あの頃に戻りたい
そう願うのは
想い出がそこにあるから






You&Me







9月
あたしの元に、中学の同窓会のはがきが届いた






「懐かしいー!」








思わず声が出る

中学を卒業して3年
あたしは大学生になった





「ほんとに懐かしいな・・・」





ここで思い出すのもおかしいけど
はがきを見てたら、何だかあの頃を思い出した




大会に向けて、頑張ってた囲碁のこと



楽しかったな
あの頃が一番



ヒカルがいて
いつも笑ってて





ヒカルとの距離を感じるようになったのも
この頃だった


楽しかったり、淡かった想い出がたくさん







「よーし!」






あたしは迷わず、はがきの出席の場所に丸をつけた



「ヒカル、来るかな?」




何て
すぐヒカルのことを考えちゃうのは、昔から変わらない
ある意味、あたしのクセになってる




電話して聞いてみようかな


高校の時は、よく指導碁に来てもらってたけど
今は・・・



ヒカルどんどん忙しくなって
大学に入ってから一度も会ってない

駅でも見かけないし、うちの近くでも見なくなった




何だか悪いような感じがして
ヒカルとの距離には踏み込めなかった


ヒカルは、今
自分の世界を歩いてる
あたしの知らない世界を

あたしは影でずっと応援するって

そう誓ったんだ






だけどやっぱり、もう一度でいいから会いたい

会いたいから
少しでも会える場所があるなら
あたしはきっと、どこへでも行く

はがきを出して

数週間後
同窓会の日を迎えた






「あかりーもうすぐ時間よー!」
「わかってるー!!」






下からお母さんに呼ばれて

あたしはまだ、何を着ていくか迷ってた




だって、せっかくヒカルに会えるかもしれないのに
ヒカルだけが大人になって
あたしは何も変わらない
少しは変わってるかな?
随分大人っぽくなったんだよ
今のあたしをヒカルに見てもらいたい


幼なじみとしてでいい


ゆっくり大人になったあたしを








「これで・・・いっか」







何だかまだ、しっくりこないんだけど
いい加減、時間もヤバイしね



しっかり軽くお化粧して







「行ってきまーす!」







心を躍らせながら、あたしは家をでた

こんなにドキドキするの、何年ぶりだろう




みんなに会えるよりも、あたしは何より
ヒカルに会いたくて







会場が近づくにつれて、鼓動は早くなっていく







『葉瀬中同窓会会場』




思わず笑っちゃった
だって、こんなに大きく書いてなくてもわかるよ
だって会場は、葉瀬中なんだから




4年ぶりに立つ校門の前

あの頃とちっとも変わってない




ゆっくり景色を堪能しながら
体育館へと向かう


そこにはちらほら懐かしい顔が



4年も経ってるのに
みんな変わってない
あれかな?
あの頃に戻るって
本当に戻ってるわけじゃないのにね
そんな錯覚おこしちゃう









「あかりーっ!」




懐かしい声が聞こえた



「久美子!」




中学からのあたしの親友
大学は離れちゃったけど
今日ここに来たのは、久美子に会うためでもある








「久しぶりだねー」
「何言ってんの?先月会ったじゃない!」






ふざけながら挨拶を



あの頃は、約束しなくても会えたのにね
何だかちょっと寂しい







「あっちに、のりちゃんたちいるよ!」




久美子に腕を引っ張られながら


あの頃の懐かしい顔に出会う







「久しぶりー!」








懐かしい再会を






「あかり、今何してるの?」
「大学生してるよー」
「変わってないー」
「愛ちゃんだって!みんなだって変わってないよ」






変わってない
ほんとにそうだといいのにな





今ヒカルに会えても、あたしはあの頃のように
ヒカルに接することができるかな?







突然、向こうがざわめいて












「何かな?」






人ごみを覗き込む
その中心にいたのは




ヒカル




相変わらずの前髪メッシュが目立つ










「あかり!」




目があった瞬間
ヒカルはあたしの名前を呼んだ


まだ
あたしのこと、忘れないでいてくれたんだね






「久しぶり」
「うん。ほんと久しぶり」






ヒカル、去年よりずっと大人っぽくなってる
だんだんかっこよくなっていくんだね
あたしをおいていくんだね
二人の距離が広がる







「変わってねぇー」



ぽんぽんとあたしの頭を叩き



「あかりだ」



笑った
その笑顔は、いつまで経っても変わらないのね




「ヒカルだって、変わってないよ」




うん
変わってない
ヒカルは今も
あの頃のままだ
離れられないのは、あたしだけじゃないのかも






「あかり、あたしたち、あっちに行ってるね」



そう行って、みんなは向こうへ行ってしまった







「あかり、今何してんの?」
「大学生してるよ?」
「志望校、受かったんだ?」
「おかげさまで」



みんなして同じ質問してくるからおかしくなる

顔を見合わせて、また二人で笑う





あの頃の時間がここにある
カタチは変わってるけど
何一つ変わってないあたしたち





「碁・・・は?」
「え?」
「碁!まだ続けてる?」
「うん、大学でも、サークル入ってるよ」
「そうなんだ」





うん
だって、それだけがあたしとヒカルを繋ぐものでしょ?






「また指導碁打ってやるよ」







思いもかけない、ヒカルからのお誘い
会えただけでも嬉しかったのに
何だか、今日ここに来た甲斐があったなーって。
あたしって単純






「ヒカルは?頑張ってる?」
「俺?まぁそれなりに」







すごく頑張ってる
知ってるんだよ、あたし



知ってるけど、聞きたくなった
何でもいいから、ヒカルと話したかった
今日が、また新しい想い出になるように





どうでもいいことをたくさん話して



一番好きな時間に変えて






「藤崎さん」



せっかくヒカルとお話してたのに
知らない声に呼ばれた
後ろを振り返ると
やっぱりしらない人


「?」
「ちょっといいですか?」




あたしに用事?




「ヒカル、待っててくれる?」



用事が終わったら
またお話してくれる?





「ああ」






ヒカルの返事を待って
いいって言ってくれた



今日はずっとヒカルといたい







「ちょっと行ってくるね」



ヒカルに軽く手を振って
あたしはその人を追った












「え?」


あたしはよく聞こえなくて
失礼だけど聞き返した



「付き合ってください」



その人はもう一度同じ言葉を口にした



「えっと…」

返答に困る



あたしは
校舎の裏にいた
呼び出されて
その人と一緒にここに来た



この人には悪いんだけど
あたし
この人知らないのよね
同じクラスになったことあったっけ?
同じクラスになったことのある人は
大体覚えてるから…
ないんだろうな


好きって言ってくれてる人に

「あなた誰?」

なんて
さすがに失礼よね




頭の中で
考えをいろいろめぐらせて




はっきりしてるのは
この人とは付き合えないってこと









「ごめんなさい」









だってあたしは
ヒカルのことが好きだから
ヒカルとしか付き合いたくないなんて
そんな贅沢は言わないけど
伝えてもいないのに
気持ちを偽ってまで付き合いたいとは思わない



やっぱり
何もしないうちからあきらめたくはないから



自分の気持ちを再確認






「気持ちは嬉しいんだけど…」



やっぱりごめんなさい

あたしはたぶん
ヒカルしか好きになれない





「わかりました」



少し切なそうに笑って
その人はあたしの前から走っていった





悪いことしちゃったかな?
だけど
偽って傷つけるより
ここで断った方がいいよね




ごめんなさい
嬉しかったけど
ごめんなさい





こういうの
初めてじゃないとは言え
いつまで経ってもなれない
好意を持ってくれる人にごめんなさいをするのは

付き合ってる人がいるわけじゃないから
気持ちはいつも決まってるんだけど



あたしは小さくため息を吐いた





「はぁ」
「男泣かせ」






ため息のすぐ後に
聞き慣れた声が聞こえて
慌てて振り返った








「ヒカル!?」









え?やだ!
いつから!?




あたしは思わず口をぱくぱくさせて


っていうか何よそれ
あたし、泣かせたことなんか
一度もないわよ





「もてるとは聞いてたけど…初めて見た」




もてる?
誰が??





「断ったんだ?」





意地悪な顔をして
その笑顔も変わらないのね


癪だけど
やっぱり好きだわ
そんないたずらな顔も







「断ったよ。あたし好きな人いるもん」








はっきりと
誰かは言わないけど






「そっか」







少し照れたように笑って


その笑顔
ふいうちよ


そんな顔されたら、期待しちゃう



いろんな表情を見つける度

好きだって思っちゃう






「好きな人ってだ…」
「戻ろっか!」






ヒカルの質問を遮って
あたしはさっきまでの場所に戻ろうとする



「はぐらかした」







少しムッとしたヒカルの声を
背中で受け止めて



聞かれちゃ困るの
今はまだ言えないから
もう少しだけ内緒にさせて

ちゃんと
「あなたが好きです」
って言える勇気が持てるまで

きっともうすぐだから


その時がきたら、はぐらかさずにちゃんと聞いてね?









「あかり、今日夜は?あいてる?」
「うん。」
「一緒に飯行く?」
「行く!」
「和谷たちもだけど。」
「うん、いいよ!」






一緒にいられるなら
何だって







校庭に戻ると








「進藤くん、いた!」







突然女の子にかこまれて
とまどうヒカル











「もてるのね。人のこと言えないじゃない」
「は!?」









困ってるヒカルに
意地悪な笑顔を向けて
嫌みっぽくからかってあげた






「ちょっ…あかり!」







呼ぶ声が聞こえたけど
意地悪にムシしちゃう

内心穏やかじゃないけど
今日は取り囲む女の子たちにも
ヤキモチはやかない

今日は一日
ずっと一緒だもんね
1番楽しかったあの頃のように



ヒカル









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森永りょくさまより頂きましたお題『葉瀬中同窓会』です。
すみません、タイトルだけ変えてしまいました(><)よろしかったですか?
進藤さんとあかりちゃんは、いつまで経っても変わらないままいられるのよと思って描きましたです。

付き合ってないのに、らぶらぶなのは、いつもどおり言うまでもないんですけど。
あかりちゃんの告白パターン、もう一個考えたのですが、どうしても進藤さんには
優しい言葉を吐かせたかったのです。
ネタバレしちゃうと、「付き合えばいいのに」っていう進藤さんの言葉をいれるつもりでした。
それにあかりちゃんは涙するという・・・
ダメでした、出来ませんでした(笑)だってあかりちゃんに笑っててほしかったんですもの(><)

森永さま、こんなのでよろしかったでしょうか?
少しでもお気に召していただければ幸いです。
お題提供、どうもありがとうございましたvv



2004.06.03
音羽桜姫 拝










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