あなたといられる今がきっと















色褪せない瞬間
















夏休みになった


あたしは、高校生活で初めての夏休み

新しい友達もできて
毎日充実してる



ただ一つ
今までいた人がそばにいないこと以外は
何ら変わらない夏休みだ









今まで、長いお休みの間だけは会えないって思って、我慢できた
だけど今は違う
仲の良かった友達でさえ
約束しなきゃ会えない
それだけ、時間が流れてるってこと

いつでも会えたあの日は、いつか想い出に変わっていくのかな
ちょっと寂しいけど








「ヒカル、頑張ってるんだよね」


最新の週刊碁に目をやる

今回は特集でヒカルを組んでる
最近、若手プロ棋士たちを、一人づつ取り沙汰してる



ヒカルがプロになってから
あたしはこれの愛読者
そばにいなくても
ヒカルのことがわかるから
いつだってヒカルを近くに思えるから
こんな雑誌に載ってるあたり
ちょっと遠いような気もするんだけど
ヒカルとあたしが幼なじみなのは
何があっても変わらないと思うから


少しだけ違う関係になりたいなんて
思わなくはない…けど、応援できる今でも、あたしは十分に幸せ

















「また勝ってるー」
これで4連勝
最近、絶好調みたい

だからあたしも頑張らなきゃ
おいていかれないように



ヒカルはヒカル
あたしはあたし
違う場所にいるけど
同じ立場でいたいから
あたしは頑張るの
暑い夏になんか、負けないんだから





とか何とか言って、しっかりクーラーばんばんにかけてたりして







「宿題やんなきゃ」



学生は大変だ
これさえなきゃ、楽しいお休みなのに


って何だかあたし
ヒカルの口癖移ってる?


思わず苦笑しちゃった




宿題を広げて
取りあえず、1教科だけでも終わらせておこう




得意分野に手を伸ばして
ちゃっちゃと片付け始める



終わる頃にはもう
太陽の位置は変わってて


















「五時か…」


それでもまだ、見える景色は明るい














「あかりーっ!悪いけど、おつかい行ってきてー」


お母さんの声が下から聞こえて



「わかったー!」


答えながら
あたしは部屋を出た


















「何を買ってくればいいの?」
「これ。書いておいたから」
「わかった。
ジュース買ってきてもいい?」
「いいわよ。悪いけどよろしくね」
「うん。じゃあ行ってきまーす」





















最近のあたしは
暑くても寒くても、進んでおつかいに行く
中にいるより
その方がヒカルに会える確率があるから
チャンスは待っててもこないもの
会えないなら、あえるような機会を作るの




だけど
いつもうまくいかないのよね
忙しいみたいだから、しょうがないのかもしれないけど
それでも期待してでかけるの

もしかしてって思ってないと、来るチャンスも逃げちゃうと思うから




















結局、スーパーに行くまでには会えなくて



帰りに期待しよう

ちょっと遠回りだけど、駅からヒカルのうちまでにあるコンビニに寄って
あたしがお気に入りのジュースは、そこしかないもの
これも立派なチャンス
またヒカルのうちの前通って






もちろん
こんなことしなくたって会えるのが理想だけど
そんなこと言ってられない












卒業してから三か月
ヒカルに会えたのは2回
おみやげを持って行った時と
電車の中で
しかも、人ゴミの中
遠くから見るしか出来なかった


それが片想い




それでもいいんだ









だってあたしは
ヒカルのことが好きだから




















重い荷物を抱えて
遠回りして家路を急ぐ






いるかな







いないかな









何だかどきどきして
こんな風に想える瞬間が
あたしは結構好き


あまりに重くて
一息付くのに荷物を下ろした
もう一度気合いを入れて顔をあげたら




いたの
ヒカルが








見慣れた金髪の前髪に
さらさら揺れる黒髪



目を疑った
届いたのかな
あたしの願い





見失わないように
走る













「ヒカル!」




大声で呼び止めたら
とまって振り返ってくれた





「あかり!」



何だか懐かしい声に嬉しくなって









「どこか行ってたの?」
「友達んち。研究会っていうか、検討会?」
「そうなんだ」
「もうすぐリーグ戦の予選だし。」




うん
知ってる



何だか
またちょっと見ないうちに
大人になってくヒカルに
あたしの心臓が鼓動を刻んでいく






「あかりは夏休み?」
「うん。」
「いいなぁ、学生は」
「あはは。そうでもないよ?
宿題多いし。」




『部活もやってるし』




って付け足した



あの日自分に誓ったこと
ちゃんと守ってるよ







「部活って・・・囲碁部?」
「うん。部員少ないけどね」
「ははっ」




笑い事じゃないよ
大会出れるか微妙なんだから







「でも、まぁ。頑張れ」



あの時と同じ言葉
あたしに勇気をくれる











「持ってやるよ」




突然腕が軽くなって


ヒカルが一つ
袋を持ってくれた








「ありがと」





変わらないね
さりげない優しさが嬉しい

ヒカルと会えたことだけでも嬉しいのに
今日は嬉しいことがいっぱいだ










顔を上げたらね
真っ赤な夕焼け空





「ヒカル、見て見て!」


あたしはヒカルの短い袖を引っ張る





「すげー」
「キレイだねー」






思わず、二人とも足を止めた





おかしいな



少し前まではこんな夕日
当たり前に二人で見れたのに
学校の帰り道


泥だらけになって遊んだりした




あたしたちが一緒に帰れた時間はいつも
キレイな夕焼け空が広がってたね









「明日もいい天気だな」
「そうだね」




何だか涙が出そうになった
悲しいわけじゃないの
切ないわけじゃないの

でも何となく


想い出がつまってる気がした




あの夕焼け空は
いつ見ても変わらないの
色褪せないまま
あたしたち二人の間を流れるの



この瞬間が寂しくて
でも嬉しくて

沈まないで欲しいって思った













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有閑さまよりいただきましたお題・『色褪せない瞬間』です。
どこが?思わずつっこみいれたくなりました(^^;)
えと、つまりは、二人で見る夕焼け空が色褪せない瞬間です。
分かりにくくてすみません(滝汗)
片想いあかりちゃん、ちょっと切なくしてみました。
ほのぼの恋人ひかりのするつもりだったのにあれれ??(汗)
恋人ひかりもいいですが、こんな切ない感じも好きです。
でもやっぱり幸せになってもらいたいので。頑張れ、あかりちゃん。

こんなのでよろしかったでしょうか?
少しでもお気に召されると幸いです。
お題提供、どうもありがとうございましたvv








2004.06.27
音羽桜姫 拝






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