「ヒカル」

「ん?」

「そのサイさんって人、いついなくなったの?」

「5月5日」




今日だ
あたしは確信した

ヒカルが一人になりたくないのは
今日という日を思い出したくないから

「ちゃんと、話してほしいな」


心から願う
たとえどんなカタチであれ、ヒカルが頼ってくれれば
あたしは嬉しい

だから
うわべじゃなくて、心の声をあたしに


「何を?」

しらばっくれて

「ヒカルとサイさんのこと。
知りたいの」

正直な気持ち
聞きたくない気持ちもあるんだよ
それを知ることによって
あたしはきっと、知らないヒカルを目の当たりにすることになるから
だけど



「・・・」
「ね?」

ヒカルはだんまりを決め込み
しばらくして顔をあげた

「つまんない話かもしれないぜ?」

いい

ヒカルの話につまらないことはないから

「うん」


あたしの返事を聞いたヒカルは
静かに話を始めた




「佐為と会ったのは、小6ん時
ほら、じいちゃんちの蔵で碁盤見つけたろ?
あの時。」

ヒカルが急に倒れて病院に運ばれた、あの時?
でも

「会ったって?だって、それからもずっとヒカルしかいなかったよ?」


言ってることがわかんないよ



「当たり前」
ヒカルは苦笑して
「俺の中にいたんだから」
そう言った

ヒカルの独り言が多くなったのは、そのせい?


「あいつ、平安時代の碁打ちでさー」
「平安時代!?」

ヒカルの言葉に、あたしは大きな声をあげてしまった


「信じられないだろ?未練があって、ずっと碁盤に宿ってたんだって」

何でそんな人がヒカルのところに?



「それで?」

あたしの中に、もっと知りたい興味がわく


「何か知らないけど、俺の中に入ってきてさ
碁打てって言うんだ
当時の俺としちゃ、そんな
じいちゃんたちがやってるような遊び
絶対やりたくなかったんだけど」


そうだよね
最初はバカにしてたもん


「塔矢に会って、あいつの一生懸命さを俺にむけさせたくて」


塔矢くんがヒカルを知っていたのは
会ったことがあったからなんだ


「じゃあ、塔矢くんが囲碁大会で追ってたのは、佐為さんなの?」
「そういうこと」


何となく分かってきた
塔矢くんは、ヒカルの中にいる佐為さんと打って
その強さに圧倒されて、ずっと佐為さんをヒカルだと思って
追いかけていた


「じゃあ、あのふざけるな!発言は・・・」
「俺のあまりの弱さに腹が立ったんだろ?」


ヒカルはその頃を思い出したのか、悔しそうに笑った




あたしが知らないヒカルが
そこにいる

考えてはいたけど
あたしの知らないヒカルの世界がそこにある


それを痛く
実感する



ライバルがいて
大切な人がいて

追いかけて
追いかけられて


それの繰り返し
わかっていたけど




「少しでも佐為に近づきたかった」





「近づけたかな」





「どれくらい近づけたのか
もうそれを、佐為に聞くことはできない」




ヒカルの顔から笑顔は消えて
悲痛な表情だけが残る

ヒカルと佐為さんが過ごしてきた日々は
きっとあたしとの時間よりもヒカルにとって大切なものだった
話を聞くだけじゃわからない


どれだけの時間を共有して
何にも変えることのできない絆が
二人の間にあった




いなくなっても
佐為さんはずっとそばにいて
『ヒカルを見守ってるよ』
なんて
安っぽい言葉
言いたくなかった
たとえ言ったとしても
ヒカルにはきっと届かない





続きの3へ進む。





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もらい泣き。
連載ストップしちゃいました(汗
途中で止めるのがイヤになってしまって(><)
連載だと、ゆっくり描いて、まとめるだけなので楽なのですが
最後までぱーっと描きたくなりまして。

もうちょっと続きそうだったので、3編に分けました。
かなり切なくなりましたね。
自分で描いておいてなんですが、結構胸が痛いです(><)
あかりちゃん、切ない(涙
もっとらぶらぶにしたいのですが。

もらい泣きというタイトルに向かうのは、この後です。
進藤さん悲痛な叫び。
よろしければ、最後までお付き合い下さいませー







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