他の何よりも大事なの



髪どめ




夏休み
ヒカルは家族旅行へ来ていた
いつもはあかりの家族も一緒のことが多いのだが
予定がつかなかったらしく
こうして一家族で来ている

今日はもう帰る日
楽しい時間というものは、早くすぎてしまうようで

ヒカルはホテルの売店でお土産を見ていた

「お母さん、これ」

選ぶお土産は、自分のものばかり


「ヒカル、あかりちゃんのお土産買ったの?」


見兼ねた母が尋ねると


「あかりー?何で今更、あかりに土産?」


めんどくさそうな返事が帰ってきた

そんな息子にため息を吐き



「ちょっと待ってなさい」


そう言って、何やら探しに行った



(そういや、あかりと旅行来なかったの初めてかも)


ふと目をやると
あかりの好きそうなキーホルダーが


「…」



手に取った時


「ヒカル?」


突然帰ってきた母に声をかけられ
ヒカルは慌ててキーホルダーから手を放した



「どうしたの?」
「何でも」
「そう?
ほら、これ」



息子の態度を不審に思いながら
小さい袋を渡す


「?」
「あかりちゃんに。お母さんが選んどいたから」



にこりとほほ笑んで
渡せと言うことなのだろう

ヒカルはしぶしぶ受け取り、ポケットに詰め込んだ


「ちゃんと渡すのよ?」



ヒカルは黙ってうなずき
母は笑った



あかりにお土産を買うなんて、初めてのことで
もらったことはあるけど、返したことはない
それが当たり前だった

まして、母の買ったもの

一体何を買ってきたのか
不安を覚えつつも
新学期を迎えた



「おはよ、ヒカル!」


あかりが迎えに来る朝がまた始まる

夏休みはあまり会えなかったので
ヒカル…二人にとっては、
今までで1番待ち遠しい新学期なのかもしれない



「ヒカル、夏休み楽しかった?」
「まぁそれなりに」
「旅行、どこ行ったの?行きたかったなー」


あかりが残念そうにつぶやいた言葉で
ヒカルはお土産を買って来たことを思い出した



「ん。」


と、それだけの言葉で、袋をあかりに差し出す



「何?」

あかりは受け取りながら首をかしげる

「土産」

ヒカルの答えに


「ヒカルがくれるの初めてだね!」


嬉しそうに笑った
それを聞いたヒカルは

「うるせぇなぁ」


と、不器用に答えた
嬉しそうなあかりの顔に
思わず赤くなってしまいそうだったから
図星をつかれて、腹が立ったというのも事実だったりするのだけど


「あけてみていい?」


心を踊らせて
ヒカルがうなずいたのを見て
あかりは丁寧にテープをはがした



「うわぁ!可愛いvv」



中に入っていたのは
色とりどりの貝殻がついた髪どめ

あかりは髪が長いので、よく一つにまとめたり
よく髪型を変えていた

たぶんそれをにらんでのお土産なのだろう
センスは良いようだ
「ありがと、ヒカル。大事にするね」


にこりと
ヒカルは、赤くなったのを気付かれないように
そっぽを向いてうなずいた




翌日あかりは
その髪どめをつけて学校へ来た


「似合う?」
「ふつー」


ぷくと膨れる
だけどすぐに機嫌は直る
似合う似合わないよりも
ヒカルがお土産をくれたことが嬉しいらしく
異常なくらいに機嫌が良かった


その昼に事件が起こるまでは


昼放課友達とはしゃいでいたあかりは
後ろから走ってきたクラスメートとぶつかった

そのとき

かしゃん


ぶつかったはずみで
髪どめが落ちてしまい

「ごめん!」

クラスメートに謝られ


「うん、いいよ」

あかりは笑顔で髪どめを拾いあげた
綺麗についていた貝殻はバラバラになり
跡形もない

あかりは涙をこらえた



その帰り道


「お前、朝頭にしてたヤツは?」

ヒカルに尋ねられ
あかりは答えられなかった
壊したなんて言えない
せっかくヒカルがくれたのに

黙っていると

「もう壊したのか?大事にするって言ったのに」


ヒカルが意地悪にからかいながら言った瞬間


あかりの目から涙があふれた
大粒の涙がとめどなく


ヒカルはびっくりして慌てる

「わーっ!ごめんってあかり!」


ヒカルが謝っても、あかりの涙はとまらない



「ヒカルがせっかくくれたのに…っ
壊れちゃったのぉ…っ」



しまいには声を上げて泣きだした


大切にしたかった
きっと選んだのはヒカルではないのだろうが
くれたことが嬉しかったから


「いいってあかり!頼むから泣くなよ」


小学生とはいえ
こんな住宅街の真ん中で女の子がないていると見れば
泣かせたのは近くにいるヒカル
と思われても無理はない
通り過ぎる人が
二人を見ながら歩いていく

ヒカルはどうにも恥ずかしくなって

何も言わずに
泣いているあかりの手を引っ張って歩きだした

あかりはすすり泣きへと変わり
ヒカルに手を引かれながら歩いた



「そんなのまた買ってやるから
泣くな」

背中ごしだけど
そう
優しく



「うん」



あかりは涙目でうなずいた


手をつないで歩く帰り道
大切なものはもう一つ増えそうな








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そらさまよりいださきましたvv「髪どめ」です。
はぴばすでーあかりちゃん企画で、お題を募集したところ
一番最初に下さいました。どうもありがとうございますvv

中途半端にちびひかり。
年齢は7歳のつもりです。小学校にあがったばかりのひかり。
進藤さん、この頃からあかりちゃんのことをvv
自覚がないだけで、気持ちが芽生えたのは早かったと思ってます。

本当は恋人ひかりで描きたかったんです。
ほんとに迷ったんです。
が、結局こっちになりました。
恋人ひかりVerは、別のタイトルで考えてます。

何はともあれ
そらさま、本当にありがとうございましたv


2004.05.25
音羽桜姫 拝









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