そばにいるよ
どんな時も










エールを君に











「進藤プロ
史上最年少の本因坊タイトル挑戦者」







これが
週刊碁一面の見出しを飾った












進藤ヒカルプロ
2年連続北斗杯出場もう3年目に出ることも決まってる

ちなみにあたしのだんな様







昨日は、ヒカルの知り合いや両親から、たくさんお祝いの電話をもらった


あたし自身は
ヒカルから直接電話で








「あかり!俺、勝ったよ!」


棋院から
突然のヒカルからの電話
いつもは勝ってもかけてこないのに






「おめでとう」


受話器越しに、心からの気持ちを












本因坊
囲碁のタイトル戦の一つで
1番歴史が長いらしい
ヒカルは
本因坊のタイトルを、ずっとそれだけ狙ってた
「他のタイトルはいらない」
「これだけが欲しいんだ」って

リーグ戦に勝ち進んでいけば、そういうわけにもいかないのにね








「中押勝ちだったんだ」



ほんとに嬉しそう
そうだよね
ヒカルがプロになって

ううん
碁を初めて
ずっと憧れてた人に、一歩近付くんだもんね


待ち望んで
追いかけて
ただがむしゃらに







このタイトルが、ヒカルにとって一番の目標で
どれだけ大切なことなのか
少しはわかってるつもり

しかも
塔矢くんに勝って挑戦者になったから
その意味はかなり大きい







「今日は、お祝いだね。」
「じゃあ早く帰るよ」
「うん」
「早く帰って、あかりの顔が見たい」
「うん。待ってる」



あたしの願いは、いつでもヒカルが帰る場所になること
今は充分すぎるほど叶ってる










「あかりに一番に聞いてほしくて」



その気持ちが嬉しくて

早くヒカルに会いたくなった













その夜は、ヒカルの好きなもの作って
ヒカルの友達呼んで
大騒ぎして







朝は…お寝坊さん







「ヒカル、起きて」


時計の針は12時をさす5分前

なかなか起きてこないから
起こしに行った




気持ち良さそうに寝ちゃって



あんまり起きる気配がないから
イタズラにキスをする









「!!」




ばさっという布団の音と一緒に
飛び起きた



ほらね
あたしのイタズラは
お寝坊なヒカルには効果的







「おはよ」

笑顔で挨拶




「…はよ
今の…あかり?」





当たり前なこと聞かないで







「あたし以外に誰がいるの?」
「…眠い」
「いい目覚ましになったでしょ?」
「タチ悪りぃ…」




頭をがしがしとかきながら







からかうあたしと
照れ屋なヒカル
いつものお返しよ
こういう時しかできないもの












「ご飯は?」
「あかり」




そう言って
ヒカルはあたしにキスをした







「朝っぱらから何するのよ!」
「お互い様だろ
それにもう昼だよ」





ささやかなあたしの仕返しは
あっという間に返されて

こういうのは早いんだから
困りもの

どっちかタチ悪いんだか






ヒカルはさっさと着替えて
どこかへ行くみたい



「どこか行くの?」

尋ねると

「碁会所」



だって

じっとしていたくないのね






「その後、打ってくるから」



昨日も打って、また今日も

ヒカルが碁を打たない日はない

頑張ってるヒカルを、応援してあげたい









「行ってらっしゃい。夕飯までには帰ってきてね」





美味しいもの作るから



「ん。わかった」



ヒカルは笑って出かけて行った
















「さー!片付けるか!」


気合いを入れて


部屋の中を掃除して
お布団を干して



ヒカルにはヒカルの
あたしにはあたしのやることがある




やりたいことやってくれていいの
ずっとそばにいてくれなくてもいい
ただ
あたしのところに帰ってきてくれたら
あたしはそれでいいの
ちゃんと待ってるから










夕刻
針は6の数字を回った頃
ヒカルは帰ってきた




「お帰り」
「ただいま」
「ご飯、できてるよ」
「サンキュ」




ご飯を食べて
いつもと変わらない時間を過ごして





ヒカルがお風呂に入ってる間に
あたしは、明日の準備をする




ヒカルは、明日から三日間
あたしのそばにいない



タイトル戦の挑戦手合いは、日本棋院じゃない



これからしばらく
ヒカルとは会えない



ヒカルの荷物をまとめながら
落ちそうになる涙をこらえて



寂しくないなんて
そんなの絶対ウソ

だけど
頑張るヒカルの足を止めさせるのだけは
絶対にしたくないから













「あかり?」



今日は早いのね

振り替えると、お風呂上がりのヒカルがたってて
あたしは気付かれないように涙を拭いて




「明日からの荷物、まとめといたよ」


笑顔で振る舞う


「悪いな」


そう言って笑うヒカルの顔も
三日は見れないのね






「明日早いでしょ?
今日はもう寝なきゃね」





手合いに支障が出たら大変




「ん。じゃあ寝ようぜ」



一緒に寝るのはいつものこと




こうして
何も変わらない時間を過ごして
毎日は過ぎていく











横になったヒカルの顔をみて



「頑張ってね」


つぶやくと
手に暖かいぬくもりが広がった




だけどその手は震えてて

不安だよね
大きな意味を持ったヒカルの戦い

あたしは握り返す












「あかり」


ヒカルに名前を呼ばれて


「何?」


変わらずにヒカルを見つめて







「おまじない、してほしいな」

ヒカル、そんなの信じてたっけ?


だけど
あたしができることはしてあげたい




「何をすればいいの?」




あたしが尋ねるとすぐに、ヒカルは身体を起こして


あたしにそっと覆い被さる




「ヒカル…?」
「じっとしてて」



ヒカルはそっとあたしにキスをおとした











これが
おまじない?












「明日から、一緒に来てくれない?」




突然のヒカルの言葉に驚いて




「怖いんだ。あかりがいてくれなきゃ」



あたしを必要としてくれるんだね

そんなに嬉しいこと
断れるはずない

ヒカルの大切な何かに
どんなカタチでもかかわることができたなら
いつも思ってた








「うん」



あたしを呼んでくれたら

ヒカルさえ良ければ
あたしはどこへでもついていくわ




頑張れの意味を込めて
あたしはヒカルにキスを返した




「最高のエールだ」



そうなればいいな













誰よりもあなたを必要として
何よりもあたしを必要として
重なりあって生きていけたら



あたしの世界
あなたの世界
すべてを壊して一つにして




目の前の出来事につまづいたら
あたしを呼んでね
どこへでも行くわ


ありのままを愛したい


あなたの不安
あたしのものに

独りじゃないから
キミがいて、あたしがいるこの世界



戦うキミの姿に精一杯のエールを送るよ

















******************************************************************************************************:
有閑さまより頂きましたお題『エールを君に』です。
恋人ひかりのお話になりました。
本当は、「頑張れーっ!」って大きな声で進藤さんを応援するあかりちゃんが描きたかったのですが。
おとなしく。気づいたらおとなしくなってました(笑)
どこがエールなのかは微妙なトコロです(滝汗)
えっと、作品を描くにあたって、平原綾香さんの「Jupiter」を元に描いてみました。

「私を呼んだならどこへでも行くわ あなたのその涙 私のものに」

ここが何だかぴったりのように感じて。
あかりちゃんの心情にもそれらしき言葉を使ってしまいました。
別のフレーズも好きなので、別のネタででてくるかもしれません(笑)

進藤さん、ついにここまできました。
このお話のあかりちゃんは、佐為さんのことを知っている設定です。
「もらい泣き」のように、はっきりと聞いたわけではなく。ただ何となく少し知っているような。
その存在があったことだけは知っている・・・みたいな感じです。
進藤さんの弱音。あかりちゃんがいないとダメ。実際、そんなに弱くないと思うんですが。
あかりちゃんにさらけだす進藤さんが描きたかったのでした。
あかりちゃんは、進藤さんのすべてを包みこんでくれます。
弱さも涙もわがままさえも。大好きな人に頼ってもらって、わがままを言ってもらえるなんて
そんな幸せなことはないなー。と姫は思います。


こんなのでよろしかったでしょうか??
よろしければお納めくださいませv
お題提供、どうもありがとうございましたvv








2004.06.21
音羽桜姫 拝






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