君が生まれてきた日
一緒に過ごしてきた日々
これからも二人で




バースデープレゼント




幼なじみと付き合って、もう随分と時が経つ
もちろん、幼なじみとして過ごしていた時間の方が長いけれど
一人は社会人
一人は学生
立場は違えど、うまくやってきた


あかりの誕生日3日前

外食する約束をしてヒカルが仕事帰りに、あかりの学校へ迎えに来る
二人の待ち合わせは決まって、学校か棋院
「早く来過ぎたかな」
ヒカルはそうつぶやいて
門近くの壁にもたれかかる
「早く来ねぇかな♪」
あかりを待つ気持ちはたくさんのようで
あかりのいる教室がある方を上向きに、楽しそうな顔を浮かべた



ヒカルが外で、あかりを心待ちにしている頃あかりは


「と、いうわけで明日の予定は…」



HRの時間
時計の針は、ヒカルとの約束の時間を過ぎている
先生の話もうわの空で、あかりは時計ばかり見ていた


(早く終わってー)

あかりは心の中で悲鳴をあげる

いつもなら終わっている時間なのに
今日に限って、担任の話が長い
どうでもいいことまで話だす始末



(そんなことどうでもいいからー!)


あかりは心の中で涙した
久しぶりに会えるのに、楽しみが減ってしまう気がして

時計と窓の外と
ヒカルのことを気にしながら
あかりはただただ
話が終わるのを待つしかなかった


先生はそれから10分もどうでもいいことを話し



「明日も全員学校にくるように!」

と、またしてもどうでもいい終わり方をした

クラス委員のあいさつとともに


「さようならっ!」

と、早口で終わりの挨拶をし
あかりは誰よりも早く、教室を飛び出した

普段は走らない廊下を、駆け抜ける



昇降口を抜けて、校門までたどり着くと
そこにヒカルはいなくて

早く会いたくて走ってきたのに


あかりはその場に座りこんだ


(あんまり遅いから帰っちゃったのかな?)
不安がよぎる
ヒカルはよく、約束をすっぽかす
だけど、忘れることもないし、破ることもない



(先生のバカ…)



やつあたり

突然、座り込んでいる自分の体が浮いた


「ひゃ…っ」

思わず悲鳴をあげて振り返ると
不思議そうな顔をしたヒカルが立っていた



「遅かったじゃん」
「ヒカル、何で?」

帰ったんじゃ…
あかりはほっとするよりも驚いて


その言葉に、ヒカルはもっと驚いて


「何でって…
待ち合わせだろ?今日の4時半に、あかりの学校の前で」





ヒカルが帰ったと思い込んでいたあかりは
改めて、ヒカルがちゃんと待っていてくれていたことを理解した




「あ、あの…ごめんね?」
とりあえず、遅れたことを謝る
「先生の話が長引いて…
走ってきたんだけどヒカル、いなかったから、帰っちゃったと思ったの。」


あかりのごめんなさいな、ヒカルは口をあいて絶句した

そのあと、ふっと笑いを含んだ声を吐きだし、あかりの前でけたけたと笑う


「何で笑うのよー?」

あかりが抗議の声をあげると、
ヒカルは笑いすぎて涙を浮かべた目で


「あかりがアホなこと言うから…」
「アホ!?」
「ごめんごめん」


ヒカルは謝りながらも、まだ顔は笑っていて
あかりはおもしろくない


「そんなに笑うことないのに」



あかりにとっては、何よりも心配したこと

それをヒカルは笑い飛ばした
あかりの機嫌をそこねるには、十分なものだった

笑い続けるヒカルに、ふいっと顔をそむける

それをみたヒカルは

「ごめんって」



涙をぬぐいながら謝った
帰ってしまったと思い込んで落ち込んでいたあかりが可愛くて、思わず笑ってしまったのだが、
当の本人が機嫌をそこねてはたまらない


あかりの頭を二回ほどたたき



「あかりがあんまり可愛いからさ」
ヒカルの言葉に、さっきまで機嫌の悪かった顔は真っ赤になる



「時間つぶしに、コンビニ行ってただけ」



今度は頭をなでて

「不安がらせてごめんな?」

と、謝る


あかりは黙ってうなづいた
機嫌も直り、許してくれた証拠


「んじゃ行くか!」

ヒカルはあかりの手を引いて歩き出した食事するには、少し時間が早い
久々のデートを、二人は楽しんだ

夕食は、ぶらっと入った店で
たわいもない話をしながら
久しぶりに二人の時間を満喫する
会えなかった分の話が募る



「それでね、頑張ってるんだけど・・・」

あかりは高校に入って、囲碁部を作った
部員は、頑張っているのだが少ない

「もうすぐ大会でしょ?
ヒカル、また教えに来てくれないかな?」



中学の卒業式で約束したとおり、
ヒカルはあかりに頼まれた時、手合いがなければ
たびたび高校に指導碁に訪れていた
付き合い初めてからは、暇さえあれば教えに来てくれる



「いいよ」

二つ返事で交渉成立


ふと、ヒカルの耳元に目をやると
赤いものが光った



「ヒカル、耳に何かしてる?」

あかりが前に身体を傾け、ヒカルの耳をのぞきこむ
ヒカルは
「ああ」
と耳をなぞり
あかりにそれを見せた
真っ赤なピアス


あかりは驚いてたずねる

「いつからしてるの?」
「先週から・・・かな」
「ふーん・・・」


真紅に光るピアスが、ヒカルの金髪に良く映える
何だか急に、ヒカルが大人に見えた気がした


「そろそろ行くか」


ヒカルが伝票を持って席を立った
あかりはそれに続く

うちまで送ってもらって
数時間のデートを終えた



「ありがとね」
「またな」


玄関先で、しばしのお別れの挨拶を
ヒカルはあかりの頬にキスを一つ落とす
あかりからもお返しを


「気をつけてね」
「サンキュ」



ヒカルは手を振りながら、自分のうちへと方向を返る
ふと見送るあかりを振り返り



「17日の夜、あけとけよ
一緒に飯食いに行こうぜ」


そう言って帰っていった


「17日・・・って何かあったっけ?」


本人が忘れているようだ


「まいっか、また会えるんだしv」

嬉しそうなのでよしとしよう




5分かけて、ヒカルは自宅へとたどり着いた


「ヒカル、ご飯は?」
「いらない、食ってきたから」


母の言葉に短く返事を返し、ヒカルは部屋へと向かった

ベッドへダイビングし、天井を見上げる

「やっぱり、つけるんじゃなかったかな・・・」

ぽつりと
ピアスを見つけたあかりは、意外そうな顔をしていた
その顔を思い出すと、ちょっと浮かない気分になる



ベッドから起き上がり、机の引き出しをあける
綺麗にラッピングされた包みを手にとり
ため息をついた
その包みは、3日後のあかりの誕生日に用意したもので







「まぁいっか!」


ヒカルはそう言って、包みを机にしまい直した



誕生日前日
ヒカルはあかりに電話をかけ

「明日、6時に迎えに行くからな」
「うん、わかった」

短い、用件だけの電話
それでも、声を聞けるだけで嬉しくて
明日が待ち遠しくなってくる
ヒカルと、デートらしいデートなんて、何ヶ月ぶりか


「何着てこう」

あかりは、楽しくて
でも何だか恥かしいような気がして
その夜は眠れなかった
その一方、ヒカルも眠れない夜を過ごした
初めて恋人としてのあかりと迎える誕生日に
期待と不安を寄せつつ
当日を迎えた




約束通りに、ヒカルは5時に迎えに来て

二人ともいつもどおりに言葉を交わす



「久しぶりだね」
「3日前に会っただろ?」

ヒカルにつっこまれ、あかりは笑った

付き合っても、ヒカルの態度は変わらなかった
優しくなったわけでも、甘くなったわけでもなく
ただ、イベントのある時は、できるだけ一緒にいてくれるようにはなった
付き合う前は、プレゼントも何もなかったし
おめでとうの言葉も
「あたし、今日誕生日なの」
というまで、もらったことはなくて
そのヒカルが、自分の誕生日に会ってくれる
それがどれだけ、あかりには幸せなことか
きっとヒカルはわかっていない
特別なとき、そばにいてくれる
だから笑える



3日前
あかりはヒカルと別れた後、
自分の誕生日を思い出した

だから今日、何故ヒカルが誘ってくれたのかちゃんとわかっていた
嬉しさを隠して、知らないフリをする





「どこか、行くか?」
ぶらぶらと駅まで歩き
「ううん、どこでも」


行きたいところを検索してみるが、どこも思い当たらず
とりあえず、ファミレスに入り
3日分の話をする
と言っても、このあいだ話してしまったので、特に話すこともないのだが
あかりは、とにかくヒカルと話をできるのが嬉しくて
何でもいいから、話をする


学校のこと
ヒカルの碁のこと





「こないだ、惜しかったね」

2週間前、ヒカルは塔矢と対局し
結果は1目半の負け
あかりは、ヒカルの対局日はすべて忘れずにチェックしている
結果もちゃんと

楽しそうに話して笑うあかりを
ヒカルはうなづきながら、あきずに見ていた
その表情はくるくる変わって、見ていてあきない



その視線に気づいたあかりは
「何?」
と少し恥かしそうにヒカルをにらむ
「いや、別に?」
ヒカルはくすくすと笑いながら


「あたしばっかりしゃべってるよ
ヒカルは?何かないの?」

突然話題をふられても

「俺は別にないよ
あかり見てる方が楽しい」


そういうと、あかりは真っ赤になって下を向いてしまった
そんなあかりを
ヒカルはいとおしそうに見つめて
「行くか」


伝票を手に、席を立った


「いいよ、あたし出すから」
あかりが財布を取り出すと
「今日は、いいから
今度何かおごってよ」
ヒカルに制止され、財布を引っ込める



「ごめんね?」
「いいよ、別に。」


今日はヒカルのおごり
大切な日だから




時刻は8時。
随分ファミレスで話し込んでいたようだ
ついでに食事も済ませてしまった


「ヒカル、明日手合いでしょ?」
「あ、うん」
「早く帰った方がいいんじゃない?」

そんなこと気を使う必要ないのに

「そうだな・・・」

あかりは、にこりと笑った

もうちょっと一緒にいたいのに
いつも寂しい思いをさせてしまっているだろうから
せめて、彼女の大切な時間だけは




駅から自宅までは、そんなに時間はかからなくて
あっというまに、あかりの家まで着いてしまった
その間、二人は何も話さないで
ただ手を繋いで



「ありがと、ヒカル
ここでいいよ」

この手を離したくなくて
ヒカルは手に力を入れる
できることなら、もう少し
彼女のそばにいたい
明日が手合いじゃなかったら
一日だってそばにいたい



「ヒカル?」

あかりの不思議そうな声にヒカルははっとして

「ご、ごめん!」
慌てて手を離した


「じゃあ、俺行くな」

名残惜しげに彼女の姿を目に焼き付けて
今度はいつ会えるかわからないから


「うん、またね」


渡さなくちゃいけないのに
勇気がなくて
あかりは家の中へと入ろうとする
ヒカルはその後姿を見送って




「ヒカル。」



あかりは突然振り返って

「ありがとう」

一言


「今日、あたしの誕生日
ヒカル、覚えててくれたんだよね」


ヒカルの好きな笑顔で


「忙しいのに、ごめんね
じゃあ、おやすみ
気をつけてね」



きびすを返す彼女の腕を引っ張り引き止めて



「何?」


あかりはビックリした顔でヒカルを見つめる
ヒカルはしばらくあかりと視線を合わせて

用意していたプレゼントを渡した





「くれるの?」

あかりの問いにこくんとうなづいて
確認したあかりの顔が、ぱっと明るくなる


「あけてみて・・・いい?」

楽しそうにはしゃぐ


「いいぜ」


それだけで、買った甲斐があるなと
自分も嬉しくなって


ヒカルの見ている前で、あかりは包みを開けた
中に入っていたのは



「ピアス・・・?」


ヒカルしているのと同じもの



「おそろい?」


あかりの言葉に、ヒカルが頭をこづく



ヒカルがしているのは、あかりと同じピアス
あかりにも同じものを持っていてほしくて
誕生日プレゼントに買ったものだった
あかりの態度を見て、渡そうかどうか迷っていたのだけれど
渡さずにはいられなかった


同じものをつけていれば、それは自分の証
いつもあかりが誰かに取られるのではないか、という心配を抱えていたヒカル
口にするのは何となく恥かしくて
決意の表れ

『あかりは誰にも渡したくない』

それはあかりも同じことだった




あかりの頬がピンク色に染まって
ヒカルの顔は夕焼けのように真っ赤で

だけど、何よりきっとこの瞬間
誰よりも幸せで



生まれてきてくれてありがとう
キミがいるから、僕は毎日幸せ
そばにいたい
そばにいてほしい
いつまでも








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あかりちゃんお誕生日その1ーです。
恋人ひかりの誕生日。
アイスティのシロップ多目がお好きな方、お待たせいたしました(笑
あいも変わらず、進藤さんへたれっぷり発揮です。
あかりちゃんが、いつもより可愛く描けたかなと、自分では思っておりますです。

二人、休日が合わないので、中々遊びに行けません。
だから、会えた時には思いっきりらぶらぶします(笑
でもでも!簡単なデートならよくするんですよ。
だって、会いたいのは進藤さんだからーvv
あかりちゃんの前ではヘタレ進藤さん。
これ、理想です(笑


いちお、フリーですので、よろしければお待ち帰り下さいませ(ぺこり
最後まで読んでくださって、どうもありがとうございましたvv



もう1こも見る。


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