純粋に好きだと思えるのは
きっとあなただけ













PURE












「ヒカルのこと、ずっと好きだったの」
「うん、俺も」




幼なじみという関係から
彼氏彼女の関係になって
1週間

一度も会っていないヒカルのことを思い浮かべて、
あかりは携帯を見つめた





(電話くらい、くれてもいいのに…)



言葉にできないわがままを、心の中でそっと


遠回りをして
せっかく特別な存在になれた


だから大切にしたくて


















「あかり、ため息なんかついて、どうしたの?」





ヒカルの事で、ずっと相談に乗ってくれていた友人が話しかけてきた



「別に、何でもないよ」




これ以上、迷惑はかけたくないと、ごまかそうとしたが





「何でもないのに、ため息なんか出ないでしょ?」


図星をつかれて
あかりは返す言葉がない


そんなあかりを見て友人は苦笑しながら









「進藤くんと、何かあったの?」




あかりが悩む原因はそれしかないと、聞いてみる


「ううん」

あかりは首を振った


「じゃあ、何で?」





それでも尋ねる友人に
「迷惑かけついでだ」と、ため息の理由を話し始めた




















「電話がね、かかってこないの」
「え?」
「告白してから1週間、ヒカルから一回も電話がないの」
「それで?」
「ヒカル、あたしのことキライになっちゃったのかな…」







どんな悩みかと思えば






そんなことで悩んでいるあかりが、何となく可愛くて










「あかりがかければいいじゃない」



適格なアドバイス
あかりはそれを思い付かなかったのか、ぽけっとした顔で友人を見た







「告白する勇気があるんだもん。それくらいできるんじゃない?」





意地悪に笑って


あかりはぽんと手を叩き
携帯電話のメモリーを検索し始めた
そして、目的の名前を見つけたのだろう
じっとディスプレイを見つめた
続いて真っ赤になる










「ダメ」
「何で?」
「恥ずかしいよ…」











『今更だろ』

と突っ込みたくなるのだが抑えて









「進藤くんも、そんな理由なんじゃないの?」
「そうかなぁ…」
「そうだよ」








あかりはもう一度携帯を見て
かかってこない電話に
かけられない自分に
さっきよりも深いため息をついた
























一方ヒカルも棋院で、携帯を片手にため息をついていた



電話をかけたい
声が聞きたい
思っても、行動に移せない


ずっと片思いだと思ってて
通じた時は本当に嬉しくて
今だって、会いに行けるものなら行きたい
が、恥ずかしくて
なかなか電話がかけられない



あかりとうまくいったことは
次の日、応援してくれた友人たちに話した


電話をかけるのが恥ずかしいと言ったら、きっかけをくれた








「映画のチケット、とっといてやったから、誘え」









そんなのいきなりだとは思うのだが
友人の気持ちが迷惑なわけではなく
まして、きっかけを見つけてくれたことには感謝をしたいくらいなのだか



突然かけて突然誘うなんて、あかりが困ったりしないか心配で
電話をかけれなかった



あかりも待っているのだから、悩む必要などどこにもないのだが
ヒカルは知らない
















「はぁ…」


もう一度ため息をつくと





「まだかけてねぇのか?」




後ろから声をかけられた











「うるさいなー」





余計なお世話だと言わんばかりに
めんどくさそうに返事を返す





















「映画に誘うだけなのに、何緊張してんだよ」




友人の言葉に
(人事かよ…)
と、また深くため息








「何もねぇのにかけるのって、勇気いるけど。
用事があるだんだぜ?理由あるじゃん」







それはそうなのだが…











「それって、デートに誘うって事だろ?」
「まぁ、簡単に言えば」
「…誘い方しらねぇもん」




友人は真っ赤になるヒカルをみて








「軽く誘えばいいんだよ。あんま難しく考えんな」





肩をぽんと叩く












と言われても
友達以上恋人未満の関係を長く続けてきて
ちょっと違う二人になったことに
ちょっとしたとまどいを覚えてて




どうしたらいいかわからない
それでも声が聞きたくて
会いたくて仕方なくて



ヒカルは携帯を握りしめた











「待ってると思うぜ、きっと」












励まされて
ヒカルは、ディスプレイにあかりの文字を映し出す




心臓の高鳴りが、電話を通じて聞こえてくる
電話をかけるだけなのに
こんなにもドキドキするなんて
















3コールくらいしたあとに


あかりの声が聞こえた












「もしもし?」




それだけで、さらに音は大きくなって













「あのさ。」
「うん」
「映画のチケットがあるだけど、行かない?」



張り裂けそうなくらいに、心臓は高鳴りを刻み


ヒカルは、あかりからの返事を
息を殺して待った





返ってきたのは
自分が考えていたよりも明るいあかりの声

















「いつ?」
「え?」
「いつ見に行くの?」
「え、えっと…来週…かな」
「わかった。あけとくね」
「ああ」





たったこれだけの
約束の電話







伝えるだけでも、勇気がこんなにもいるなんて
話をするのに
こんなにも勇気がいるなんて


それは特別になった証拠なのかもしれない


こんな当たり前に出来た事が
意識を変えるだけでできなくなるなんて









簡単なのに









何だかおかしくなってきて
ヒカルは思わず笑ってしまいそうになった




「ヒカル」
「何?」
「誘ってくれてありがとう。嬉しかったよ」
「ああ」
「待ってたんだ、ヒカルからかかってくるの。
自分でかければいいのにね」





あかりは笑い出す












「今度は、あたしからかけるから」
「うん」





次の約束をして








「声が聞けてよかった」
「うん」






耳に届くお互いの声が、なんだかいつもと違うように思えて


こんなにもドキドキするなんて





もう少しメロディに揺られていたいけど






「じゃあまたね」
「ああ」








名残惜しげに電話を切った






















「あたし、ちゃんと話できた?
声、うわずってなかった??」



電話を切るなり、慌てて尋ねるあかり

「ちゃんと大丈夫だったよ」
「よかったー」



ほっとして
携帯電話を大事そうに抱えた



















「ちゃんとできたじゃん」
「すっげぇ緊張したけどな。
俺、ちゃんと話せてた?」
「ばっちり」



こっちもオーケーサインをもらって
















「進藤、お前」


「あかり、あなた」





『何?』













『ピュア』














「だよなぁ」
「だよねぇ」





似た者同士とはこのこと
見えないけれどつながっている









『そうかな?』








ただ純粋に
あなただけ思っていたい

切ないくらいの胸の証しは
あなたにだけ




これからも続いていく

僕らのPUREな物語















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まさか、こんなにお題をもらえると思ってなくて
お題提供サイトさまをめぐってお借りしてきましたお題です。
2つ目です。10のお題なので、10個あります(当たり前)
ちょっと日にち的に間に合わないので、2つ目までしかUPできませんが。
借りてきて使っているお題なので、作品ページにでも残りはUPします。

付き合い初めの頃の2人です。
何だろう。何かが変わって、自分の意識も変わっています。
普通にできたら苦労はしないのに、それが出来ない
だって『特別』だから。
幼なじみ期間が長かっただけに、付き合うことに慣れるまでに、ちょっと時間がかかったのではないでしょうか。
二人とも純粋を目指してみました。少女漫画万歳!!です。









2004.06.28
音羽桜姫 拝





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