艶やかさと温かさ








紫陽花と向日葵









「どうしたの?その花!」


あたしは思わず大声をあげてしまった








手合いから帰ってきたヒカルが
前が見えないくらいの大きな花束を抱えて帰ってきたから







「どうでもいいから、手伝って」
「あ!ごめん!」




あたしは慌てて、ヒカルがもっている花束に手をそえた



大きめの花瓶に、何本か分けて、花をいける






ヒカルがもってきたのは、紫やピンクのとりどりの紫陽花

今の季節、綺麗に咲いてる花







それにしても
電車の中を、この花束を抱えて帰ってきたなんて







「ふふっ」



想像したら、何だかおかしくて


ヒカルに花っていうだけでも似合わないのに(失礼かしら)
こんなに大きなものを抱えて歩いてきたなんて

一体どんな顔して歩いてきたのかしら









「何笑ってんだよ」



あらあら
少し不機嫌?
そりゃそうよね
きっとからかわれてきたんだわ







「ごめんね?」

とあたしは謝る
でも内心笑ってて




「仕方ねぇだろ」




ヒカルはそっぽを向く
すねちゃったみたい
こまったヒト







頭なでてあげるから
ほら
機嫌直して?


ヒカルの機嫌は
よほどのことがない限りこれで直る







「ガキじゃねぇんだから」

って、いつも照れ隠し




イヤなはずはないよね?
だって、あたしはヒカルに頭なでてもらうの、好きだもん
あたしがイヤじゃないもん
ヒカルだって、そうに決まってる




あたしの勝手な解釈
でも、ほんとにそうだと思うから
好きな人にかまってもらって、イヤな人はいないでしょ?








あたしはヒカルの隣りに座り、
紫陽花を眺めた


部屋に花があるっていうのは
何だか落ち着いた感じがして

花が醸し出す雰囲気に酔いそうになる





「何でこんなにたくさんもってきたの?」




1番気になること




「棋院の近くに、紫陽花が咲いててさ、奈瀬が見てたんだよ」









奈瀬さんは、ヒカルが院生時代に仲がよかった人



ヒカルがプロになった年から2年後
女流プロになった



伊角さんって人の彼女さんで
何回か会ったことがある


すごく明るくて、可愛い人

院生のアイドルだったって、ヒカルも言ってたくらい









「奈瀬さんにもらったの?」
「最後まで聞けよ」




ヒカルがあたしの頭をこづいた
決断が早いのは、
ヒカル曰く、あたしの長所でもあり
短所でもあるらしい


どっちなのか、イマイチよくわからないけど
得したこともあったりなかったりだから
言われればそのとおり




ヒカルは話を続けた









「綺麗だから、あかりに持ってけって言うんだよ」
「あたしへのお土産?」
「そ。それで、奈瀬が持てるだけ摘んでさ。
そんなこと言っといて、自分の分は摘まなかったんだぜ?」




ずるいよなー
って




あんなにもたくさん
奈瀬さんって、いい人だなーvv








でもあれ?
紫陽花って…






「何で紫陽花なのかな?」



一度気になったら気になるもの



「は?」
「だから、何で紫陽花なのかな?」
「近くに咲いてたからだろ?」






だって紫陽花の花言葉は










「ヒカル、紫陽花の花言葉知ってる?」
「花言葉ぁ?」






知るわけないよね






「紫陽花の花言葉はね、浮気とか移り気とか・・・
あんまり良くないんだよ・・・彼氏彼女がいる人には・・・」






花言葉の意味を知ったヒカルは
真っ青になって






「奈瀬・・・あいつもしかしてわざと・・・!?」








そんなことするような人じゃないと思うんだけど






それよりも気になるのは


「ヒカル、もしかして浮気してるの?」








これが一番の疑問
だっておかしいよ
近くに咲いてたって言ったって
こんなにたくさんの紫陽花






「はっ!?
何言ってんだよ!浮気なんてしてねぇよ!!」







うろたえるところが怪しい・・・









「そうだわ!奈瀬さんはきっと教えるためにヒカルに紫陽花を・・・!」
「なんでそうなるんだよ!」
「ヒカルが花言葉を知らないこと、考えなくてもわかるんだわ
それで、あたしにわかるように紫陽花を持たせた・・・」
「ちょっと待てよ!!」




言い訳をするヒカルに、あたしの疑いは止まらない







「ヒカルのばかーっ!」
「ちょっ!あかり落ち着けよ!」





紫の紫陽花が、綺麗に映る
こんなに綺麗なのに、今は純粋に綺麗と思えない








ヒカルは頭を抱え込み








「ほんとに俺、浮気してないから!」

その目は真剣で



「ほんとに?」




疑いの目を向けながら
確認をする







「ほんとだって!」
「ほんとにほんとにほんとにほん・・・」






あたしの唇をヒカルがふさぐ






「ほんと」









イジワルな笑みを浮かべて
一本取られた








「わかった・・・」




信じてるよ?






「この紫陽花、どうする?」


ヒカルが浮かない顔で




疑いもはれたことだし






「せっかく奈瀬さんがくれたんだもん
枯れるまでおいておこうよ」



綺麗なんだし




「単純」



そう言って、ヒカルは苦笑した




そうよ
女の子は単純なの
ヒカルの一言で、傷ついたり嬉しかったりするんだよ
花のように繊細なんだから
自分で言うのもなんだけど






ヒカルは紫陽花をじっと見つめて





「紫陽花って、何だか清楚な感じしねぇ?」


突然何を言い出すの?






あたしもじっと紫陽花を見る
確かに、少し鮮やかな感じはするけど





「あかりには似合わねぇな」


くっくっと笑いながら




「どういう意味よー?」



少し膨れてみせる


どうせあたしには似合いませんよー!
余計なお世話だわ!









「夏になったら、今度は向日葵持ってくるよ」
「何で?」



ヒカルが買ってくるの?


「あかりの花だから」



あたしの花?



向日葵の花言葉は


『あなたを見つめる』





うん
あたしにぴったりかも
だって、あたしはいつもヒカルを見つめているから







「向日葵畑行きたいよ」

おねだり
小さい頃に、一緒に連れて行ってもらったあの





「よし!じゃあ夏になったら向日葵、見にいこうな!」
「うん!」







疑ったりしたけど、何とかはれたし
紫陽花って綺麗だけど、好きな人がいる人にはあまり向かないのかも





翌日ヒカルは奈瀬さんに


「何で紫陽花なんか持たせたんだよ」
「あら?効果あったでしょ?」
「何の効果だよっ!」
「愛は障害があるほど燃えるって言うじゃない?」
「・・・」




どうやら遊ばれていただけのようで
ヒカルって確かに、からかいやすいのよね
遊べるのがあたしだけじゃないって言うのは
何だかちょっと悔しいな









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前のお題「光と影」と、一緒に頂きましたお題「紫陽花と向日葵」です。
花言葉は調べました。
進藤さんを誤解するあかりちゃんが描きたかったんです。
が、最初はそうする予定なかったです(笑
ただ、あかりちゃんには「紫陽花よりも向日葵かなー」という
姫の勝手な妄想です。
そして奈瀬さん。友情出演。
最後にはらぶらぶひかり。
おまけにスミナセ。

紫陽花って、艶やかな感じしますよね。
向日葵は逆のような元気さを感じさせてくれるなーと。
描いていて楽しかったですvv

こんなのでよろしかったでしょうか?
少しでもお気に召されると幸いです。
お題提供、どうもありがとうございましたv



2004.06.01
音羽桜姫 拝










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