あなたの言葉は
優しい音色のメロディ















小さな恋のメロディ














『小さい頃から、ずっとあなたが好きでした』










「昨日ね、彼が好きだって言ってくれたんだ」





片思いしてた友達が
ようやく実を結び、両思いになれた
ずっと応援してて








「よかったね。おめでとう」





一緒に泣いた

















正直
友達をうらやましく思ったの





あたしだって、付き合ってる人はいる







ずっと片思いしてて
伝えられて叶った時は、本当に嬉しかった








「好き」

って言葉が、あんなにも綺麗に聞こえたのは
きっと初めて
優しい音色だった










なのに











「いいなぁ」
「何が?」
「好きが響いて」
「はい?」









友達の言うとおり
あたしの言っていることは、ちゃんと聞かなきゃわからないだろうと思う




そう
ヒカルと付き合って随分経つけど

「好き」

とか、気持ちを示す音色を聞いたのは
後にも先にも
あたしが告白したあの時だけ















「好き…」
「俺も、ずっと好きだった」



















あの時を思い出してみる
ふと、ヒカルの言葉がひっかかった






好き…『だった』?
『だった』って過去形だよね?

どういう意味?

あれは、OKサインで
あたしはヒカルと付き合ってて
















「好きだったって、、過去形?」
「は?」
「ヒカル、あたしのこと好きだったって言った!」
「うん、知ってる」
「違うの!そうじゃないの!」











わかってくれない友達に、あたしは言葉を乱す
それを心配したのか





「あかり、どうしたの?」













友達は真剣に話を聞く姿勢になった


















あたしは混乱する頭を落ち着けて、
ちゃんとわかるように説明できるよう
頭の中を整理する









「ヒカル、あたしのこと好きだったって…」
「うん」
「だったって、過去形じゃないの…?」








あたしの言葉に、友達は口をあけて絶句した
思わず、カメラに収めたくなるような顔






「だってだって…!」











あたしは慌てて、なぜそういうことを言ったのか説明しようとした
友達の顔が、だんだんあきれ顔に変わっていったから








「だってね…」
「だってね、じゃないでしょ!
進藤くんがあかりのことを好きだって言うのは、誰が見てもわかるのよ!」
「そんなことないもん…」
「気付いてないのは、本人だけなんて。進藤くんに同情するわ」
「なにそれ」








あたしには同情ナシですか







「でも進藤くんも、自分がわかりやすいって気付いてないし…
いいんじゃない?似たもの同士」







どういう意味ですか?
そんな楽しそうに



















「それだけじゃないの!」







あたしは心当たりを、とにかく友達にわかってほしくて






ヒカルに聞けば、すぐわかると思う
それはわかってる

でも、本人に確かめるのは、一番心と身体を使うもの
あたしにはそんな勇気に耐えられる自信がない











だから




誰でもいいから、過去形を否定してほしい























「『好き』って、言ってくれないの」




あたしの言葉に、今度は白くなった友達






そして
「贅沢な悩みね」
と、一言









正直、長い間片思いして
思い続けて届いた人に相談する悩みじゃないとは思う






だけどこんなこと
同じ立場の人じゃないと、相談できない
うわべだけの答えなんて、ほしくないの


あたしはつくづく
いい友達を持ったなって思う

















「言葉がないと、進藤くんのこと信用できない?」
「そんなことない!むしろ、言わないからヒカルだと思う」











ほんとに
好きだって何回も連呼するヒカルなんて
とても考えられない








「でもね、ほしい時もあるの」







あたしは言った













付き合えるだけでも、あたしには幸せなことなのに
人間って、手に入れるとその次がほしくなるのね
永遠に繰り返される
尽きることのない願い






「今更って思ってるんじゃない?」
「どういうこと?」
「あかりたち、付き合って長いじゃない?今更言うのが恥ずかしいとか」











あたしはよく言うよ
言葉はあたしにとって、愛情表現の一つ









「じゃあ、あかりは」
「うん」
「気持ちがなくても好きだって言われたら嬉しい?」









なんて唐突な質問





あたしの答えはもちろんNO




「じゃあ仕方ないね」
友達は苦笑した




「相談した意味ないみたいー」
「聞いてもらって、それはないでしょ!
でもあたしは、言葉よりも、態度の表現の方が嬉しいな」
「何で?」
「嘘をつけるのが人間でしょ?」
「それは・・・」









その言葉には一理あると思う







「態度は、必ずしもどこかに出るじゃない?
何も言わないけどそばにいてくれるって言うのが、
進藤くんの無言の愛情表現なんじゃないのかな?」








「あたしはあかりがうらやましい」









そう言って
友達は笑った








言葉は欲しいけど
偽りの言葉はいらないの
でもたとえヒカルになら
気持ちがなくても言葉をくれるのは嬉しいのかもしれない






あたしはヒカルのうちに向かいながら
自分の中で葛藤してた





















「遅かったじゃん」

ヒカルは家を出て
今は一人暮らし
あたしはこうして、呼ばれた時に会いにくる











「今日、泊まってくだろ?」
「うん」







ヒカルは忙しい
週末に休みがとれるのは、かなりの確率でめずらしい
だからこういう時
あたしは必ずお泊まり






「あたしがいないと寂しいでしょ?」

からかうと




「何言ってんだよ!」


と、でこピンひとつ

これはヒカルの照れ隠し


長年一緒にいると、相手のことは自然にわかってしまうもの
言葉はないけど、ヒカルから大切にされてるの、わかる



言ってること矛盾してるけど
あたしのうぬぼれ












「ぎゅってして?」




ヒカルの顔を見ると、甘えたくなる


こうしてそばによるのは、ほんとに久しぶり







たまにしかできないから、会えない分の愛情を、こうして確かめる

そうすれば、また一か月は頑張れる











「ヒカル」





名前を呼ぶ
本人の前で名前を呼ぶのも久しぶり


「何?」

返事が返ってくることが嬉しい









「何でもなーい」

そう言って、ヒカルの胸に顔をすり寄せる


「猫みたい」


そう言ってヒカルは
頭をなでてくれた
安心する大きな掌










言葉なんかなくても
あたしはヒカルに愛されてるってことを実感する




だけど、実感だけじゃ足りないの
確信というものがほしい






「あのね」






あたしは思い切って、話を切り出すことにした







「ん?」
「今日、友達がね」
「うん」
「好きな人に告白されたんだって」
「うん」
「好きって」
「うん」







ヒカルから返ってくることばは

「うん」

の一言だけ
それだけなの?

まだあたしが遠まわしに言ってるの悪いんだけど
何かもうちょっと、こう・・・











「いいな」
「何が?」
「だから!いいなーって言ったの!」









「好き」って、愛されてる証拠でしょ?

あたしにも、その言葉をちょうだい
あたしって、ほんとに贅沢だと思う









こんなにヒカルに愛されてることを実感していて
確信がほしいなんて
全国のヒカルファンを敵にまわすかもしれない
だけど、ほしいの
あの時の誓いの言葉を

言葉は、自分に誓いを立てることでもあるから
言葉に出したことは、自分の本当の気持ち
そう信じているから

















「好きって言ってくれないの?」




とまどうヒカルをよそに
卑怯かもしれないけど追い討ちをかける





もう一度
もう一度だけでいいの

あの音色をあたしに

あの日の優しい、あたしだけに届いた音色を
あたしに



















「今更・・・じゃん?」



ヒカルの顔は真っ赤
いつまでも経っても、押しに弱いところは変わらない





普段、平気で抱きしめたりできるのに
言われると照れてできないのよね









「ヒカル、あたしのこと好きじゃないんだ?」






とどめの一言


あたしって、性質悪いかも
だけど聞きたいから
ごめんね
ちょっとだけいじめさせて














ちらっとヒカルを見ると
さっきよりもさらに赤い顔をして





「一回・・・だけだぞ?」





待ってました





「うんv」












嬉しさに、さっきのいじらしさもどこへやらな笑顔を向ける









「・・・好きだ」















聞こえたよ、はっきり
ヒカルの音色
やっぱり好きだなぁ







「うん、あたしも大好き」






久しぶりに聞いた恋の音色は
前よりももっと鮮明で
どこまでも響きそうなメロディになってた






















「ね、もう一回?」
「一回って言った」






おねだりは軽く流されて





でもいいの
あの時と変わらない音色がそこにあったから
あのころよりももっと綺麗なメロディが
そこにあるから











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恋人ひかりです。
何て恥かしいタイトルでしょう。
何かで見て、使おうと思ってました。
思いを伝えるときに聞こえる恋のメロディ
小さいけどちゃんと届きました。
勘違いでパニックあかりちゃん。

作品中では、結構「可愛い」と言わせてたりする姫ですが。
「好き」というセリフは、あまり吐かせません。
進藤さんは基本的に照れ屋なので。
あんまりあかりちゃんが可愛いと、思わず出てしまう言葉もあるのです。
「好き」って、中々言えないですよね。特に男の子
簡単に出るセリフには、重みがないです。
毎日聞きたい人もいれば、そうじゃない人もいます。
たまに聞くから、響くメロディもある。そんな恋の音です。







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