叶えたい願いがあるのなら











願い












「進藤くん」



手合い帰りの俺を誰かが引き止める
振り返ると、週間碁の編集部の人がいた






「お久しぶりです」
「うん、進藤くんも絶好調だね」
「そんなことないですよ」















最近、調子がいいとは思うけど
うぬぼれてると負けるから、油断は出来ない



「これ」

小瀬村さんが差し出したのは



「笹?」



小さい笹の葉








「今日、七夕だから。あげる」


あげるって言われても






「編集部から皆にプレゼントなんだ」





太っ腹だな、編集部は



「じゃあ、貰っときます」






俺は受け取って、うちへ向かった


笹の葉なんて、小学校の時依頼だな
いや、佐為がいたとき以来か
2年前を思い出す

あいつ、笹の葉みて喜んでたっけ







思わず笑いがこみ上げる












でもこんなのもらっても、どうすりゃいいんだよ

とりあえず電車に乗って帰る

小学生みたいだな、こんなもの持って
でも捨てるわけにはいかない


仕方なくうちまで恥かしい思いをして帰ると
あかりが元気に出迎えてくれた











「おかえりー」

そして俺の手元を見て一言



「何?それ」
「笹の葉」
「わかるよ!何で持ってるの?」
「週間碁の編集部の人がくれたんだよ」
「へー」





何だか顔は嬉しそうだ







「ねぇ、窓に飾る?」




そうだな
花瓶にいけるのも変だしな
俺は部屋にあがって、笹の葉を窓にさす









「今日、七夕なんだ」
「俺も言われるまで気づかなかった」





二人で笑う
「七夕って、短冊に願い事書くと、叶うんだよねぇ」
「そんなこと信じてるのかよ?」





子供だな





「だって、あたしが小さい時に書いた願い事、叶ったもん」
「何て書いたんだよ」
「それは・・・秘密」
「何だソレ」





心なしか、あかりの顔が赤く見えた


















「ねぇ、願い事、書こうよ」
「え?」
「願い事!書くの!」






突然何を言い出すんだよ

あかりは


「短冊買って来る」







そう言って、うちを飛び出した







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ヒカルが笹の葉を持って帰ってきた
今日は七夕
短冊に願い事を書いて、それが叶うことを祈る日

ヒカルはそんなこと信じないかも知れないけど
願えば叶うこともあるんだよ















短冊を探しに来たんだけど、なかなか見つからない



仕方ないから手作りにしようと思って
あたしは大量に折り紙を買った
手作りの方が、何となく願い事も叶うと思わない?













「ただいまー」
「遅かったじゃん」
「短冊見つからなかったの」
「何しに行ったんだよ」
「折り紙買ってきたの!手作りで短冊作ろ!」
「ヤダよ。めんどくさい」
「作るの!」
「・・・」
「作るの!!」
「・・・わかったよ」







しぶしぶだけど、ヒカルを納得させた



















ヒカルが一つだけ願い事持ってるの
あたし、知ってる
弱みを見せないヒカルだから、きっと言わない
あたしが気づかなきゃ







ヒカルの願いは、きっとたった一つ
あの人のこと







5月5日に、ヒカルが話してくれた、大切な人の

















「めんどくさいって」
「文句言わない!」








ヒカル



今日だけは何をお願いしてもいいんだよ?
誰も責めない
叶う願いがそこにあるなら、それにかけてみよう
何かが叶うかもしれないから
あたしも一緒にお願いするから




















あたしたちははさみで折り紙を切って、短冊を作り始めた







「ヒカル、もうちょっとまっすぐに切れない?」
「俺が不器用なの知ってるだろ?」
「知ってるけど・・・」
「大体、こんなの子供だましだろ」
「そんなことないもん!」






そんなことない
だってあたしの願いは叶った





「お前さっき、七夕で願い叶ったって言ってたけど・・・」


まだ気にしてる?



「その話はアト!」
「言ったな!あとでちゃんと話せよ!」










もう
余計なことばっかり覚えてるんだから

いいわよ、あとでちゃんと教えてあげるから
今はただ、ヒカルのために











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あかりと二人で短冊を作った





赤とか青とか黄色とか
いろんな色の短冊













「こんなに作ってどうするんだよ・・・」
「たくさん書けばいいじゃない」



にこやかに笑う

そんなこと言ったって、そんなに書くことねぇよ





「ヒカル、お願いごとあるでしょ?」




あかりが突然問いかける





「何だよ急に」
「見てればわかるもん
ずっとお願いしたいのに、できないことがあるの」







俺の願い








「佐為さんのこと・・・」
「え?」
「今日はね、七夕なの
誰にも遠慮しなくていいの
自分の願いを書けばいいの」




あかりは、短冊に何かを書いて俺に見せる



「こんな風にね」





笑うあかりが見せた短冊には
「ヒカルが元気でいてくれますように」





って書いてあった
















「我慢することないんだよ?
願ってもいいんだよ」


俺の頭を抱きしめて
そうか、あかりには話したんだ
佐為のこと


この短冊は、俺のために








「じゃあ、書いちゃうか!」
「うん!」















二人で願いを書く
我慢してたわけじゃない
もう二度と会えないと思ってた
佐為は俺の中にいるから、会えなくても平気なんだ


願ってもいいのかな?

もう一度会いたい
夢でいいんだ
出てきてほしい

たくさん話したいことあるんだ
あのときよりもっと
俺強くなったかな



佐為

会いたい

会って聞きたい

話がしたい

お前と








あかりがいてくれてよかった
きっとこんな気持ちで願いがかけられるのは
あかりがそばにいてくれるから








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たくさん作った
願い事たくさん書いた


ヒカルと一緒に









「あかり、なんて書いた?」
「願い事は言っちゃったら意味ないんだよー」
「何だソレ、俺の願いは知ってるくせに」
「あっ!ごめん」
「俺の願い叶わないじゃん」
「ごめんってばー!大丈夫、ばれても願いは叶うよ」
「言ってること違うし」
「意地悪ー!」







ヒカルの願い、聞かなくても分かる
たった一つ願ってること

それは、会いたいってこと


きっと話したいことたくさんあるよね


あたしが踏み込めない場所




だけど、ヒカルが喜んでくれるなら
あたし、どんな願いでも叶えてあげたい









「このへん?」
「もうちょっと上」
「ここ?」
「ヒカルのは一番上ね」





ヒカルに短冊をつけてもらって

笹の葉が完成した










「キレイだねー」
「そうかぁ」
「もう!」





キレイだよ
今までで一番



どの笹の葉よりも












「叶うといいね」
「ああ」
「叶うよね?」
多分な」






あたしも一緒にお願いしたから













二人で笹の葉を見上げて




「そういや、あかり」
「何?」




思い立ったようにヒカルが




「さっき言ってた、あかりの叶った願いって何?」





覚えてたか・・・





「秘密」
「さっきアトでって言ったじゃねぇか」
「アトでが、今すぐのアトでだなんて言ってないよ?」
「ずりー!」





本気で悔しがってる?

あたしの叶った願い
ヒカルの今日の願いが叶ったら
いつか話すね




叶えたい願いがあるなら
少しでもそれにかけてみよう
強ければ強いほど、きっと叶ったとき嬉しいよね

その願いが叶ったとき、あたしも隣にいられたらいいな












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七夕に向けて日記連載いたしました。七夕ネタです。
恋人ひかりですー。
最後だけ少し、手を加えました。
語りが交互で、ちょっとわかりにくかったらすみません(汗)

佐為が絡むと「、どうしても切な気味になります。
らぶらぶも有ですが、こんな切ないのもありですよね。
このお話は、「もらい泣き」の続きっぽく。
あかりちゃんが佐為さんのことを知ってて
進藤さんを後押しする。
「ヒカルが素直にお願いできないなら、あたしがそのきっかけを作ってあげよう
そう思ったみたいです。


ちなみに結婚4年後の設定でも描いてみました。
しゃべるひかりちゃんが見たい方はこちら。

皆様の願いが叶いますように・・・















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