一人じゃないよ
あきらめないで
ついてるから








自転車










「離すぞ!」
「えっ!まだヤだ!」






公園で子供の声が響く
ヒカルとあかりは、
自転車に乗る練習をしていた
支えているのはヒカル

手が離れた瞬間




「きゃあああっ」



女の子の悲鳴と
派手に倒れる音がした




「大丈夫か!」




ヒカルはその場に慌てて駆け寄る









「いたぁい…」




あかりは泣きべそをかく

「まだって言ったのに…」



座りこんだまま、
ぐすっと鼻をすする



「ごめん」
「うん。でも、さっきより進んだよね?」
「ああ!もうちょっとだぜ!」


へへっと笑いあう











練習を始めて1時間
少しずつだが
支えている手を離してから進む距離は増えていた

どうも
焦ってふらついてしまうらしい





「今度は黙って離してやるよ」
「そっとだよ?」
「わかってるって!それより、ケガ大丈夫か?」
「へーきへーき!」


あかりはこぶしをふりあげた



「ちょっと休憩しよーぜ!」




二人はその場に座りこんだ








「ごめんね。付きあってもらって」



ぽつりとあかりが言葉をもらす


ヒカルは
「何言ってんだよ!」

と、あかりの憂鬱を笑い飛ばした


「別にいいって!
俺だってくやしかったんだぜ!」








ヒカルの言葉に
うかなかったあかりの笑顔に花が咲いた
それを見て
ヒカルは少し、安心した
あかりがこの状況を悪いと思っていることを
気付いていた


ヒカルにしてみれば
あかりの役に立てることが嬉しかったから






そもそも
なぜ二人が自転車の練習をしているのか

理由は
学校での出来事







仲良くなった友達同士ででかけることになり
その行き先は、自転車にのらないと行けないところ

運動神経だけはよいヒカルは
小学校に上がる前にのれるようになったのだが
あかりは小学校に入ってから自転車を買ったため
乗れないでいた









「じゃああかりちゃん行けないよね?」


と、からかうクラスメートに




「日曜日までに乗れるようにする!」




ヒカルが啖呵を切ったのだった
あかりがからかわれたことに腹を立てて




「俺が乗れるようにしてやる!」





と、宣言までしてしまった



その結果が今である










「でもヒカル、かっこよかった!」
「はぁ?」
「あたしのために言ってくれたんでしょ?」
「別に…」
「照れてる?」
「照れてない!」




否定するが
その顔はごまかしようがないほどに赤い

ヒカルはすぐ顔にでる
特にあかりの前では
ずっと近くにいたせいか
他の人にはわからなくても
お互いだけがわかる絆のようなものができあがっていた


いつもかばってくれるヒカルに
嬉しさを感じていて





「ありがとうね!」


とびきりの笑顔で




「あたし、頑張るよ!絶対乗れるようになるから!」






あかりは立上がり
横になっている自転車を起こした







「頑張れ!」




ヒカルも立上がり
あかりの自転車を支える








「もうちょっとなのに…」
「力いれすぎじゃねぇ?
もうちょっとこう…」




あかりのハンドルを握る手を動かしたりしながら






「行くぞ…」
「…うん」




練習再開

何だか今度は乗れそうな


ヒカルに後ろを支えられ
あかりはペダルをこいだ

ゆっくりそのスピードを早めていく







「そっと離してね!」
「わかってる」

(そろそろかな)




頃合を見計らって
ヒカルは手を離した




あかりは知らずに自転車をこいでいる
手が離れたことに気付いていない







「やった!」




ヒカルは思わず声をだした
多分、あかりには聞こえていない








「あかりー!」




教えてやろうと
あかりの名前を呼ぶ


ヒカルの声が遠く感じて
あかりは振り返った

そこにヒカルはいなくて
姿があるのは、少し後ろ






「あたし、乗れてる?」
「乗れてる乗れてる」




嬉しくて










「ヒカル、乗れたよ!」



もっとヒカルに見ててほしくて




再び後ろを振り返り
ヒカルを見た







「あかり!前!前!!」




乗れたのに
ヒカルは慌てた声でこちらに走ってくる




「前?」




どうかしたのかと
再び前に向き直った瞬間



あかりは、自転車ごと草むらに突っ込んだ





「…」




何が起こったのかわからなくて












「あかり!」



ヒカルが駆け寄り、あかりの腕をつかみ
身体を引っ張り出す




実感する







「ふふ、あははっ」

あかりは笑い出した

何だか無性に笑えて
なぜだか笑いがこみあげてきて




「何笑ってんだよ?」

「おかしいもん…あははっ」



あかりの笑いはとまらない

つられてヒカルも笑い出した








「乗れたな!」
「うん、乗れた!」



顔を見合わせて、また笑う






「ああいう時は、ブレーキかけるんだよ」
「ブレーキ?」
「にぎるとこの下についてるだろ?」
「ふーん」








ほらね
一人じゃないと勇気がでてくるんだよ
その勇気はキミがくれるの

だから頑張れる
何だってできちゃうよ
全部キミのおかげ
だからいつまでも
そばにいてね








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Web拍手にて匿名希望さまより頂きましたお題『自転車』です。
小学生ひかりですー!
自転車の練習をするあかりちゃん。
実は姫も、なかなか自転車に乗れませんでした。
このあかりちゃんは、姫の小学生の時がモデルになっています。
草むらにつっこんでいきましたとも。乗れたのが嬉しくて
「乗れたよー!」とか叫んだ瞬間「前!前!」って言われて。
前を見たら、つっこみました。
姫の場合は、練習に付き合ってくれたのはお友達やお母様でしたけど。
最初に乗れたときって、ほんとに嬉しいんですよねーv
ブレーキを忘れるくらい、ひたすら走る。
一人じゃできないけれど、誰かがいてくれればそれが勇気になるから。


実はこの話。別パターンでも考えたのです。
二人乗りするお話なのですが、迷った結果、小学生ひかりになりました。
企画が落ち着いたら、タイトルを変えてUPしたいと思っています。
切ないらぶにできたらいいな。

こんなのでよろしかったでしょうか??
少しでもお気に召されたら幸いです。
お題提供、どうもありがとうございましたvv









2004.06.08
音羽桜姫 拝











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