このままで良いって思ってた
伝わらなくても






幼なじみの恋愛事情







「進藤!今日俺んちこねぇ?」


対局を終えて帰ろうとした俺に、和谷が話しかけてきた




「ワリ。今日用事あるんだ」
「あかりちゃんとデートか?」
「違うよ」



俺の返事に和谷は
「なんでぇ」
と、つまらなさそうな声をだす
何だよ
あかりとデートじゃないとダメなのかよ?



ずっと好きだった
小さい頃から
泣き虫で強がりな幼なじみのことが


最近、会ってねぇな
相変わらずなんだろうか



ここのところ
ちょっと時間ができれば、思い出してしまう

きっと
当たり前が当たり前じゃなくなったから

中学を卒業して、俺は碁一本の生活を送ってる
あかりは、普通に高校に通ってて
生活環境の違う二人だから
会えないのは当然といえば当然なのかもしれない



「告白しないのか?」
「何で?」
「何でって…」
「いいんだよ、このままで」


自覚したのは、いつのことだったろう

声くらい聞けたら
会いたいって言えたら

そんなこと考えたりもするけど
幼なじみとしていられるだけでも
よしとしないといけないのかも




だって、名前で呼び合えるんだぜ?
普通ならできねぇよ
それは幼なじみだから許されること




「このままなら、一緒にいられる」
「ふーん…そんなもんなのか」


「単純じゃないんだな」


和谷の言葉に、俺は苦笑した

恋愛してる人は
俺だけじゃなくて、きっとみんな同じ
幼なじみだから
そんな簡単じゃない
理屈でもない

好きだと思ってしまったら


「でもあかりちゃんは、お前のこと好きだろ?」
「は?」



何言ってんだ?


「やっぱ気付いてなかったんだ?」


和谷が苦笑する

あかりが俺を好き?そんなこと…



「嘘だ!」


思わず口をついて出た言葉がこれ

ありえない
あかりが俺を好きなんて



「嘘じゃねぇって!
見てればバレバレ」
「見んなよ!」
「話ずれてるって」


何でそばにいる俺にわかんなくて
和谷にわかるんだよ

「悔しい…」
「こういうことは互い同士より、第三者の方がよく見えるんだよ」



そういうもんなのか?



「嘘だと思うなら、聞いてみれば?」



そんな話をしながら駅へ行くと


「ヒカル!」



あかりの声が聞こえた
幻聴かと
気のせいだと思った



「ヒカル!」




また聞こえた
気のせいなんかじゃない
はっきり届く
聞きたかった声




地下鉄の入口に目をやると
あかりがいた





「もう!無視することないのに!」

ぷぅと頬を膨らませてる



何だってこんなとこに




「どうしたんだよ?」
「ん?ちょうど学校帰りなの」
「だから?」
「一緒に帰ろうと思って」



えへへ
なんて笑いやがる
俺は、あかりに会うってだけで、できないのに
あかりは普通にできる
これで好きなんて言われても
そんなふうに思えない




「あかりちゃん、こんにちは」
「和谷くん!こんにちはー」



笑顔で挨拶なんかしやがって
俺に会いに来たんじゃなかったのかよ?


他の男と仲良く話すあかりを見ると
ムカムカする





「聞いてみろよ、さっきの話」


和谷が、ひじてつつく


よぅし!聞いてやる


でもここじゃちょっと…




「あかり、時間ある?」
「?…うん」




あかりは不思議そうな顔をする




「暑いし、何か飲んで帰ろうぜ」
「ヒカルのおごり?」
「今日だけな」
「やったー!」



俺のおごりじゃなきゃ行かないのかよ

とも思うけど
あかりはそんなヤツじゃない



ちょうど近くにあるファミレスに入った

何でか和谷もいるけど




「何でいるんだよ?」
「俺も入りたかったんだよ」



その顔は、楽しんでる顔だろ?




「お前は自腹だからな」
「そのつもりですー」



和谷は俺の隣りに座る
あかりは俺の向かいに座ってる




俺と和谷はコーヒーを
あかりはアイスココアを頼む
女って甘いの好きだよな





「お待たせしましたー」



ウェイトレスさんが運んできてくれたものに
手を伸ばす

ホワイトだけを入れて飲んだ俺を
あかりはびっくりした顔で見て



「ヒカル、お砂糖入れないの?」


なんて聞いてきた



「砂糖は入れないよ」
「苦くない?」
「別に」
「…」
「飲んでみる?」



俺が差し出したコーヒーに
あかりは恐る恐る手を伸ばして

俺の反対に口をつける




「苦い…」



一口でギブアップ




「子供だな」
「同い年でしょ?」


あかりがぷくっとふくれる
少し機嫌を悪くすると出る、あかりのクセ




和谷が、俺のひじをつついて
早くしろと催促する







「あのさ、あかり」
「何?」
「あかりって、俺のこと・・・す・・・」
「す?」
「だから、その・・・す・・・っ」
「?」
「あかりちゃんって、進藤のこと好きだよねー?」






何でそんな簡単に聞けるんだよ!
自分のことじゃないからか?





「えっ?」



あかりは真っ赤になる


何?ほんとなのか?






「え・・・えっと」





困ってる?
どっちなんだよ、あかり







「えと、それは・・・」




俺は何だかイライラしてきて
こんなこと聞くなんて、ちょっと卑怯かもしれないけど





「両想いだよ、よかったね」






何言い出すんだよ
人事だと思って、何でも話すんじゃねぇよ
大体、俺の話はどうでもいいじゃん


勝手なこと言ってるな、俺




「和谷!お前もう帰れ!!」


これ以上、余計なこと言われちゃたまらない



「んじゃ、俺帰るわ!」




和谷は明るい顔をして帰っていく
からかいに来ただけかよ
おせっかい





あかりは相変わらず赤い顔をして
先ほどよりもうつむいている


困らせちゃったかな


少し反省








「帰るか?」
「あ・・・うん」





俺達は家に向かう
方向は同じだから、当たり前のように送っていく






「ヒカル」





あかりの家も近づいてきた頃
あかりは急に俺に話しかけてきた







「何?」
「あのね、明日空いてるかな?」
「明日?空いてるけど」
「よかった!あのね、ちょっとついて来てもらいたいところがあって・・・」
「どこにいくんだ?」
「それは、明日の秘密」


何だそれ



「明日、また、駅で待っててもいいかな?」
「ああ、わかった」



俺の返事を聞いたあかりは、嬉しそうな顔をして





「じゃあ、明日ね!」



そう言って、俺に手を振る





あかりが俺のことすきかどうか
気にならないって言ったら嘘になるけど
やっぱり、困らせるならこのままでいたい
いいんだ、伝わらなくても


そう思ってたのに






翌日、また手合いが終わって、俺は駅へ向かう





「進藤!」



おせっかいが来やがった






「昨日、あれからどうだった?」



そんな嬉しそうな顔して聞くんじゃねぇよ








「別に?」
「告白しなかったのかよ」
「何でしなきゃいけねぇんだよ」


思い通りになんかなってやるもんか





「お前ら見てると、すっごくじれったいんだよ」
「何だよ、それ」
「両想いなの、見てればすぐわかるのに」
「余計なお世話です」
「可愛くねー!」



そう
余計なお世話
幼なじみ同士の関係なんて
一歩触れれば壊れちゃうんだ






駅まで二人で歩いて行くと





「あれ?あかりちゃんじゃね?」

前方に、あかりと知らない男が話してる






「困ってるみたいだけど・・・」




ああ、もう
イライラする



「進藤?」






俺はツカツカと二人の近くへ歩いていって





「こいつ、俺の連れなんだけど?」



その男をにらんでやった



どこのどいつかしらねぇけど
あかりに用があるなら、俺を通してからにしろってんだ







「ヒカル、ありがと」


笑うあかりを見たら、何だかもっと腹が立って




「お前、こんなとこに突っ立てんじゃねぇよ!」
「え?」
「ぼけっとしてるから、あんな男に引っかかるんだよ!」
「何よ、それ!ぼけっとなんか突っ立ってないもん!」
「あかりは普段からぼけてんだから、もうちょっと回り見ろって言ってんの!」




言い過ぎたかとも思ったけど
止まらなかったんだ


あかりは少しだけ怒ったようで



「そんなのヒカルには関係ないじゃない!」



何て、ナマイキな口を叩きやがる

その言葉で、俺の中で何かがふっとんだ






「好きなヤツが他の男といて、へらへらしてるヤツなんていねぇよ!」







言ってしまった
言うつもなんて、これっぽっちもなかったのに

近くにいた和谷は



「言っちまった」
って顔してる

何だよ
これ、望んでたんだろ?
言ったよ!
言ってやったよ
もうどうにでもなれってんだ


俺は半ばヤケになる







あかりを見ると、昨日よりも真っ赤な顔をして





「ヒカル、あたしのこと好きなの?」



そうだよ、悪いかよ
ずっと好きだったさ
気づいたのは遅かったけど




「だったら何だよ」




精一杯の強がり
覚悟はできてんだ
どんな返事でもこいよ




待った
あかりが何て言うのか





あかりは深呼吸をして、俺を見る


にこりと笑って







「ありがと」





そう言った

それって、あかりもってことだよな?
そうとっちゃっていいよな?





伝わる気持ちと伝わらない気持ち
それは自分の言葉次第
幼なじみでいるのもいいけど
それ以上を望んでも、別にバチは当たらないんだな


「好き」なんて
言葉にしたら、結構さっぱりしたものかもしれない










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キリバン7000番を踏んでくださったカノさまへv
UPする前に、メールで送らせていただきました。
本当は送ったと同時にUPしたかったのですが、ちょうど企画の真っ最中だったので。
遅れてUPです。
リクエストが「じれったい二人→最後はくっつく」だったのですが。
全然じれったくないですね(滝汗)
あ、でもバレバレなのに告白できないのをしってる和谷さんだけは、じれったかったかもです(笑)
進藤さん、逆切れで告白しちゃいました。
もう一つ違う感じでの告白も考えていたのです。
それもみんなに協力してもらって告白するお話なんですけど。
それはまた、違うタイトルにしてネタを練りたいと思っています。

こんなのでよろしかったでしょうかー??(あせあせ
少しでもお気に召していただけると幸いですが・・・
キリバン&リクエスト、どうもありがとうございましたvv
これからもどうぞ、よろしくお願いいたします(ぺこり)


2004.07.02
音羽桜姫 拝













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