この景色をキミと一緒に
見られたらいいな










スカイダイビング











「それでさ、すげぇの!ほんとに空飛んだんだぜ!」



楽しそうにはしゃいで話すヒカルを前に
見ていたら何だか
あたしまで楽しくなってきた









「空飛ぶのって、以外に気持ちよかった」
「空は飛んでないでしょー?」
「飛んだんだよ!鳥…とまではいかねぇけど、ハングライダーで飛ぶような感じ!」









少年のように瞳を輝かせて、一生懸命に
その時の話を、あたしに聞かせようとする







久しぶりにヒカルとゆっくり会えた

先週からヒカルは、タイトル戦の挑戦手合いで、あたしのそばにいなかった
今までで、1番長く離れてた


今まで近くにいた人が、そばにいないっていうのは
心にぽっかりと穴があくよう
付き合ってから、その感覚は大きくなった




寂しかったけど寂しくなかった
電話は毎日くれたし
ヒカルの写真ももってるしね










その時にやったスカイダイビングの話を、今こうして
あたしに聞かせてくれてる


遠出した時はいつもそう


お土産と、話を持って
必ず会いにきてくれる














「あの景色、あかりにも見せたかった!」




本当に楽しそうに笑うの
子供みたい






「そんなに綺麗だったの?」







見せたいって、思ってくれたことが嬉しかった






「ああ!」
「浮いてるのに、まわり見てる余裕あるの?」
「パラシュート開いたあとだよ!飛び下りた時はいっぱいいっぱい」




ヒカルは苦笑した

そうだよね
だって、飛び下りる感覚なんだもの











「別に一人で飛ぶわけじゃないんだけど、最初は怖かったかなー」
「もう怖くないの?」
「ああ、一回降りちゃえば平気。怖いより何より、あの気持ちよさには負けるって!」




そんなに自信たっぷりに












「写真のあかりには見せたけど。」




持っててくれてるんだね




ちゃんと
離れていても、あたしの事を考えてくれるヒカル
嬉しいな




離れてる間は、少し寂しかったけど
帰ってくるなり会いにきてくれたし
お土産話も聞けるし


何より
離れてる時間が長いほど
好きだって実感できる




次に会う時、それが待ち遠しくなる




ずっと離れてるのはイヤだけど
ちょっとならガマンできるよ

同じ空の下にいる限りはね













「今度一緒に飛ぼうな」
「うん」


気持ちが嬉しかったから
あたしはオーケーサインをだした

まさか、そんなに早く
その時が来るなんて
思ってなかったんだ















次の日
ヒカルから電話がかかってきた



『あかり?』
「ヒカル?」
『うん。あのさ、次の日曜あいてる』




あたしはカレンダーをチェックして






「あいてるよ」

と返事した

続いて


『よかったー』

という、ヒカルの嬉しそうな声が、受話器越しに聞こえた


何だろうと思って

「日曜日、何かあるの?」


聞いてみた
ヒカルから返ってきたのは



『日曜日のお楽しみ!』

と言う、気になる言葉
そんな言い方されたら
気になるじゃない



「何ー?気になるよ、教えて!」


お願いしてみるけど


『だーめー』

の一点張り

しばらく
「教えて!」
『ダメー』

を繰り返し



『楽しみにしてろよ!』


ヒカルはそう言って
電話を切っちゃった
すごく気になるんですけど



しょうがないからあきらめて
あたしは日曜日をまった














そして迎えた日曜日
ヒカルが車で迎えにきた



ずっと気になってて
助手席に乗り込んだと同時に質問する







「どこ行くの?」
「いいとこ」



何だかすごく楽しそう

そんなにいいとこに連れてってくれるの?












期待してたら

たどり着いたのは
見晴らしのいい場所



ここがいいとこ?




わけがわかんない


あたしは車から降りて立ち尽くす













ヒカルは

「ちょっと待ってな」


そう言って
人のいる方に歩いて行った



ヘリコプターが見える

あと
何人か人が


ヒカルがあたしを手招きして



あたしはそっちへ足を進める












「何?」
「これ。今から乗るの」


ヒカルがニッと笑う
イヤな予感

あたしは恐る恐る
ヒカルの後についてそれに乗った




上空へと向かっていく

これってもしかして

ううん
もしかしなくとも









「ヒカル、あたしたちどこに行くの?」
「どこって…上?」



見ればわかるわよ!
そんな笑顔で答えないで



「何で上に行くの?」

そんなの聞くまでもないんだけど



ヒカルはにっこり笑って



「スカイダイビングするから」



とどめの一言

いいとこって空なの?
あたしまだ死にたくないよ











「ヤだ…」
「は?」
「ヤだ!降りる!」
「何で!?」
「何でも!」










インストラクターさんがいる前でくだらない口げんか
恥ずかしいとか
今のあたしには意識すらない







「あたしまだ死にたくないもん!」
「死なねぇよ!縁起でもねぇこと言うな!」


お互い譲らない



ヒカルが
自分の見た綺麗なものを、あたしにも見せようとしてくれてるのはわかる
それはすごく嬉しい
だけど、いきなりすぎて心の準備ができてないっていうか…
怖い




あたしは手を握りしめる












その様子を見てたインストラクターさんが
くすくすと笑いながら




「大丈夫ですよ。あたしたちも一緒に飛びますから」

笑顔で



「危なくないようにこれをつけて、パラシュートはあたしたちが開きます」




説明をしてくれた


うん
それなら何とか…


少しだけ落ち着いた




大丈夫そうな気がしてきて

さっきまで取り乱してたのが
落ち着いたら恥ずかしくなってきて


プロがいるのに
落ちるわけないよね
余計なことを考えて早とちりしたのが恥ずかしい










「ばか!」


どうしようもなくて
ヒカルに八つ当たり





「ばか!?…あほ」





売り言葉に買い言葉


あーいえば、すぐにこういう
ヒカルにも困りモノ














ヘリコプターは徐々に高度をあげて


インストラクターさんが準備を始める

あたしは任せっきりで




説明されても
大丈夫って思っても
心拍数はあがっていく













「大丈夫だって」


ヒカルが手をつないでくれた

一回飛んだ人はいいわよね
余裕があって



あたしはヒカルを下からにらんだ



でも
安心する
ヒカルの手、あったかい







落ち着いてきた
















「じゃあいきますよ」



一言で
もう決心を決めるしかない




「離さないでね…」


あたしはヒカルの手を
さっき以上に握りしめて



「ああ」




ヒカルはほほ笑んで
握り返してくれた











ふわっと体が軽くなる


その後は、下に真っ逆様
声にならない悲鳴をあげそうになる

とても目をあけてはいられなくて
圧迫で離れそうになるヒカルとの手を
必死につなぎとめて






ばさっという音と共に
スピードはゆるくなり
気持ちのいい風に揺られた












「あかり、大丈夫だから」



ヒカルの優しい声が聞こえて



あたしはそっと目をあけた




目の前に広がっていたのは













「ぅわあー…」




すごくキレイな景色
言葉に表すことができないくらい

息を飲む




こんなにキレイなの知らなかったなんて
何だか悔しい

ちっとも怖くない




「な、きれいだろ?」
「うん」




一緒に見たいって思ってくれたんだね

この景色を一人じゃなくて





それから30分の空中飛行を楽しんで



あたしたちは帰路についた














「楽しかった?」
「うん。すっごく!ありがとね」
「あんなに怖がってたくせに。」
「…う…だって、あんなにいいものが見れると思ってなくて」
「よかった、あかりと見れて」




うん
あたしもヒカルと見れてよかった


あなたが感じたものをあたしのものに
あたしが感じたものをあなたのものに

そうやってすべて同じにして

あの
どこまでも広がってた空のように

ずっと二人でいられたらいいな






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匿名希望さまよりいただきましたお題『スカイダイビング』です。
二人でお空を飛びましたー。恋人ひかりです。
インストラクターさんの前で、痴話げんかする二人を描くのが楽しかったです。
あかりちゃん、「死ぬ」って・・・(笑
でも初めて飛ぶときって、やっぱりそう思っちゃうと思いませんか?
少なくとも、姫は思っちゃいますね。適度に高所恐怖症なんですよ。
でもあれかな。一回飛んじゃえば、どうってことないのかな。
このお題のひかりは、19歳の設定です。だから進藤さんは免許持ってます。
車でのデートは、これからたくさん増えることでしょう(笑
車内デートも楽しそうですvv(は
一緒にお空を飛んだ二人ですが、姫は絶対やりたくないです(爆
たとえ進藤さんのような素敵な殿方に誘われても。
好きな人に一緒に飛ぼうと誘われても、絶対ヤです。死ぬよりマシです(死なないって←笑

こんなのでよろしかったでしょうか?
少しでもお気に召されたら幸いです。
お題提供、どうもありがとうございましたvv










2004.06.10
音羽桜姫 拝








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