突然の感情
いつもと違ったら













とまどい













「ヒカル!」








後ろから不意に名前を呼ばれ
聞き慣れたその声に振り返る



声の主はあかり
いつもと変わらない調子で、俺のあとをついてくる


昔からそうだ
気付けばいつも後ろにいた















「今帰り?」






ようやく俺に追いついたあかりは
何年も見慣れた笑顔で話しかける












中学を卒業して
一か月が経った
ずっと一緒だった俺たちが別々の道を歩き始めて


振り返ればいつもそばにいたあかり
当たり前のように俺についてきたあかり


それが当たり前じゃなくなって
俺は初めてとまどいを覚えた




あかりがいてくれる
それがどれだけ、安心して前に進めていたか
気付いてしまったから


この気持ちが何なのか
まだわからない










いつだって
気付かされるのはいつも突然























「あのね!ヒカルのおかげで、一人部員が増えたんだよ!」




そんな楽しそうに笑うなって
人の気も考えろよな
なんて




そんなのは俺の理屈
あかりの知ったことじゃない




いつからかな
あかりと会うことにとまどうようになったのは



会う度に少しづつ変わって見えるあかりにとまどって
そんなあかりを、今までと違う感情を抱きながら見てる
俺自身にとまどって












「ねぇ、聞いてる?ヒカル」



てんでうわの空
返事も、

「あー…」
とか

「うん」
とか、片言ですます俺

話を聞いてないと思われても不思議ではなく







ちゃんと聞いてるよ
聞いてるさ


だけど、それどころじゃないんだ


自分の中にある感情にとまどう






そういえばあかり
何か今日はいつもと違う
ふわりといいにおいをばらまいて


鼻をくすぐるたびに
心拍数があがって
顔がほてるような






今だけじゃない
あかりといると
何だかわからない感情が俺を満たすんだ
もうたぶん
ずっと前から


屈託なく笑うあかりを「可愛い」と思うなんて



あかりは幼なじみ
それなのに、それ以上を望む俺がいることに
とまどう










「ねぇヒカル?気分でも悪いの?」



あかりが不思議そうに顔をのぞきこんで触れようとするその手をふりはらった



自分でもわからない
そんな行動を起こした自分にただ戸惑って
触れられたら壊してしまう
そんな気がして


















「俺、急いでるから」



そう言って
あっけにとられているあかりに背を向けて
俺は急いだ
どこか
あかりを気にしない場所まで




久しぶりに会ったあかりは
何だかいつもと違ってて
一緒にいると
それだけでどうにかなりそうな気がしたんだ


どうして俺は、こんなにも
あかりを意識してるんだろう




気付いた自分にとまどって




人を好きになるのはとまどうことばかり
いつも突然だから


気付かないフリをしていればいいのかもしれない

でも出来なかった



わきあがる感情にとまどって


俺はただ
頭を抱えるしかなかった




それから後日
俺がとまどいの意味を理解して
またとまどったのは
全部あかりのせい


だから
責任とれよ?















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まさか、こんなにお題をもらえると思ってなくて
お題提供サイトさまをめぐってお借りしてきましたお題です。
2つ目です。10のお題なので、10個あります(当たり前)
日にちの都合で、次の2つ目までしか企画としてはUPできませんが。
残りは作品ページにUPしていきますので。

「進藤さん。初めて恋をしる」がテーマです(笑)
あかりちゃんを可愛いと思ってしまう自分にとまどい
好きだと思ってしまった自分にとまどう。
とまどってばっかり進藤さん。いつにもましてヘタレです(笑)
お題がお題だけに、『とまどう』という言葉がたくさんでてきます。
微妙な幼なじみの距離感が好きです。
最後『責任とれ』とか言ってますが、言わないと伝わりません(笑)
頑張れ、進藤さん。










2004.06.25
音羽桜姫 拝







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