他の異性(ヒト)となんて
そんなの考えられない
考えたくもない
わがままだって言われても










IN YOU











「それでは、配役を発表しまーす」




クラス委員の声が、教室に響く

紅葉が綺麗に色付く季節
あかりの学校では、文化祭という行事が近付いていた


クラスごとで出し物をするのが、文化祭行事のメインだったりする
あかりたちのクラスは、演劇をやることになった
台本はオリジナル
こうして、配役を投票式で決めることになった



話の内容は
オリジナルといっても、童話や、昔話などを取り入れた
王子と姫のラブストーリー











「王子役は、桜井くん」




桜井は、クラスでも人気のある、結構な美男子
王子に選ばれたのは、当然
皆が納得する


相手役の姫をやるのは誰か
女子は全員、期待に胸を踊らせた









「姫役は藤崎さん」

その声に、教室中が湧き上がった








「ちょっとー…」


あかりは、小さい声で、反抗する







「あの、あたし、囲碁部で忙しいから、前もって断ってあるはずだけど…」



部活を理由に、あかりは前から、演劇には裏方として参加したいと言っておいたのだが

文化祭の日は、囲碁部として参加する予定だったから









「投票だものあかり、ごめん。我慢して?」



そう言われては

「ダメ」

とは言えず





「わかった…」

しぶしぶオーケーサインを出した












「頑張ろうね、藤崎さん」



桜井に肩を叩かれ、励ましを受け
「うん…」

あかりは力なく返事を返した

















その日の部活は休みで、あかりはヒカルに指導碁を打ってもらう約束をしていた








「入れよ」





ヒカルに促され、部屋の中へと足を踏み入れる
床には週刊碁が散らかり放題



あかりは座る場所を確保するために
ヒカルの部屋を少し片付けた











「開けて」




扉の向こうからヒカルの声がして
あかりはドアノブを回した
ヒカルはおぼんを持っていて
下でお茶でも入れて来たのだろう












「さんきゅ」


といいながら、今度は起用に足で扉を閉めた


















「勉強してたの?」



ヒカルが碁盤の前に座り
あかりも続いて座る






「ああ、もうすぐ大手合いがあるから」



ヒカルはそういいながら、自分で淹れてきたお茶を飲んだ
あかりの方にも差し出し





「ありがと」


あかりもお茶を飲んだ



















「じゃあ、打つか」




ヒカルの言葉で、指導碁が始まる









「置石置いてもいい?」
「好きなだけ置けよ」



ヒカルが意地悪そうに笑う
あかりは悔しくて、いつもより少なめに置石を置いた





「それだけ?」
「これだけ!」






『お願いします』





二人の声が重なり、碁石の音が響く


















「ありません・・・」
30分ほど打ったあと、あかりが折れた
「ありがとうございました」






ヒカルの言葉で終局















「うん、前より強くなったじゃん」


ヒカルに褒められ


「ほんと?」





あかりが嬉しそうな顔をする





「あかり、そんな可愛い顔しないでくれる?」
「可愛くないよ?」
「可愛いよ」




正直に
あまり可愛い態度をとられると、自分の中で抑えがきかなくなるから
大事にしたいから、正直に



ヒカルの言葉に、あかりは頬を真っ赤にした
そのしぐさもまた、ヒカルには可愛くて
頬にキスをした
あかりは真っ赤になり、ヒカルは小さく微笑む








「検討しよっか」











ヒカルが一手ずつ並べて
検討が始まる








「ここをこっちに打たれると、俺も結構厳しかったんだけど」
「あ、そっか!思いつかなかった」









検討はそのまま続き、気がつけば辺りは暗くなっていた







あかりは帰る準備を始め、ヒカル碁盤を片付ける

















下におりていくと、母が夕飯の支度をしていて







「お邪魔しました」

あかりはその姿に話かけた





「あら、ご飯食べて行かないの?」




嬉しい言葉をかけてもらうが







「今日は遅くなるって言ってないんです」
「そう、残念。じゃあまたね」
「はい」




二人で話をしていると


「あかりーっ」



玄関からヒカルの声が聞こえて











「じゃあおばさん、失礼します!」




ぺこりと頭を下げて





ヒカルの母そんなあかりを見て

「ほんといい子ね」

と小さくつぶやいた
そして心の中で








(早くお嫁に来てくれないかしらv)





と、小さな希望を抱いているのだった






















外は、太陽が沈んで暗闇が現れ始めていた



「あ、そうだ!」



さっきまでどうでもいいことを話していたのだが
あかりが思い出したように話始めた





「うちのクラスねー、学園祭で劇やるんだー」
「へー、どんなの?」
「何かね、よくわかんないけど恋愛ものらしいよ?」
「出るんだ?」
「聞いて驚け!ヒロインなんだよ?」






自慢げにあかりが話す
そして



「部活で忙しいから、裏方に回してって頼んだんだけど」




そう苦笑した

ヒカルも暇なとき、高校まで指導碁に行っていた
部員を集めるために奔走するあかりの姿を見かけたことも何度か









「まぁ、せっかく何だし、頑張れよ!」




ヒカルに応援されて




「学園祭、来月の第4日曜日なんだ。
ヒカル、見に来てくれる?」



あかりのおねだりを、ヒカルが断るはずもなく



「ヒロインなんだろ?見に行ってやるよ」






ヒカルの激励にあかりは嬉しそうな顔をして



「ヒカルが見に来てくれるなら、あたし頑張るよ!」


小さくガッツポーズ








「ありがと、ここでいいよ」


あと1分も歩けば自分のうち
忙しいだろうから、うちまでは











「ん。じゃあ、またな」
「うん。またね」





あかりの額にキスを












ヒカルの背中を見送って
あかりはうちへと入る
何だかちょっと幸せで

あかりは不思議とやる気が出てきた







次の日の学校も何だか楽しくなってくる





「おはよ」
「おはよー!」
「あかり、今日何だか楽しそうだね」
「そう?」


嬉しい態度というのは、自然に表に出てしまうもの





「機嫌よくてよかったー!」
「何で?」
「劇の台本、出来上がったからさ」






ヒカルが見に来てくれる学園祭の









「見せてー」





どんなのだろうと友達から台本を受け取る


ぺらぺらと目を通しながら、台本を読んでいく
あかりは一瞬凍りついた









「このキスシーンって、何?」
「そのまんまよ」
「聞いてないよ!」
「言ってないもん」
「〜〜〜〜っ」
「どうせフリなんだからさ
そんなに深く考えないでよ」




友達は軽く言うけど
ヒカルが見にきてくれるのに
そんなとこ見られるのがイヤで
約束したのに
自分から誘ったのに
今更・・・



だけどやっぱり見られるのはイヤで

















「あかり!」

学校帰りに
タイミング悪く
こういう時に出くわしてしまう





「昨日ぶり」
「うん・・・」
「どうした?元気なさそうじゃん?」
「そんなことないけど」
「そうか?
そうだ!昨日言ってた劇だけどさ、どんなの?」
「え?」





ロマンスもので、しかもキスシーンがあるなんて
ヒカルには言えない












「ヒカル、やっぱりこないで」
「は?」
「来ちゃダメ!」
「はっ?ちょ・・・っあかり!?」
「来ちゃダメだからね!!」









あかりはヒカルに向かってそう言い残し
走り出す













「何だよ、あかりのヤツ・・・
来るなって言われると、余計行きたくなるっつーの」























「やっぱりやらなきゃダメ?」
「フリなんだから、大丈夫よ!」





友達にフォローされ、翌日から練習が始まった




部活と練習を両立させ
なるべくヒカルには会わないようにして

















迎えた当日











ヒカルはちゃんと、文化祭に来ていた





(結構外からも来てるんだ)




本当なら、あかりと回るはずだったのだが




『こないで』





と言われてしまったので、お忍び


パンフレットを見ながら、学校内を回る




(あかりの劇は何時から・・・2時からか・・・)




それまで時間でもつぶそうと、近くの教室の喫茶室に入る







(後で囲碁部でものぞきに行くかな)










その頃あかりは、劇の最終確認を












「絶対フリでしかやらないからね!」
「大丈夫大丈夫!」
「頑張ろうね。藤崎さん」
「うん・・・」




それでも気分は晴れない







(ヒカル・・・来てないよね?)




来てたらどうしよう

そんな不安もよぎるのだが













「ほら、あかり」


友達に呼ばれて、あかりは準備を始めた






















ヒカルは囲碁部をのぞきに



「進藤プロだー」



あかりの高校には、たまに指導碁に来ていたため
顔は覚えられている







「一局打って下さいよー」
「おー!」







結構乗り気である



碁に熱中しているうちに、時刻は2時5分前










「いけね!あかりんとこ行かなきゃ!」
「ありがとうございました」
「ありがとうございました!」







ヒカルは急いで片付けて
体育館へと向かった




そこはすでにすごい人で






「あかり、緊張してとちんないといいけど・・・」




苦笑する










ちょうどいい一人分の席を見つけて
腰をかける






隣には、あかりと同じ制服を着た女生徒が座っていて









「このクラスの劇、キスシーンあるんだって!」
「さすがにフリじゃない?」





ひそひそ声を潜めてはいるようだが
ヒカルにはしっかり聞こえていて







(だからあかりのヤツ、来るなって言ったのか・・・)






少しだけ納得






(キスシーンって・・・まさか本当にするんじゃ・・・?)




考えていたら、余計な事まで頭をよぎって
何だかどんどん、イライラするような感覚がヒカルを襲う



















『ただ今から〜』





放送がかかり
あかり主演(?)の劇が始まった


内容は、敵国の王子と姫が恋に落ちるラブストーリー


ヒカルがもっとも苦手としている部類のもので






あかりと映画を見に行っても、すぐに寝てしまい、怒られる









「ふぁ・・・」



眠くなるのを頑張って、小さくあくびを一つ




(寝みぃ・・・)








キスシーンのことを忘れたかのように
ヒカルは眠りそうになる















舞台裏では




「キスシーンって、ホントにフリだよね?」
「当たり前でしょ?」




いよいよのシーンを迎えようとしているあかりが
友人に最終確認をする







「別にフリじゃなくてもも、相手が桜井くんならいいじゃない」
「あたし、付き合ってる人いるんだけど。」



ヒカルと以外は、触れるのもイヤだ
あかりは思う





(ヒカル、来てないよね・・・)






袖から確認しようとするが、うまく見れない












「ほら、出番だよ!」


友人に軽く背中を押され、あかりは表へと向かった





劇は最終章を迎えようとしていて









「やめてください!お願い!やめて!!」
「姫・・・」











あかりの声が聞こえて、ヒカルは起きる





(もう終わりなのかな?)




中盤、まったく覚えがなく









ふと上を見ると、あかりが立っている





(やっと出てきたのか)





「いっそ結ばれないのなら、せめてあなたの唇を私に・・・」








(オイオイ・・・)





セリフとともに、あかりは目を閉じる

唇に温かいものを感じて













(あいつ・・・っ!)


ヒカルは思わず席を立ちそうになって





客席からは、女生徒の嬌声が聞こえてくる









「桜井・・・くん?」





あかりはどうしていいかわからず






劇は終幕を迎えた



あかりは、自分がどうやっ舞台袖に来たのか覚えてない










「あかり、お疲れ!」





友人の激励も上の空で
あかりはすばやく制服に着替え
中庭へと









(フリだって言ってたのに・・・)







思いもかけない出来事に、あかりは涙が出そうになって


ヒカル以外はイヤだと心に決めていたのに
まさか、あんなカタチですることになるとは思わなくて









ヒカルも劇が終わった後、あかりを追いかけてきた




「あか・・・」
「藤崎さん」





声をかけようとした瞬間
他の声が聞こえて








その場から出るのを躊躇する











「桜井くん・・・」
「こんなとこでどうしたの?
みんな待ってるよ」
「・・・フリだって・・・」
「ああ、気にしてるの、ごめん」










桜井の態度に、あかりは涙をこらえて





「桜井くんは、何とも思ってないの?」
「ああ、僕は別に。
藤崎さんのこと好きだし。」
「え?」
「あかりちゃんって、呼んでいい?」










桜井があかりの肩に触れようとした時





「あかりに触るな!」








見るに見かねたヒカルが、桜井の腕を止めた




「何、あんた」
「ヒカル・・・」






顔はいつもの穏やかな顔ではなくて











「触るなって、言ってんだけど」



言葉だけで凄みがある


桜井はぐっと手のひらを握りしめて







「あんたにそんな権利ないと思うけど」
「あかりは、俺と付き合ってんだ。
ついでに!あかりって呼んでいいのは、俺だけなんだよ!」



握っていた桜井の腕を、下に振りはらい
何も言わせないような威圧感を与える










「・・・っ」



桜井は言葉を飲み込んで
教室へと戻って行った










「来ないでって言ったのに」
「そう言われると、来たくなるんだよ」
「何それ」



くすくすと笑って


「でも、ありがとう」
「別に。なんもしてないし」







顔を見合わせて









「あかり」


先ほどとは違い、優しい声色で話しかける





「?」






首をかしげて、ヒカルを見つめる

劇のときとは違う、温かくて優しい感触が唇を支配した









「消毒」




意地悪そうに笑って
もう一度キスを






あなたの一部になれたら
あたしにとって幸せなことはないの


キミの一部になれたら
大切にするよ



だけどそれじゃ、お互いを感じあえない
それは寂しいから
別の身体で一つになって




あなたじゃなきゃダメ
キミじゃなくちゃダメ
ワガママだって言われても













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キリバン2500を踏んでくださった、森永様に捧げます。
大変遅くなってしまって、申し訳ありませんでした(滝汗)
遅くなりましたが、献上させていただきます。

リクエストが、「あかりちゃんヒロイン→進藤さんヤキモチ」というものでして。
ので、あかりちゃんの相手役に、オリキャラを出してしまいましたが、よろしかったですか??
話は、突っ込みどころ満載なのですが(滝汗)
多くは語りません(笑)
とりあえず、コレでUPしますが、もうちょっと見やすいように、そのうち変えます。
そしたら、メールで送らさせていただきますvv

少しでもお気に召されると幸いです。
キリバン&リクエスト、どうもありがとうございましたvv
これからもどうぞ、よろしくお願いいたします(ぺこり





2004.06.14
音羽桜姫 拝













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