をさせる碁に、嫉妬したりもするけど





よかった
今日は元気
ヒカルはこの前の手合い
負けてかなりへこんでた
見られないくらい





励ましもしたけど
あたしの励ましなんか、耳に届かないくらい
落ち込んでた





何の力にもなれないから
せめて話だけは聞いてあげたい
少しでも楽になるように




でもやっぱり、あたしばっかり話しちゃうときもあるのよね





なかなか会えない分
話は弾んで
話したいことがたくさんあるの
全部聞いてくれなくてもいいんだ
疲れてるだろうしね


でもヒカルは、ちゃんと聞いてくれる
そんなヒカルが、あたしは大好き














食べ終わって、片づけをする



「手伝うよ」






ヒカルはいつも手伝ってくれる
こういうとこ、好きなんだよね
いけない、のろけちゃった








水を触ってると、寒気がしてきた
鳥肌が立つ
めまいがして、足元がふらつく



コップを割ってしまった






「あかりっ!?」





ふらついた足元を、ヒカルが支えてくれた










額に手をあてて
「ちょっと熱っぽいかな・・・」



ぽつりと







「片付けとくから、ちょっと休んでろよ」






ヒカルにつられながら、あたしはリビングへと戻った





(悪いなー・・・)


と思いつつも、少しだけ甘えたくて


















「大丈夫か?」


片付けを終わらせたヒカルが、あたしの隣に座って
おでこを当てて熱を測る

それだけで、めまいがおこる
熱のせいで起こるめまいじゃなくて
ヒカルの体温に起きるめまい











「今日、帰るか・・・?」



ヒカルが頭をなでながら聞いた




やだよ
あたし、ヒカルといたいもん
せっかく久しぶりに会ったのに、こんなことになるなんて
あたしって何て情けないんだろう



あたしは、ヒカルの袖を握った

「帰りたくない」っていう、精一杯の意思表示













「でも、つらくないか?」


ヒカルの言葉に、あたしは黙って首を振った



ヒカルは優しい

熱なんてちっともえらくない

あたしは帰るよりも何よりも
ヒカルといられない方が、よっぽどつらい

ヒカルに迷惑かけるのはイヤ

でも、一緒にいたい




せめて、一緒にいられる時間だけは、大切に
















「わかった。帰らなくていいから
今日はもう寝な?」





ヒカルも、一緒にいたいって思ってくれてるよね?





ヒカルはあたしを抱えて、自室へと入る






額をなでる















「気持ちいい」



ひんやりとしたヒカルの手の感触が









「ここにいてやるからさ」






そんなに重病なわけじゃないのに
ヒカルのその優しさが嬉しくて







眩暈がする
あなたの一言に
あなたの体温に
あなたのすべてに眩暈がする

抱きしめられると

名前を呼ばれると

それは一層激しくなって




でもあたたかい
心地よい眩暈なの










「ありがと」




いい夢が見られそう














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コイビトひかりですーv
らぶらぶは描いてて楽しいーvv
今回もお砂糖入りですね。
何か最後は、タイトルから少しずれたような気がしなくもないんですけど(汗
とりあえずひかりがらぶらぶなので、良しとします(は

風邪を引いて起こすめまいと
その人がいることで起こるめまい
どっちが心地よいかなーと(笑
あかりちゃんはこのあと、元気になります!
ちょっと微熱がある程度なので(^^
夏風はこじらすと大変です(><)



最後まで読んでくださった方
どうもありがとうございましたv






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