あたしがこんなに怒るのは
一体だれのせい?

−−−怒らせてるつもりはナイんだけど













「凶暴女」














怒らせたのは俺
ケンカもいつもどおりのはずだったのに
















「だから、ごめんって」
「そのセリフ、聞き飽きた」





可愛くない返事が返ってくる





一緒に食事する約束をしてたのに
碁に夢中になってた俺は、約束を一時間すっぽかした



塔矢と碁会所で打ってて




「今日は彼女と約束があるんじゃなかったか?」






っていう突っ込みで
俺は約束を思いだし
約束の場所に慌ててかけつけた
















「あかり!ごめん!」



かなり急いで
全力疾走してきたんだけど
案の定





「別に?気にしてないから」



怒ってて




「どうぞ、お好きなだけ碁を打ってらしたら?」



なんて
態度も冷たい












怒るのも当然なんだけど
俺が約束の時間に遅れるのは
はっきりいって、初めてじゃない
情けない話、しょっちゅうだ


碁を打ってると、どうにもこうにも
他のことが頭から抜け落ちるらしい
いいんだか悪いんだか
よくわからない頭だ














その場で何度も謝ったけど、機嫌が直る気配はまったくなく
揚げ句のはてには




「あたし、帰るから」



ときた




俺もあかりのあとについて
うちに帰ってきたわけだけど

あかりは一言もしゃべらないで

余計なことは言わない方がいいと
俺も黙った





帰り道にケンカなんて、よくするけど
我に返った時、恥ずかしいんだよな
だから、うちに帰ってから謝ろうって





それで今にいたる














あかりの機嫌は変わらない
俺はただ、平謝り









「約束したの、何時だっけ?」
「へ?」




今度はどう謝るか考えていた俺は
突然のあかりの質問に、間の抜けた声を出してしまった








「今日、あたしと約束したの、何時?」
「えっと…11時半…かな」
「ヒカルが来たのは?」
「…1時…」





言葉を返すのが重い





「どうせ碁打ってて、あたしのことなんか忘れてたんでしょ?」


返す言葉もないです


だけど

「別に忘れてたわけじゃ…」




言い訳かもしれないけど
どんな手合いでも、あかりのことを忘れたことはなく













「あたしとの約束なんか、ヒカルにとってはどうでもいいんだ!」




こいつ
本気で言ってんのか?




「どう意味だよ?」
「そんなに碁が好きなら、碁盤か碁石と結婚すれば!」



答えになってねぇって



「碁盤となんて、結婚できるわけないだろ!」
「何よー!もう!!」
「何だよ!」
「ヒカルのバカ!」
「はぁ!?
あかりのアホ!」
「〜〜〜っ!」








売り言葉に買い言葉
まるで子供のケンカ




あかりは俺の言葉に、声にならない抗議の声をあげる


俺の顔を、少し涙目でにらんで
近くにあるクッションを俺に投げ付ける





「いてっ!
何なんだよ、わけわかんねぇ」




心底、女ってわかんねぇって思うのは、こんな時



あかりはクッションを投げ続け
しまいには、その手でたたき始める






「わっ!バカ!
痛いって!」




碁石を投げられるよりはマシだけど






「痛いって!〜っ凶暴女!」




ピタっと、あかりの動きはとまり
思わず出てしまった言葉に、俺は口を押さえる


だけどもう遅くて
あかりの機嫌をさらに悪くするには
充分なものだった














「あ、あかり?」


おそるおそる声を掛けるも、軽く流されて


あかりは、ふいっと顔をそむけて
その日一日、話すどころか、顔を合わせようともしなかった




謝ってんのに、そんな態度とられると
何か腹立つ



そんな風に思ってしまうのは、俺がコドモだから




怒って泣く彼女を優しくなだめられるほど
俺はそんな大人じゃない




そんな自分がイヤになる時だってあるさ




泣かせてるのはわかってる
あかりが怒るのも分かる
困らせても、泣かせても
それでも好きなんて
やっぱり俺はわがままなのかもしれない
っていうか、わがままなんだ









あかりに碁バカって言われて
それでも打ってる俺は
言われるままの碁バカ
















今日も、塔矢の碁会所に来て、打ってる


うさばらしにはちょうどいい
俺の、ストレス発散法
















「進藤…今日の碁はひどく荒れてるな」
「そんなことねぇよ」
「ここの一手。いつもの君ならここに打つ」








なんでお前に、そんなことわかるんだよ








「気紛れだってあるだろ」
「彼女と何かあったのか?」












何で調子が悪いと、彼女が出てくるんだよ













「別に…」
「昨日の約束、間に合わなかったんだろう」




痛いところをつかれた





言い当ててきやがる
ってか、こいつ知ってんだった












「塔矢には関係ねぇよ」
「僕は、君の心配はしてない
彼女が気のどくなだけさ」
「何だよ」
「世の中、男なんかいくらでもいるのに
藤崎さんは、困らないくらいだろうね」
「うるせぇよ」








余計なお世話だって
わかってる
わかってるさ
だけど俺には、どっちも大切なんだ
選ぶことなんて出来ない











「悪いと思ってるなら、さっさと謝って仲直りするんだな」
「わかってるよ」
「あ。藤崎さん」
「えっ!って、あーっ!」
「まだまだだね、君も」





くっそー
まさか、塔矢にからかわれる日がくるなんて





面白くない









あかり
まだ期限悪いのかな



謝らないとな
昨日のことちゃんと
















俺は浮かない気分でうちへ帰ると
いつもと違う空間がそこにあった











「ただいまー」
「お帰りなさいませ」




あかりが頭をさげる

俺は入る部屋を間違えたかと
一度玄関を閉めて、もう一度開けた


さっきと何も変わってない





顔はあかりだ
でも何か違う
エプロンなんかいつもしてないし
しゃべり方が違う




どうしたんだ?
何が起こってるのかわからない
















「ご飯になさいますか?お風呂にされますか?」
「あ、じゃあ風呂に…」
「わかりました」






にこりと笑う
あかりの言葉使いに驚き
どもってしまった










何だってんだ?



俺は湯船に浸かりながら、あかりの言動を思いだし



いつもと違う違和感に
少しの憤りを感じた















「ご飯、できてますよ」





あかりがにこやかに言う
やっぱあれかな
昨日のが原因なのかな



どうにか元に戻りたくて
ちゃんと謝らなきゃ
悪いのは俺なんだから
許してもらえなくても
たとえ
嫌われたとしても















「あかり、ちょっと座って」
「…はい?」





あかりは俺の前に座る


深呼吸をして









「何か、あったのか?」
「え?」
「昨日のことが原因なら、謝るから」
「何がですか?」
「だから…その…凶暴女って言ったこと…」





あかりの方がびくっと震えて










「…」
「…」






しばらくの沈黙が続いて




あかりの目から、涙がこぼれ始める








「だって、ヒカル…あたしのこと…」






あかりの泣き方は、嗚咽を含むものに変わって





「俺が言ったから?」



聞くと、あかりはうなづいた





俺が悪いのに
いつも困らせてばかりだ



だけど
これだけは言える
伝われ















「ごめんな
でも俺、どんなあかりも好きだから」





たとえ凶暴でも
それがあかりなら俺は





だから









「戻って」





いつものあかりに
















「…うん…」





あかりはうなづいて
俺はキスで涙をぬぐって





またいつもどおりに戻る















それから2日後
また俺は約束を遅れて








「いってー!」
「もう知らない!」





これが俺たちだ


どんなあかりも、あかりはあかり
どんな俺でも、俺は俺



それでいいんだ













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ガー子さまよりいただきましたお題『凶暴女』です。
リクエストで「凶暴女」って、心にないことを言ってしまう進藤さん・・・とのことだったので
吐かせてみました。あんないい子に向かって『凶暴女』って、ありえないですけど。
あかりちゃん、進藤さんに言われたことで「おとなしくしてみよう」と思ったらしいです(笑)
ちなみにつけてるエプロンは、白のレース付きです。進藤さんドキドキ///(ヤメ)
こんな状態じゃなければ、えらいことになっていたのではないかと、はい。
問題発言は止めましょう。あくまで姫の妄想です(笑)
いつもは和谷さんに遊ばれる進藤さんですが、今日は塔矢さんに遊ばせてみました。
ちょっとアキイチ風味も入れようかと思ったのですが、あくまで「ひかり」祭りなので、止めておきました。
「ひかり」祭りなのもどうか、微妙なんですけど(滝汗)
進藤さんは、みんなに弱みを握られちゃってますから。
ちゃんとした対局ではやらないですけど、ちょっとしたお遊び対局でなら。
「あかりちゃん!」「えっ?」とか言われて、負けてるのではないでしょうか。弱いな、進藤さん(笑)


こんなのでよろしかったでしょうか??
少しでもお気に召されると幸いです。
お題提供、どうもありがとうございましたvv







2004.06.24
音羽桜姫 拝






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