あなたの中で
1番嫌いだけど1番好き













意地悪な笑顔














「なー、あかりー」
「何?」
「ダメ?」
「ダーメ」
「どうしても?」
「どうしても。」





さっきからずっとこれの繰り返し
何も進まずに、平行線をたどってる














「いいじゃん、キスくらい」
「ダメなものはダメです」



すねるヒカルを、あたしは冷たい言葉ではねかえす




キスくらいって言うけどね

やっぱり好きな人とのキスは、大切な意味を持つのよ
ヒカル
そこのところをわかってない



まぁ
この碁バカな彼氏さんに
女心を理解してほしいって思うことが
間違いなのかもしれないけど












風邪を引いてしまったから
ヒカルに移しちゃ悪いと思って
会うのもしばらく我慢してた


「もうちょっと良くなるまで…」って


会いたくないって言えば嘘になる
だって会いたかったから


なかなか会える日がないんだもの

せめて
会える時には会いたい
だけど
ヒカルに風邪を引かせるわけにはいかないから

学校みたいに、簡単に休めるような状況じゃない

休めば自分も困るし
何より、相手に迷惑をかける
ヒカルは、そんな仕事をしてる





だから電話がかかって来た時に


「会えない」


って言ったの


そしたら、思うまでもなく


「何で?」



って返事が返ってきた



だから正直に

「風邪気味だから。
ヒカルに移したくないから会えない」


そう言ったのに
ヒカルの返事は








「気にすんなって!今から行くから、おとなしく待ってろよ」



なんて
ほんとに人の話、聞かないんだから

っていうか、おとなしくって何よ?




いつもそう
あたしの都合はお構いなし















それから10分後

ヒカルはほんとにあたしの前に現れた




来るなりあたしの頬にキスをして





「ダメ?」

なんて聞いてくるから

「ダメ」



って言った
それから、一番最初の会話に戻る


















「なー、あかりー」


猫なで声で
必要以上に触れようとする




「風邪が移るからダメだってば」
「俺、あかりの風邪なら移されてもいい」
「そういう問題じゃないでしょ?」
「じゃあどういう問題だよ」
「とにかく。ダメなものはダメです」
「けちー」





けちって何よ、けちって




「あのね、あたしはヒカルのためを思って…」
「俺のこと思ってるなら、させてよ」





あたしがキライな目をする
意地悪な笑顔で
あたしはその目が一番苦手
だけど
好き




そらせなくなるの
ドキドキする















「ダメだよ…」
「そんなにイヤか?」
「イヤじゃないけど…」





イヤじゃない
ヒカルのキスは優しい

だからこんな時はイヤなの









「…わかった」



ヒカルは小さくため息を吐いて

あたしと距離をおく



まさかそんなに落ち込むなんて



そんなに切なそうな顔しないで
ちゃんと治したら、
気がすむまで
あたしもするから




だけど、今はごめんね
これで我慢してね













「ヒカル…」




そっと名前を呼んで
ヒカルに腕を回す




「大好きよ」



ってつぶやいて





キスしたくないわけじゃないよ
今はダメなの
だからせめて
大好きって気持ちだけでも

















「つかまえた!」



ヒカルの顔を見ると

さっきの切なげな顔はどこへやら

ニッと笑う

あたしは手首を掴まれてて









「え?」




何してるの?












「掴まえた」





何で?
あたし、何も悪いことしてないのに




「離して?」
「やだ」


そんな即答しなくても





「せっかく掴まえたのに。離してやんね」






さっき以上に
意地悪そうに笑って











あたしは理解した













「だまされた…!」
「人聞きの悪い」


ほんとのことじゃない


「演技だったの?」
「俺はそんなに器用じゃないって。
あかりが一番わかってるはずだけど?」





何でそんなに意地悪なの!
余計タチ悪いわよ






「イジワル…」
「お前だろ?」





だからその目は嫌いなんだってば



掴まれた手首から、心臓の音が聞こえてしまいそう




あたしは手に力をいれて
少し抵抗する








「そんなに怖がるなって。なんもしないから」





ヒカルの声は優しくて
体中に、ヒカルの温かさが伝わってきた










「何かしてるよ?」
「これだけ。
あかりが嫌がることはしない」





気持ちも伝わってくる
そしたら何だか
どうしようもなく愛しくて
キス
したくなった




あたしをすっぽり包みこんでるヒカル
ちょうど頬が触れ合って


あたしはそこに
軽く唇をあてる

それはもう
充分にキスと呼べるもの





ヒカルも気付いて


「しないんじゃなかったのか?」



なんて、意地悪に言ってくる

ほんと意地悪なんだけど
どうしようもなく好きなの










「したくなっちゃったの!」
「何だそれ」
「仕方ないでしょ?ちょうどいい位置にあったんだもの」
「じゃあリクエストにお答えして」
「一体何のリクエスト?あたし、してないわよ?」
「いいからいいから♪」




すぐに調子に乗って
また意地悪な顔をする
嫌いだって言ってるのに



大好き



どんな笑顔も
あたしはきっと逆らえない









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ガー子さまよりいただきましたお題・『意地悪な笑顔』です。
恋人ひかりなお話になりました。
甘えんぼさんな進藤さん。あかりちゃんもです。
進藤さん、子供っぽく男っぽく。
そのギャップに、あかりちゃんはドキドキするわけですが(は)
キスしたいのは、進藤さんよりもあかりちゃんだったりしてv
会いたいのはあかりちゃんよりも進藤さんだったり。
進藤さん、天然です。天然であかりちゃんを誘ってます(ヤメ)
天然って一番タチ悪いですよねー。
進藤さんの場合、天然なのか確信犯なのか。
確信犯な進藤さんは、別ネタで描いてあります。
今回は天然ということで。

こんなのでよろしかったでしょうか?
少しでもお気に召されると幸いです。
お題提供、どうもありがとうございましたvv









2004.06.22
音羽桜姫 拝






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